※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

株式会社ウイルテックは、1992年に設立された製造請負事業を祖業とする会社だ。製造現場での請負い事業、人財派遣事業から始まった同社は事業拡大を続け、今日では製造請負・製造派遣サービス、エンジニア派遣サービス、EMS(電子機器受託製造)と幅広いサービスを展開し、国内外で存在感を発揮している。

代表取締役社長執行役員の宮城力氏は、同社にアルバイトとして入社後、業界の雇用慣習に疑問を持ち改革を行い、また、既存の事業を活かすことで新規事業を生み出し続けている。これまでの経緯や今後の展望などについてお話をうかがった。

製造請負というビジネスモデルを提案することで、雇用を安定

ーーこの業界に飛び込んだきっかけや、入社後の取り組みなどについて教えてください。

宮城力:
大学では、化学について学んでいました。いわゆる「苦学生」だったため学費を自分で払う必要があり、時給が高く自宅からの通いということで、弊社の前身であるアイピーエヌに応募したという経緯があり、業界に特別詳しかったわけではありません。

入社当時は、大学に通わせてもらいながらも、遊びに夢中になっている同世代の大学生を尻目に「負けないぞ」という思い、反骨精神があったと思います。

当時の雇用形態や労働契約は、今と比較して制度的に整備途上。私が出勤すると、前日まで一緒に働いていた方がいなくなっている、ということがよくありました。不思議に思い、営業担当に「昨日までいた◯◯さんはどうしたのか?」と尋ねたところ、「今日は仕事が少ないから声をかけていない」と言われたのです。中には家庭のある方もいたことを知っていた私はとても驚き、「そうした方々ではなく、独身の私の方を切ればいいじゃないか」と憤慨したことを覚えています。同時に、ただ憤るのではなく、新しいアイディアが何かあれば、この理不尽な状況を改善できるのではないかと思ったのです。

正社員としてそのまま入社した後も、その時思った「業界を変えたい」という気持ちを忘れることはありませんでした。そこで、他社はどのようにしているのか、現場で働く方はどう思っているのか、といったところから地道に情報収集を始めることにしたのです。

そのような中で、製造業を営むクライアントへ、「現場で1日働くこと」に報酬を支払うのではなく、「製品が完成する」ことをゴールとして提案しました。これならば自分たちである程度の生産計画を立てられますので、急に仕事に呼ばれなくなるということもなくなり、業務の完遂を誰もが見通すことができます。この成功体験が、私が製造請負業界でキャリアを形成するきっかけになったと思います。

ーー新たな事業のアイディアはどのように出されているのでしょうか。

宮城力:
ゼロから全く新たな業務を生み出すというよりは、目の前の仕事を進めるなかで生まれた課題や疑問を解決することが、新たなサービスにつながっています。たとえば製造請負の契約が増えていった当時の弊社やクライアントには、「一人ひとりに時給を払うのではなく、業務の完遂に対価を払う」という意識が少しずつ根付き、以前は10人で進めていたような現場でも、作業方法や作業場のレイアウトの見直しによって、場合によっては8人で進めることも可能となっていきました。

そのうちに、弊社とクライアントの間で「この現場は、8人で進められる」という共通認識ができあがっていくのですが、人による作業だけでは期限内に完遂させることが難しい現場も徐々に出てくるようになったのです。そこで私は「自社内で機械化・自動化を進められる設備を整えれば、弊社のメンバーが限られた人数であっても、効率的に仕事を進められるようになるのではないか」と提案し、これが技術部門(現在の技術サービス部門)が立ち上がるきっかけになりました。

このような工夫を重ねながら順調に事業拡大を続けてきた弊社でしたが、2008年頃に起きたリーマンショックによって大きな影響を受けます。日本の多くのメーカーが、生産拠点を人件費の安い海外へ移す流れができ、製造請負・製造派遣の市場規模は縮小し、それに伴い弊社の仕事も少なくなってしまったのです。

しかし、一緒に働いている仲間はスキルの高い優秀な方ばかり。待機していただくばかりでは、お互いにとって機会損失になると思い、「モノづくりをしてきた私たちだからこそ、モノを直すこともできるのではないか」と提案して、新たに修理サービス事業をスタートしました。

代表取締役社長執行役員となった今も、全体を見渡し新たな挑戦を続けている

ーー2016年に代表取締役社長に就任され、新たな立場で気付いたことはありましたか。

宮城力:
「社長になりたい」と思ってなったのではなく「業界を変えていこう。自分たちにできることはないか」と考え行動し続けた結果が今の立場です。

私は、就任前までは現場を見て、必要だと思った改革や事業展開を行ってきました。しかし社長になると、すべての現場を見て回ることは難しくなり「部下に任せていかなければいけない」という新たな気づきを得たのです。

今までは自分自身で「現場を見て、アイディアを出し、すぐに実行する」ことができていたのですが、今は社員の意見を聞きながら、実現するための方法を共に考えています。会社が成長し続けるためにはトップダウンではなくボトムアップにしていかなければならないと考えるようになり、私自身も学びのある日々を過ごしています。

ーー上場されて、社内で変わった点があれば教えてください。

宮城力:
弊社は2020年に東京証券取引所市場第二部、2022年に東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。これにより情報公開が進み、社員にも「経営陣が何を考え、どこを目指しているか」が伝わりやすくなったと実感しています。請負や派遣の現場で働く方々や若手社員にとって、経営は遠い話に感じられるかもしれません。

