法人営業を行う事業者には、仕事量が増えるばかりで成約につながらないという課題を抱えているところも多いだろう。ブリッジインターナショナル株式会社は、顧客の継続的な売上成長モデルの構築定着のために、コンサルティングやセールステックの導入、またインサイドセールスやマーケティングのアウトソーシングサービスを提供している会社だ。
効果的な営業手法やアジアでの事業拡大、AIをはじめ、セールステックスタックを活用した営業改革について、代表取締役社長の吉田融正氏にうかがった。
営業プロセスを分業化し、効率化と成約率アップを支援
ーーはじめに貴社の事業内容について教えてください。
吉田融正:
弊社は法人営業、マーケティングの改革を支援し、継続的な売上拡大をサポートする会社です。お客様の法人営業プロセスを整理し、抽出した課題をもとに解決策を提示するコンサルティング業務から、各プロセスのアウトソーシング、またセールス関連の様々なITの導入支援をしています。
まだ多くの法人営業は、全てのプロセスを1人で担います。そのため、顧客の課題を聞き出し、それに基づいた提案を行うナーチャリングが十分にできていません。こうした非効率な営業を続けているために、なかなか成約に結びつかないのです。
弊社では、マーケティング活動で見込客を獲得し、ナーチャリングで相手の興味をひく。そしてフィールドセールスで提案活動を行い、カスタマーサクセスにつなげる。こうした4つのプロセスに分け、リード(見込客獲得)からカスタマーサクセスまでの過程を効率的に実行できるように支援しています。
起業を目指すきっかけとなったアメリカの仕事に対する価値観
ーー吉田社長の経歴と起業家を目指したきっかけについてお聞かせください。
吉田融正:
幼い頃から父に医者になるように言われていたため、医学部を受験しました。しかし第一志望の大学に落ち、浪人中に父が亡くなったことを機に、当時学費が一番安いと言われていた東京理科大学の経営工学科に進路を変更しました。
そして、大学研究室の教授がIBMの品質管理の指導をしていたことがきっかけで、IBMへの入社をすすめられたのです。もともとお客様の問題解決に取り組む営業職に憧れがあったため、入社後は営業職に就きました。
その後、副社長補佐に就任し、補佐役として役員の仕事を疑似体験することになります。とても刺激的で、勉強になりました。他の多くの役員と若いながら一緒に仕事をしましたが、何か物足りなさを感じていました。
その一方で、アメリカ本社に出向した際に、ひとつの会社に留まる必要はないという考え方に触れ、価値観が大きく変わりましたね。また、リスクを取ってでも起業して自分の夢を実現する現地の人たちのチャレンジ精神に感化され、私も会社を起こしたいと思うようになりました。
日本では珍しかったインサイドセールス支援事業で起業
ーーそれからどのような経緯で起業に至ったのですか。
吉田融正:
その後はアメリカのCRMのソフトウェア会社で日本法人の立ち上げに携わることになりました。最初は3人だけの組織でしたが、ITバブルの恩恵もあって事業は成功し、起業するための資金を十分集めることができました。
そして前職の仲間を引き連れて立ち上げたのが、ブリッジインターナショナルです。創業当時は顧客が外資系IT企業のみで、US本社からインサイドセールスを立ち上げろという指示があった様ですが、日本でそれを支援する会社がなかったこともあり、設立10年くらいまでは多くの同様のグローバルIT企業からの引き合いが多く、上手に立ち上がりました。
また、その後も競合他社がいなかったこともあり、ほぼ独占状態でした。そのため創業時から無借金で、現在まで増収増益を維持しています。
ーー創業時から変化した部分を教えてください。
吉田融正:
マーケティングやカスタマーサクセスのアウトソーシングサービスも行うようになり、サポートできる範囲が広がりましたね。
また、さまざまなITツールも活用しています。具体的にはセールスフォースが提供しているツールを基盤としつつ、AIツールも導入し、サービスの高度化を図っています。
最近では、レベニュ―オペレーションという、より全営業プロセスの効率化のため、IT(セールステック)を最大限活用して、顧客の売上を最大化するようなサービス提供を開始しました。
海外展開に向けた意気込み。AIによる法人営業プロセスの自動化を目指す
ーー海外展開にはどのように取り組んでいますか。
吉田融正:
マレーシアにある子会社を拠点とし、アジアでの事業拡大を目指しています。アジアに拠点を置く多くのグローバル企業は、自社でインサイドセールス機能を持っています。ただこれはあくまで現地の事業者のクオリティが低く、外部企業には任せられないといった理由があるからです。
そのため、これは大きなビジネスチャンスととらえています。弊社はすでに日本で実績を積んでいるため、スムーズに事業を展開できるでしょう。お客様にとっても、自社の負担となっている業務を、経験豊富で信頼できる事業者に外注できることは有益だといえます。
さらに人件費をおよそ3分の1にまでカットでき、本来力を入れたい提案活動に注力できるため、メリットは大きいと考えています。
ーー最後に、今後の注力テーマについてお聞かせください。
吉田融正:
テクノロジーを最大限に活用することで、法人営業活動の多くが自動化していく様になっていくと思います。たとえば顧客の行動に応じて自動的にメールを送信し、AIを活用したアバターが電話対応するといったイメージです。さらに提案書の作成やプレゼンテーションも、生成AIで自動化できると考えています。
つまり最終的な交渉やクロージング以外、ほぼすべての営業プロセスの自動化を目指しています。このビジョンの実現に向けて、現在はAIの学習データを蓄積し、徐々にAIで代替可能な部分を増やしている段階です。労働人口の減少に歯止めがかからない中で、営業に関連する人材も少なくなるので、こうしたITの活用で効率化を図ることが必要になると思います。この新しい営業モデルが実現していく様に尽力していきます。
編集後記
大手グローバル企業でキャリアを重ね、ソフトウェア会社の日本法人の立ち上げに携わるなど、最前線で経験を積んできた吉田社長。日本でなじみのなかったインサイドセールスを広め、日本企業の営業プロセスに変革をもたらした功績は大きい。ブリッジインターナショナル株式会社はさらなる効率化を進め、多くの企業の営業活動を支援していくことだろう。
吉田融正/東京理科大学経営工学科卒業。1983年に日本アイ・ビー・エム株式会社に入社し、営業課長、営業部長を務めた後、1993年に副社長補佐に就任。1994年、米国IBMに出向し、コーポレートストラテジー、PCカンパニーで勤務。1997年に米国シーベル・システムズに入社した後、同年に日本シーベル株式会社を設立し、取締役営業本部長に就任。2002年にブリッジインターナショナル株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。