※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

サナダ精工株式会社は、プラスチック製の生活雑貨を製造・販売する会社。同社の商品は100円ショップをはじめとしたさまざまな場所で展開されており、日常生活の「困った」を解決する生活雑貨として人々から親しまれている。

今回、社長に就任してから積極的に社内改革を行ってきた代表取締役の眞田和義氏に、今までの取り組みや革新的なプロジェクトなどを聞いた。

フィットネス会社での修業経験が今に活きている

ーー貴社に入社する前の話を聞かせてください。

眞田和義:
大学卒業後、メディア企画株式会社というサナダ精工株式会社のグループ会社に入社をしました。父から修業をしてこいと言われたのが入社の理由です。

周囲の人たちにいろいろと教えてもらいながらフィットネスクラブの立ち上げに携わり、25~26歳のときには責任者も務めました。責任者になり、会員の募集や人材採用などすべて自分でどうにかしなければならず、最初の頃はとても苦労しましたね。

20代半ばで責任者になったので、若いからという理由で私への対応を変える人もおり、そういった人たちを見て「自分は驕らないようにしよう」と思いました。一方で、若くて経験がないからこそ「教えてください」といった姿勢で関わる重要性も理解しました。このときの経験が、社長になった今にも活きています。

経営者として社員たちにビジョンを示すことが最も重要

ーー社長になってからはどういった点で苦労しましたか。

眞田和義:
いろいろな仕組みを導入し、新たな動きをしたこともあり、就任直後は離職者が増えてしまいました。離職者が増えたときに社員たちから言われたのが「会社の先が見えない」ということです。社長として、会社のビジョンや将来の計画を社員たちに見せられなかったのだと思います。

そんな折、友人から経営塾を紹介されて通うことにしました。その塾では「やり方ではなく、在り方を学ばなければいけない」ということを教えられたのです。

世界的に見て日本は100年企業が多いですが、100年続く企業にするためには経営者が目標に向けて中長期計画を立てる必要があります。そして、この中長期計画を3年ごとに回して、それを社員に示さないといけないということを教わりました。

ーーそこから実際にどのような社内改革に取り組みましたか。

眞田和義:
それからは、会社の方向性を社員に示したり、先代の社長が言っていたことを明文化したりしました。また、弊社では会社の利益を社員たちに公正に分配する「社中分配」を基本的な考え方としています。

利益が上がれば設備投資や人材育成にお金をかけられますし、さらに利益が上がれば社員たちは給料が増えて自分たちの生活を潤すことができます。この一連の考え方を伝え、社員たちには何のために売り上げや利益が必要なのかを説明するようにしました。

プラスチックを愛される物として広めるプロジェクト

ーー貴社の事業内容について教えてください。

眞田和義:
弊社はプラスチック製の生活雑貨をつくる会社で、創業当時は主に100円ショップ向けの商品をつくっていました。最近は、たとえばスリーコインズ向けの300円商品や、家具メーカーのニトリで販売する商品などの高額商品も増えています。

ーー貴社独自の取り組みについても聞かせてください。

眞田和義:
「HACO(ハコ)」プロジェクトを手がけており、このプロジェクトでは100円と2万円の2タイプの箱を販売しています。

弊社では「愛されるプラスチックをつくろう」を企業理念に掲げており、この愛されるプラスチックとは何かというと簡単には買えないものだと考えています。

買うためのハードルや、特別な思いを乗せた箱であれば、一生大切にしたい物になるのではないか。このように考え、2万円の箱は「3つの挑戦」をクリアしなければ購入できないようにし、さらに購入者は箱に貼られたQRコードを読みこめば特別なメッセージを見られるようにしました。

プラスチックは自然に還りませんが、長く使えるのが魅力です。弊社は、プラスチックのイメージを安価な使い捨てのものでは無く、長く使うことで愛着が湧くようなものに変えたいと思っています。

ーー眞田社長が大切にしている考え方を教えてください。

眞田和義:
誰かの役に立てているかどうかが最も大切です。世の中の役に立つことで会社としての存在価値を認めてもらいたいですし、私個人としても人が喜んでくれることをするのが自分自身の喜びだと感じています。

また、弊社は100円ショップ向け商品の開発で始まった会社ですが、外部環境が目まぐるしく変わる時代の中、次のことを考えなければいけないとも思っています。

弊社をより多くの人に知ってもらうためにも、弊社の良さを全面に出しつつ、お客様のニーズに合ったより良い商品をこれからもつくっていきたいです。

編集後記

100円で買える高品質で便利な商品を開発し、人々の暮らしに驚きと感動を与えたサナダ精工株式会社。顧客のニーズを的確にとらえ、世の中に必要とされる商品を生み出してきた同社の次の一手が楽しみだ。

眞田和義/1967年大阪府生まれ、大阪芸術大学卒業。1992年にグループ会社のメディア企画株式会社入社、フィットネス事業に従事。2012年にサナダ精工株式会社入社、代表取締役に就任。