しかし、会社がどこに向かおうとしているのかを明示することで、「自分たちは何をすべきか」を一人ひとりが自主的に考えるきっかけが生まれます。もちろん、そのような中で「自分は違う道に進みたい」といった思いを持つ社員がでてくることもあります。どちらが良い悪いの話ではなく、組織も、社員個人も、目線を合わせながら、共に信じる道を歩んでいくことが大切だと思っています。

ーー現在のウイルテックの強みと、そこから生まれる新たな動きについてお聞かせください。

宮城力:
現在は製造業・建設業・IT業界向けの請負・派遣事業をメインに手がけており、多くの現場を経験したことで、さまざまなノウハウを蓄積していることが強みです。そして弊社の特徴は、複数の柱事業のバランスを保ちながら成長投資を行っていることだと考えています。リーマンショック時の経験をもとに、一つの事業に極端に偏るのではなく、好調時・不調時にも互いに補い合いながら、お客様に対して幅広いソリューション提案ができるグループを目指しています。

そして何よりも「人財」が私たちの強みです。実は、お客様から「来てくれた方がとても優秀なので、自社雇用に切り替えたい」とご相談をいただくことがあります。もちろん弊社も優秀な方を手放したくはないのですが、高く評価してくださるのは嬉しい話だと思い、新たな門出を応援しています。

人財の採用・育成に注力し、ウイルテックの新たなサービスを世の中に広めていきたい

ーー今後の事業展開について教えてください。

宮城力:
人財がいないと現場はまわらず、サービスを広めることもできないため、採用・育成に注力していきたいと考えています。

弊社では職種や雇用形態にとらわれず、たとえば「現場で働いている方でも、将来は本社での管理系業務に挑戦したい」という方がいれば、希望するキャリアに柔軟に挑戦できるように、ポスティング制度というものを設けています。このように多様な経験を持つ人財が活躍できる場となり、新たなアイディアが生まれることを目指す弊社にとって、人財の採用と育成は最重要課題です。単に目の前の案件のために募集するだけではなく、直接対話をしながら希望するキャリア形成を一緒に考える機能を強化していきたいと考えています。

私自身も理系の学部出身ながら今は経営を担っているように、大学で学んだことと社会に出てから経験している仕事内容が一致していないというケースは多くあるでしょう。また、現在の業務がその方に最適だということばかりでなく、業務を変えてみるとより高いパフォーマンスを発揮できるケースがあることを実際に見てきました。そのため、社員一人ひとりがその人らしいキャリア形成ができるようにキャリアコンサルティングも社内で受けられる体制を整えました。

これからも、経営陣と社員、双方向のコミュニケーションを増やしていきたいと考えています。私や役員、上司に言われたことをこなすのではなく、社員の中から何人も「こんなことにチャレンジしてみたい!」「社長になりたい!」と言ってくれる人が出てきてくれると、当社の成長スピードも早まりますし、とても嬉しく思います。

ーー新規事業展開・顧客開拓を行い、目指す姿についてお聞かせください。

宮城力:
私たちは既存事業を常にアップデートし、事業ポートフォリオを少しずつ変えながら成長してきました。「現在の市場ニーズから今後成長する分野はどこか」「その分野にアプローチするためにはどのような技術やソリューションが必要となるか」などいくつも仮説をたてながら詳細にリサーチをすすめ、私たちが持つノウハウを活かすことで新たな付加価値としてお客様にご提案できるかの検証を重ねています。

たとえば現在、弊社ではEMS(電子機器製造受託サービス)事業を立上げ、事業の拡大に注力しているところです。これは、弊社のもともとの主力事業であった製造請負・製造派遣事業だけではお客様から100%信頼していただくことは難しいと感じ、自社内でも生産技術から品質管理まで完結できることを示すことが重要だと考えたためです。そこで、プリント基板等のEMS事業を行っていた会社や国内の老舗照明メーカーをM&Aによってグループに迎え入れ、各社の強みや技術を活かしながら新たなサービス展開を模索しています。私が大学で化学を学んでいたこともあり、2つの化学物質を結合させるクロスカップリング反応のように「今あるものを組み合わせれば、新しい事業ができる」ことを目指しています。

2024年3月期では、グループ連結の売上高は約357億円。弊社は売上1000億円のグループを目指しています。売上高が1000億円規模になると、会社の構造や事業内容も大きく変化し、できることも増え、成長のスピードも加速していくことでしょう。これからも多種多様な化学反応を生み出すような企業風土・文化・仕組みづくりを進めていきます。

編集後記

1999年にアルバイトとして入社したことをきっかけに、製造現場で働きながら新たな視点を持ち、業界の変革を実現してきた宮城社長。代表取締役社長執行役員となった現在も、新規事業の選択肢・同社社員のキャリアの選択肢などを柔軟に考える姿勢が印象的だった。サービスと技術を融合させた新たな事業を始める同社は、今後ますます成長していくことだろう。

宮城力/1977年生まれ、大阪府出身。1999年株式会社アイピーエヌ(現・株式会社ウイルテック)にアルバイトで入社。2013年に新規事業の修理サービス事業を立ち上げ、事業開発部ゼネラルマネージャー、同年に取締役に就任。2016年代表取締役社長に就任。2022年に代表取締役社長執行役員(現任)に就任。