※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

置き型社食®︎サービス「オフィスおかん」を軸に、リテンションマネジメント事業を展開している株式会社OKAN。100円(想定)という手頃な価格で栄養バランスのとれた惣菜を提供するだけでなく、意識調査・組織課題改善サービスも手がける。今回は、その多角的なアプローチで、働く人の幸せと企業の成長の両立を目指す株式会社OKANの代表取締役、沢木恵太氏の話をうかがった。

社会への貢献を志し、ビジネスの世界へ

ーー起業を決意したきっかけについて、教えてください。

沢木恵太:
私が起業を意識し始めたのは、大学生のころです。これから社会に出るというタイミングで、「社会人とは何だろう」と真剣に考えていました。私なりに出した答えは、「社会に属し、社会に貢献するような活動をする人」というものでした。そこで次に、どうすれば社会に対して最も大きな関わり方ができるのかを想像しました。その結果、事業をつくり、その事業を通して社会に貢献したいと考え、起業を目指すこととなりました。

ーーどのような分野で起業を考えたのでしょうか?

沢木恵太:
最初は漠然としていましたが、徐々に方向性が見えてきました。自分の能力を最大限に発揮できるテーマを模索する中で、「自分はエンターテインメントなどの非日常の領域ではなく、日常や生活インフラの領域を手がけたいのかもしれない」と思い始めたのです。そこで、生活に密着した定期宅配のサービスに注目しました。

2012年頃はサブスクリプションというビジネスモデルやサービスが注目され始めたタイミング。そこで、「ご自宅に直接サービスを提供し、社会で働く人々を助ける」というプランと、「職場にサービスを提供し、そこで働いている人たちを助ける」というプランの2つを持って起業しました。

まずは「食」を通じて働く人を支える

ーー貴社の主力サービスである「オフィスおかん」について、詳しく教えてください。

沢木恵太:
弊社が展開している「オフィスおかん」は、働く方々がいつでも健康的な食事を気軽に、そして経済的に手に入れられる環境をつくることを目指すサービスです。サービスの仕組みとしては、オフィスや物流拠点、介護施設といった人々が働く場所に冷蔵庫や自動販売機を設置し、栄養バランスを考慮した個包装の惣菜を提供しています。惣菜の(想定利用)価格は1個100円としており、働く方々が気軽に食べられる価格設定としています。

「食」をメインにしたサービスではありますが、弊社自体は食品会社ではありません。さまざまな方法で、人材に対するサービスを提供する、「人材領域の会社」として活動しています。

ーー「オフィスおかん」の導入企業には、どのような特徴がありますか?

沢木恵太:
「オフィスおかん」は、全国のさまざまな規模の企業に導入されており、業種や業界も多岐にわたりますが、特にお客さまの多い業界があります。それは、医療福祉、物流、建設、製造などです。これらの業界に共通するのは、ノンデスクワーカーやエッセンシャルワーカーと呼ばれる現場の方々が多く、人手不足が顕著な点。日本の就業人口の過半数をノンデスクワーカーやエッセンシャルワーカーが占めているにもかかわらず、これらの業界では人手不足に悩んでいるのです。

そして、このような業界では、人材の定着が大きな課題となっているため、弊社は「オフィスおかん」を通じて、働く人の健康維持や福利厚生の充実を促進し、この課題解決に貢献しています。日常的な食事を通じて企業の重要な経営課題にアプローチできることが、「オフィスおかん」の大きな特徴と言えるでしょう。

人材定着支援の総合ソリューションを目指して

ーー「オフィスおかん」以外のサービス、「ハタラクカルテ」についても教えてください。

沢木恵太:
「ハタラクカルテ」は、意識調査・組織課題改善をするサービスです。これは働く方々に簡単なアンケートを実施することで、その回答をもとに仕事に対する価値観や満足度を可視化します。そして、解決しないと離職につながってしまう問題などについて、自動で分析するのです。

なぜこのようなツールが必要なのかというと、多くの企業では、従業員の退職の理由がわかっていないからです。「ハタラクカルテ」を使うことで、企業は効果的な人材定着策を立てることができます。

ーー今後の事業展開について、お聞かせください。

沢木恵太:
5年後には、「オフィスおかん」や「ハタラクカルテ」以外の事業を、少なくとも1つは増やしたいですね。具体的には、企業の人事部門を総合的に支援するサービスの開発を検討しています。人材の採用から育成、定着までを一貫してサポートするソリューションを提供することで、企業の成長と働く方の幸せの両方に貢献したいのです。

私たちは、これらのサービスを通じて「リテンションマネジメント事業」という新たな領域を切りひらいています。リテンションマネジメントとは、働く人の定着を管理することを指します。今後、人材定着のための投資がますます重要になっていくでしょう。そのことも考慮して、常に新しい課題に挑戦し、より多くの企業と働く人々を支援していきたいと考えています。

編集後記

インタビューを通じて、企業の人材についての課題に対する新たなアプローチの可能性を感じた。同社が提供する「オフィスおかん」は、一見シンプルな食事提供サービスに見えるが、実際には奥が深い。人材定着や健康経営という現代の重要課題に対し、食事を通じてアプローチする発想は、灯台下暗しだった。

沢木恵太/1985年長野県生まれ。2012年に起業し、株式会社OKANの代表取締役として活動。「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションに掲げ、望まない離職を生まない組織づくりを支援するためにリテンションマネジメント事業を展開。主なサービスに「ハタラクカルテ」や「オフィスおかん」などがある。健康経営や人材定着(リテンションマネジメント)に関する講演、企業研修、自治体での委員活動など、多方面で専門家として活躍している。