※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

1948年に岐阜県岐阜市で創業したユニオンテック株式会社。空調設備や給排水設備、電気設備の工事を請け負う会社として、建築物に命を吹き込んできた。

岐阜県を拠点として、空調、給排水など日常の生活に欠かせない技術継承のため、社会の持続可能性に取り組む代表取締役社長の安部源太郎氏に、社長就任のきっかけや経営方針、今後の展望についてうかがった。

エンタメ業界から建設会社のトップへ――意識改革により資格取得率が向上

ーーまずは、社長のご経歴をお話しいただけますか。

安部源太郎:
エンターテインメントに興味があったことから18歳で上京したのち、フリーランスの舞台監督として経験を積みました。イベント制作会社のメンバーに加わった30代は、大手広告代理店でイベントの広報や企画・制作に携わりました。

40歳で独立したいと考え、父に報告した際に「起業は簡単なことではない」と忠告されたことが転機となりました。父はユニオンテックの創業者であり、他にも複数の会社を経営していました。「まずは、今ある会社で周囲に実力を認めてもらいなさい」と言われた僕は、父に挑む気持ちで弊社に入社したのです。

当初は3年ほどで東京に戻るつもりでした。しかし、2つの会社の取締役として働くうちに責任感が生まれ、5年目のタイミングで社長就任を申し出た次第です。

ーー就任後の取り組みについてもお聞かせください。

安部源太郎:
自身が建築に関して無知だったため、入社後は宅地建物取引主任者(現宅地建物取引士)の資格を取得しました。建築業法や民法について一通り学んだことで、会社の取り組みを理解できたと言えます。「建設業は資格が重要である」という考えを発信し、資格取得支援制度を整備するなど社員教育に力を入れた頃、時代の流れの後押しもあり資格を自主的に取得する人が増えたことは大きなメリットでした。

管工事に関わる資格として、25名が1級管工事施工管理技士、17名が2級管工事施工管理技士を取得しており、これは県内トップレベルの有資格者数です。

ーー大切にしている価値観を教えていただけますか。

安部源太郎:
積極的に発言してもらった方が行動につながりやすいため、不平不満でも構わないから「なるべく意見を伝えてください」と言っています。いわゆるトップダウンの社風ではないでしょう。「礼儀正しさ」を重んじるDNAも創業当時から大切にしています。世の中でパワハラが問題視される前から、父も僕も社員に対して敬語を使ってきました。

人材が成長・定着する育成システムと社長の好奇心がもたらした「一足早いDX」

ーー事業内容や社風についてお聞かせください。

安部源太郎:
空調や給排水、電気といった、建築物を快適にする「設備」を提供しています。建築業の一つである「設備」は注目されにくいジャンルですが、屋内のエアコンを効かせたり、蛇口をひねると水が使えるようにしたりと、皆さんの日常生活を支えている仕事です。

リーマン・ショックの時でも新卒を採用し続けてきたため、従業員の平均年齢はフレッシュな視点と豊富な経験を持つ30代です。社員の定着率も、建設業において比較的高い80%以上をキープしています。

仕事を教える立場になった人に、「若手を育てよう」という気持ちがあることは弊社の強みですね。社風としても「自己中心的な人」や「仲間に対して敬意を持てない人」は向いていないと言えます。お互いを思いやり、助け合う文化が社内にあるからこそ、新人も安心して仕事を続けられるのではないでしょうか。

ーー「建設DX」の取り組みはどのようにスタートしたのでしょうか?

安部源太郎:
好奇心旺盛な自身の性格も手伝って、3年ほど前から「建設DX」という言葉を掲げ、設計ソフトや情報共有ソフトといった基幹システムのデジタル化を進めています。DXは建設業界全体における重要課題であり、現場でも非常に重視されるようになりました。

弊社としては、お付き合いのあるゼネコンから「BIM(※)が可能な会社」を求められたときに、さっと挙手できるように備えてきたつもりです。

※「BIM(ビム)」=建築物に関するデータを3Dモデルで構築する手法

ーー現在注力している取り組みを教えてください。

安部源太郎:
近年はマネジメント層の育成に力を入れています。現場で一番大きい仕事を担っていた人を、思い切って内勤に移動させたことは大きな変化でした。それまでバックオフィスは会計畑の人に任せていたのですが、現場を知らないと上手くいかないことが多かったのです。

建設業は数字の変動を読みにくいところがあります。そこで、現場を理解している人にお金の流れを学んでもらった方がいいと考え、マネジメントを任せたいメンバーには会社の数字を共有するようにしました。

「現場からトッププレイヤーが抜ける」という恐怖感はありましたが、結果的にはテクニカルソリューション(技術面での専門的な解決策)においても良い判断だったと思います。

エッセンシャルワーカーを守るため――SNSを通じて「建築設備」の魅力をアピール

ーー今後の展望をお聞かせください。

安部源太郎:
人口が減り続ける地域では、同業者で仕事の取り合いになる可能性があります。「地域の方々の日常を守ること」を第一に、経営者として従業員を守れるだけの仕事を獲得するため、営業の在り方も考えていきたいと思います。

建設業に限らず、社会生活を支える「エッセンシャルワーカーの減少」は、あらゆる地域にとって防ぐべき問題です。建築設備は外側から見えにくいからこそ、仕事や建築物が完成した時の喜びを自分たちの言葉で発信しなければいけません。

ホームページやSNSは、自分たちの活動をアーカイブする場所として重宝しています。特にSNSでの情報発信は学生さんの目に留まりやすく、イベントをPRするツールとして最適です。オリジナルキャラクター「ユニオンテッくん」も登場するのでぜひご覧ください。

編集後記

マネジメント層の育成について「自分のことだけでなく、会社全体を見られる人材を増やしたい」と語った安部社長。新人には先輩社員がつき、丁寧に仕事を教えるという育成方針からも「一人ひとりをじっくりと育てる」というユニオンテックの伝統を感じた。「安心して成長できる会社」を探す人にとって、とてつもなく魅力的だと言える。

安部源太郎/大学在籍中にアーティストのコンサート制作に関わり、フリーランスの舞台演出家として活動。その後、新進気鋭のイベント制作会社に加わり、大手広告代理店と宣伝広報の企画・制作に関わる。40歳を機に独立を予定していたが一転、親族が所有する会社の取締役に着任。2011年よりユニオンテック株式会社の代表取締役社長に就任。