高品質・低価格の製品を開発・販売する株式会社i.D。同社は、コロナ禍で変化した消費者の価値観に応え、「安くても品質の高い」製品を次々と世に送り出している。ドラッグストアを主な販路とし、熱中対策用の日傘や温かい靴下を展開するなど、その勢いは化粧品のみにとどまらない。
社員の育成に力を入れ、「自分たちでつくり上げる会社」を目指す同社。次々と新たな挑戦を続ける同社の代表取締役、堀井昭一氏にこれまでの歩みと今後の展望についてうかがった。
チャレンジ精神が生む新たな価値創造
ーーi.Dを創業されるまでの経緯を教えてください。
堀井昭一:
i.Dを設立する以前、別の会社を設立したことがあります。そこで扱ったノンシリコンシャンプーはテレビCMも打ち、2011年から2012年頃には約250億円の売上を達成するなど、急激な成長を遂げましたね。
しかし、会社を成長させていく過程で、ものづくりも営業も私が中心で、私を中心に回る組織となっていました。成功にはつながりましたが、一方で現場からつくり上げていく環境の方が、底力のある会社になれたのではないかと思っていました。
新しい会社を設立しようと思ったきっかけは、ある大手ドラッグストアの社長からの「まだまだ新しい商品や新しいマーケットづくりにチャレンジしてほしい」という言葉です。そういうお声をいただけたことが非常に嬉しく、ご期待にも応えたいと思いました。
そこで、今度は現場のスタッフたちがつくり上げていく、底力の強い会社をつくろうと考え、2020年に株式会社i.Dを設立したのです。
「顧客」を考え抜く、リアルなマーケティング戦略
ーー貴社の主な事業内容について教えてください。
堀井昭一:
弊社は、主に化粧品やスキンケア製品の開発・販売を行っています。特徴的なのは、高品質でありながら低価格な製品を提供していること。これは、コロナ禍を経て変化した消費者の価値観に応えるためです。以前は少し高めの価格帯で商品を展開していましたが、今は「いかに高品質なものを安く提供できるか」というチャレンジをしています。
また、常に新しい市場ニーズを探り、そこに応える商品開発を心がけていて、最近では熱中症対策の日傘なども手がけています。
ドラッグストアを主な販路としており、一般消費者の日常生活に密着した製品を提供することを目指しています。
ーー商品開発において、どのようなことを大切にしていますか?
堀井昭一:
弊社が一番大切にしているのは、マーケットの声を聞くことですね。商品開発をする際は、ターゲットとする層の生活背景まで考えることが重要です。たとえば、群馬県の小学2年生の子どもを持つ共働き夫婦を想定した場合、その地域の世帯年収や家賃相場から、嗜好品に使えるお金がどのくらいかを考えます。そういったリアルな生活の中にマーケットがあるのです。
また、弊社は「メイドバイジャパン」という考え方を持っています。必ずしも日本でつくることにこだわりません。アジア全体を一つのマーケットとして捉え、商品によって製造国は変わりますが、どこでつくるかを弊社がしっかりと管理する。この柔軟な製造体制が、高品質・低価格を実現する1つのポイントとなっています。
i.Dが目指す、未来をつくる組織づくり
ーー貴社の雰囲気を教えてください。
堀井昭一:
部署間の垣根を低くし、バリアフリーな環境をつくっています。ものづくりに関しては、みんながいろんなことを言える会社になっていると思います。普段はにぎやかで和気あいあいとしていますが、仕事の面ではしっかりと自分の考えを持って話ができる。ときには厳しいことも言い合える。そういう雰囲気を大切にしています。
弊社には、自分で道を切り開いていこうという強い意志を持った方が合うと思います。自分の将来だけでなく、仲間の生活も自分が守るんだ、というような仲間意識を持った人にも来てほしいですね。そういう人材が集まれば、必ず会社は強くなると信じています。
ーー今後のビジョンについて教えてください。
堀井昭一:
5年後には、私は引退していると思います。マーケットの変化に合わせて会社の主役が代わっていくべきだと考えていますし、私に代わって社長になれる人材を会社に残したいと考えています。
やはりお客様のことを考えたとき、会社ベースで物事を考え、私個人が引退したとしても、会社が存続できるようにする必要があると思うのです。これからは現場のスタッフが前面に立ち、主役として会社を拡大させていってほしいですね。私は裏方として、ネクストリーダーの育成に注力したいと考えています。
理想は、現在のスタッフたちのDNAが会社全体に広がり、社員が50人、100人になっても、自分たちで会社をつくり上げていける状態です。マーケットの声を聞きながら、みんながワイワイと「こういうのはどうだろう」「ああいうのがいいんじゃないか」と声を出し合いながらものづくりをしている。そんな会社であってほしいですね。
編集後記
「5年後には引退する」と公言する堀井氏。その真意の裏には、確かなリーダーシップがあるのだと気づくインタビューだった。マーケットの声を聞き、周りを育て、次の世代へバトンを渡す。堀井氏の理念はスタッフの思いと溶け合い、i.Dという会社を成している。この会社がつくり出す未来の化粧品業界が、今から楽しみでならない。
堀井昭一/1968年生まれ。2006年、株式会社ジャパンゲートウェイを設立。2020年、株式会社i.Dを設立、現在に至る。