※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

物流業界が直面する深刻な課題にドライバー不足がある。この社会課題に対し、ドライバー派遣、採用支援、外国人人材という多角的なアプローチで挑むのが株式会社ドライブトライブだ。同社を率いる鷹野雄太氏は、大手物流会社のドライバーからキャリアを始め、営業職を経てドライバー派遣事業を立ち上げた経歴を持つ。「考えるよりまず動く」という信念のもと、業界のイメージ変革と未来のインフラを支えるべく奔走する鷹野氏に話を聞いた。

「考えるより動く」現場経験を持つ経営者の信念と軸

ーー鷹野社長のキャリアのスタートについてお聞かせください。

鷹野雄太:
もともとは料理人を目指しており、フランス料理の専門学校を卒業後、フランス料理店に就職したのですが、そこはすぐに辞めてしまいました。

その後、大手運送会社でアルバイトをしていたところ、「社員にならないか」と声をかけていただいたのが、この業界に入ったきっかけです。当時は「稼げるから」という理由で、あまり深く考えていませんでしたが、そこで宅配ドライバーとしてキャリアをスタートすることになりました。

ーー仕事をする上で大切にしている考え方や信念はありますか。

鷹野雄太:
「考えるよりまず動く」ことです。社員にもよく言いますが、失敗してもいいからまず動く。色々考えてしまって動けない方が多いと思いますが、私はずっと「まず動く」という軸はぶれていません。

また、ドライバーは一人でハンドルを握っていますので、基本的に孤独です。「ほっといてくれ」「それがいいからドライバーをやっている」という人もいますが、意外にそういう方でも、声をかけてみるとたくさん話してくれることもあります。そのため、社員には「派遣したドライバーとのコミュニケーションはしっかり取ろう」と伝えています。

物流人材不足を見据えた多角的な事業展開

ーー改めて、貴社の事業内容を教えていただけますか。

鷹野雄太:
弊社の事業の根底には、2030年までにドライバーが27万人不足すると予測されている深刻な社会課題があります。この解消に向け、弊社は「ドライバー派遣事業」「ドライバー採用支援事業」「外国人人材の提供」の三事業を柱とし、多角的に展開しています。

ーードライバー派遣事業を始めたきっかけについてお聞かせください。

鷹野雄太:
一度、営業会社に勤めてノウハウを勉強し、その後もう一度物流業界に戻りました。最初に運輸業に関わった頃も今も、とにかく人がいない状況は変わっていませんでした。

以前勤めていた軽貨物の会社では、車と人をセットで紹介する事業を展開していたのですが、商談を進める中で「車はあるが、人だけ欲しい」という声を多くいただきました。「人を派遣だけでいいのか」と驚き、その会社の社長と交渉し、ドライバー派遣の事業を立ち上げることになりました。

ーー立ち上げ当初、どのような課題がありましたか。

鷹野雄太:
金額、コスト面が大きな課題でした。派遣元の弊社が雇用主として社会保険料を負担しますし、そこには諸経費も乗ってきます。そのため、私たちが請求する派遣料は、運送会社のドライバーに支払う給料よりも高くなります。

それを知ったお客様からは「なんでうちのドライバーより高いんだ」と、すぐには受け入れていただけませんでした。そこで「社会保険や雇用リスクも弊社が受け持ちます」というメリットや、求人媒体を使用した際の採用にかかるコストとの比較などを具体的にお伝えしながら、徐々に理解を広げていきました。

ーー採用支援事業についても詳しく教えてください。

鷹野雄太:
弊社は「DRIVE X(ドライブ エックス)」という名称でドライバー派遣から進化したドライバー採用求人広告サイトを展開しています。しかし、単なる求人サイトではなく、業界全体のイメージ向上も目指す「HRメディア」として立ち上げました。

求人情報はもちろん、若い方に「ドライバーをやってみたい」と思ってもらえるよう、免許制度の情報などを分かりやすく発信しています。ほかにも、業界ニュースや経営者との対談記事など、多角的なコンテンツを掲載し、求人サイトと業界メディアとの「ハイブリッド型」メディアとして、これからさらに進化させていく方針です。

