
日本では仕事を通じて自分の未来を切り開こうとする人々が増えている。そんな中、大学生時代に描いた「夢リスト100」をきっかけに起業し、頑張りたい人々のために新たな働き方の基準を模索する企業がある。
設立からわずか4年で、他社を凌駕する集客力と独自の広告戦略で急成長を遂げ、「ここで働きたい」と思わせる場を提供してきたLAPI-Staff(ラピースタッフ)株式会社だ。代表取締役の前田牧人氏に、設立の背景や推進する戦略、そして描く未来について話を聞いた。
「夢リスト100」が導いた起業への道
ーー起業を目指した経緯についてお聞かせください。
前田牧人:
幼少期から高校時代まで、与えられた環境でそれなりに努力はしていましたが、心から打ち込める目標には出会えませんでした。大学生になり、本気で取り組めるものを見つけたいと考え、「自分の会社を持つ」「好きな時に海外に行く」「仕事と趣味を両立する」など、やりたいことを100項目リストアップしました。その結果、これらの夢は一般的な働き方では実現が難しいと気づき、起業を意識するようになったのです。
ーー実際に起業を決意したきっかけは何でしたか?
前田牧人:
大学卒業後、マイナビに入社しました。人材業を選んだ理由は、将来の起業を見据え、経営者層との接点を持つ経験を積みたかったからです。多様な事業を展開するマイナビで働くことで、自分の可能性を広げられると考えました。
ある時、取引先の社長から「出資するから独立してみないか」とお声がけいただいたことが直接のきっかけです。当初は30代半ばでの独立を考えていましたが、このチャンスを逃すべきではないと判断し、26歳で起業を決意しました。
組織運営の壁とリーダーシップの進化
ーー起業から4年、苦労したことはありますか?
前田牧人:
事業を成長させたい一心で感情的になる事が多くなってしまって、思ったように組織がまとまらないことに悩みましたね。私は仕事にストイックに取り組みたいタイプですが、周囲にとっては厳しすぎると感じられたのだと思います。事実、厳しすぎた部分があったと反省しています。結果として、全体のモチベーションの低下を招いてしまったと思います。
ーーその問題をどのように克服しましたか?
前田牧人:
悩みがピークに達した際、株主に誘って頂き1週間の釣り旅行に出かけ、スマートフォンをオフにしてデジタルデトックスを実践しました。自然の中で静かな時間を過ごすことで、完璧を目指すことだけが正解ではないと気づき、肩の力を抜くことができたのです。
それ以降、メンバーの意見や価値観を尊重する姿勢を取り入れるよう努めています。その結果、以前よりもチーム内のコミュニケーションが円滑になり、組織の雰囲気も前向きになっているように感じます。
独自のノウハウを用いた圧倒的集客力

ーー貴社の事業内容と強みを教えてください。
前田牧人:
弊社は、人材派遣事業を主軸に展開しています。具体的には、工場や軽作業、オフィスワーク、コールセンター、販売など、多様な職種の企業と取り引きがあります。また、派遣スタッフのキャリアアップを支援するために、人材紹介業も開始しました。まずは派遣社員として働き始め、その後、正社員としての就職を支援することで、長期的なキャリア形成をサポートする環境を整えています。
弊社の最大の強みは一般的な求人媒体のみではなく、SNS広告やWEB広告を活用したり、コンセプトを織り交ぜた募集を行ったり、独自のノウハウを用いた集客力にあります。通常、派遣会社が一人の応募を得るのにかかるコストの約5/1で、応募を頂く事が出来ております。この費用対効果が競合他社との差別化につながっています。
ーーWEB広告事業を開始したそうですが、その目的と内容を教えてください。
前田牧人:
2024年から本格的にWEB広告事業をスタートしました。この事業では、広告の力で人材採用を支援するほか、企業の認知拡大やブランディングにも貢献しています。特に人材業界では効果的な広告運用が応募者数に直結するため、弊社の強みである集客力を横展開する形で、お客様の課題解決に活かしております。
ーー貴社の取り組みは社外からも高く評価されていますが、これについてどのようにお感じですか?
前田牧人:
大変光栄なことに、「ベストベンチャー100」や「SalesNow成長企業セレクション2024」に選んでいただきました。これは、派遣スタッフさんを含め、社員一人ひとりが努力を積み重ね、クライアントや業務に真摯に向き合って下さった結果です。とても感謝しています。私たちはこの成果に満足せず、さらに信頼される企業を目指して邁進したいと思います。
多くの人に働く場を提供する使命
ーー「頑張る人を応援したい」という理念と、具体的な取り組みについてお聞かせください。
前田牧人:
創業当初、持病のある女性から「どうしても働きたい」と就業条件の相談を受けたことがあります。しかし、当時はまだ十分な体制が整っておらず、彼女を満足にサポートすることができませんでした。その経験が今でも心残りで、誰もが働ける環境をつくることが自分の使命だと考えるようになりました。
現在では、派遣社員から正社員へのキャリアアップ支援や、多様な業界との提携を通じて幅広い選択肢を提供しています。弊社の成長力を活かしながら、働きたいという思いに応える支援を続けています。
ーー今後のビジョンを教えてください。
前田牧人:
同業他社を分析すると、成長企業は設立から5〜6年目で業績が飛躍的に伸びる傾向があります。2025年は弊社にとって設立5年目の節目であり、このタイミングを成長の好機と捉え、さらなる挑戦を続けていくつもりです。私たちの目的は、社会の採用基準そのものを変えることです。まずは特定の地域でしっかりと実績を作り、その地域の新たな採用基準をつくりやすくすることを目指しています。
現在は次世代を担う若手人材のキャリア支援に注力していますが、弊社が新しい採用基準になることで、いずれ高齢者やハンディキャップのある方々も働きやすい社会を実現できると考えています。そのために8年後には売上100億円を達成し、人材派遣業界でTOP30入りを果たすことが現在の目標です。
編集後記
「頑張りたい人に、頑張れる環境を用意するのが自分たちの役割だ」と迷いなく語る前田氏の姿勢は力強い。設立からわずか4年で業界に革新をもたらし、働き方改革の一端を担うLAPI-Staff株式会社。今後、社会の採用基準そのものを変え、高齢者や障害がある人々にとっても働きやすい社会の実現に向けて、さらに大きな歩みを進めるだろう。その挑戦がどのような成果を生み出すのか、次なる展開に期待したい。

前田牧人/1994年神奈川県生まれ、2016年に新卒で株式会社マイナビに入社し、約4年従事の後、2020年にLAPI-Staff株式会社を設立。