※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

東京を代表する街、銀座。この銀座の街で、1879年(明治12年)から商売を続けているのが、時計・ジュエリー・鉄道模型の製造・販売店である天賞堂だ。特に同社の鉄道模型には多くのファンがおり、高く評価されている。

取材したのは、同社の6代目を務める新本桂司社長。天賞堂が人々に愛される理由とは何なのか。事業内容や自身が地域の活動、今後の展望などを聞いた。

長年通ってくれるファンが多いのは、145年の歴史を持つ老舗店だからこそ

ーー事業内容について教えてください。

新本桂司:
弊社は時計、ジュエリー、鉄道模型を製造・販売する会社です。業界内で最も早く鉄道模型の製造・販売を始めた会社であり、スイスの高級腕時計OMEGA(オメガ)を日本に最初に輸入した会社でもあります。

創業当初はさまざまなブランドの時計を扱っていましたが、最近は特定のブランドに特化する商売スタイルに変更しました。その中でもOMEGAの売れ行きが特に良く、またオリジナルウォッチもよく売れています。

そのほか、企業向けの商品や記念品、さらに野球世界大会のチャンピオンリングなども手がけており、最近は野球関係のお客様も増えています。

ーーどのような層のお客様が多いですか。

新本桂司:
海外の方と、60歳以上の方が特に多いですね。年配のお客様の中には固定ファンもおり、昔からご利用いただいています。昨今、オンライン販売が主流になり、高齢の顧客獲得に苦戦している企業もありますが、この年代のファンをしっかりと獲得できているのが、弊社の強みです。

弊社は顧客獲得に向けて大々的なプロモーションはしていませんが、1997年から4丁目弊社ビルの店舗入り口に設置している「天使の像」が宣伝の役割を果たしています。天使の像は銀座の名物でもありますし、これをきっかけにお店へ足を運んでくれる方も少なくありません。

また、コロナ禍にはオンラインでオリジナル商品の注文が増え、銀座に来ることができない地方のお客様からも、天賞堂の商品が親しまれていることを実感しました。

銀座で街の様々な活動に参加する魅力は、広く強いつながりを持てること

ーー新本社長は銀実会をはじめとして銀座の街の活動にも力を入れているそうですが、どのようなメリットがありますか。

新本桂司:
銀座は代々商売を続けている個人商店の方が多くいらっしゃいます。そのため、銀座の色々な会に所属していると広いつながりを持つことができます。

私は青年会時代から街の活動に参加していますが、当時はほぼ毎日メンバーに会っていました。ここまで縦横の強いつながりを持てるのは、世界屈指の街、銀座だからこそだと思います。

青年会において最近は女性のメンバーも増えており、非常に活気があり、地域活性化につなげる目的もあるので、若い方々がもっと参加してくれると嬉しいですね。

人材の育成に注力し、時計・ジュエリー・鉄道模型すべての事業を成長させたい

ーー今後はどういったことに注力していきたいですか。

新本桂司:
1つは、採用と教育です。弊社には、時計や鉄道模型など弊社の商品が好きで入社する方もいれば、銀座という土地に惹かれて入社する方もいます。最近は女性の割合が高まっており、社内で活躍してくれています。

きちんとコミュニケーションをとれる若い方がたくさん来てくれると嬉しいですね。

教育に関しては、経理など、販売とは直接関係のない職種の社員にも、現場を直接、目で見る等してもらいたいと考えています。今後は、こういった教育面にも力を入れていきたいと思っています。

もう1つは経営幹部の育成です。やはり現場をしっかり取りまとめる存在は重要です。同じ環境にいるとなあなあになってしまうので、今後改善していきたいですね。

そのため、経営幹部となる人材を新たに育成し、社員を上手くマネジメントできるようにしていきたいと思います。人材の育成や成長に取り組みながら、今後はさらに商品の供給を安定させ、時計、ジュエリー、鉄道全部の事業をまんべんなく成長させていけたらと思っています。

編集後記

今や銀座の街に必要不可欠な存在の天賞堂。店舗へ足を運ぶのが難しかったコロナ禍には、オンラインからの売り上げが伸びるなど、東京だけでなく全国にファンがいることがうかがえた。だが、あくまで大切にしたいのは対面でのお客様との出会いである。

新しいトレンドが次々と生まれる時代の中でも、同社の商品は時代を越えて人々から愛され、日本の「ものづくり」の素晴らしさを国内外で広めてくれるだろう。

新本桂司/1976年東京都生まれ、法政大学卒業。美術会社を経て2006年に株式会社天賞堂に入社。2014年、代表取締役社長に就任。