このメディアを立ち上げた背景には、物流やドライバーのイメージを、もっとかっこよく、面白くしたいという思いがあります。その一環として、「ドライブワン」というオリジナルのキャラクターもつくりました。これは車からトランスフォームするロボットで、ウェブプロモーションなどに活用しており、私たちと同世代の方に刺さるのではないかと考えています。

鍵は外国人人材 ネガティブを払拭する「2年運転経験 × 日本免許」独自の取り組み

ーードライバーの人材支援事業における「外国人人材」についてお考えをお聞かせください。

鷹野雄太:
2024年4月から、在留資格・特定技能の対象分野に「自動車運送業(トラック、バス、タクシー)」が加わりました。日本国内の人材だけでは足りないため、この分野にも力を入れています。外国人人材の導入にあたっては、「運転技術は大丈夫か?」「言語やコミュニケーションは?」という声をいただきます。やはり事故や意思疎通への不安があり、まだ牽制しているお客様が多いのが実情で、世の中的にもネガティブな意見が多いのは事実です。

しかし、日本人だけでは、今後のドライバー不足を補いきれません。そこで弊社では採用基準として「日本で運転免許を取得し、2年以上の運転経験がある人材」に絞っています。標識や交通ルールはもちろん、日本での生活もすでに定着している方々ですので、企業様の不安を払拭できる形でスタートさせています。

若手採用の困難を解消する制度の変革

ーー社内の雰囲気について教えてください。

鷹野雄太:
社内は和気あいあいとしています。オフィスではBGMが流れ、疲れた時にはコーヒーを飲んだり適度にリフレッシュしながら、集中して仕事に取り組める環境です。昔ながらの厳しいルールはありません。ただ、和やかなだけではありません。たとえば、インサイドセールスで成果が出ていない時などは社内も緊張感が高まり、成果に対するメリハリを大切にしています。

また、弊社にはゴルフ部があり、任意参加ですが社員の半分以上が所属するほど盛んに活動しています。私たちの仕事は直行直帰が多く、全社員が顔を合わせる機会が少ない側面があります。だからこそ、部活動での交流は大切にしています。

ーー貴社ではどのような方が活躍していますか。

鷹野雄太:
やはり、「まず動く」人ですね。いろいろ考えすぎて、そのまま一日を終えてしまう人も中にはいます。ですが、活躍している人はとにかく動いています。定期的に社員の営業報告も受けているのですが、それを見て「この子はいける」と感じる人は、やはり行動量が違い、実際に成績もしっかりとついてきている印象です。

ーー最後に今後の目標を教えてください。

鷹野雄太:
業界として、2030年にドライバーが27万人不足し、輸送能力が30%減少するという課題が予測されます。この課題に対し、既存事業の拡大を進めることはもちろんですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。自社メディアでの情報発信などを通じて、ドライバーのイメージそのものを変革し、業界自体を「人がうるおう業界」に変えていくことが、まず目指すべき目標です。また、若手がドライバー職に挑戦しづらい現状も、業界にとって大きな課題だと感じています。

さらに、短期では難しいかもしれませんが、業界の一番のネックとなっている免許制度の問題に対しても、国に働きかけていきたいです。以前は普通免許で4トン車まで乗れましたが、現在は乗用車しか運転できず、これが若い方のドライバー採用を困難にしています。最終的には、制度自体の変革を成し遂げることが、私たちの長期的な目標です。

編集後記

「考えるよりまず動く」。鷹野氏の言葉は、ドライバーから営業、そして経営者へとキャリアを築いた彼自身の行動力に裏打ちされている。ドライバー不足という深刻な社会課題を、単なる人材派遣ではなく、「メディア」「テクノロジー」「グローバル」と多様な視点で業界のイメージごと変革しようとする視座の高さに驚かされた。物流というインフラの未来は、同社のような挑戦者の未来をつくる存在になりつつある。今後の飛躍が楽しみだ。

鷹野雄太/1979年神奈川県生まれ。大手物流会社に入社後、ドライバーとして7年間の現場経験を積む。その後、物流業界の人材不足解消を目指し、ドライバー派遣事業を立ち上げる。2024年5月、株式会社ドライブトライブ代表取締役に就任。現在は、業界全体の人材不足解消に向け、ドライバーの転職支援や特定技能の外国人材支援事業にも取り組んでいる。