※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

建設省(現在の国土交通省)から許可を受け、1973年に財団法人住宅部品開発センターとして設立された一般財団法人ベターリビング。同財団は、BL部品(優良住宅部品)の認定から、あらゆる建築物に関する評価、試験、登録まで手がけており、公正・公平な第三者機関として人々の暮らしの安全を守っている。

2022年6月に理事長に就任した眞鍋純氏は、もともと国家公務員として街づくりや住宅行政に携わっていた人物だ。眞鍋氏に今回、豊富な知識と経験、高い専門性を持つ同財団の取り組みについて聞いた。

国家公務員を退職し、ライフワークだった仕事に理事長として挑戦

ーー貴財団の理事長を務めることになった背景や、理事長として大切にしている考えを教えてください。

眞鍋純:
役所に勤めていた35年間のうちの29年間は、建設省、国土交通省で住宅局の仕事に携わっていました。

ベターリビングの理事長に就任したのは、国家公務員として住宅や建築、街づくりの行政に関わる中で、これらの仕事が自分にとって欠かせないライフワークになっていますので、理事長の就任も、この点を認めていただいたからではないかと思います。

理事長に就任した当初、私が考えていたのが「これまでの役所の発想にとらわれず、独自の発想で人々に求められるサービスを提供したい」ということです。なかなか実現は難しいのですが。

第二次世界大戦が終わってから住宅不足の時期が長く続きましたが、数が満たされるようになると、数ではなく安全性や省エネ対策、利便性など、住宅の質が求められるようになりました。

住宅に求められる要素が変化し、行政の政策もどんどん変わる時代の中、柔軟な発想で「社会や政策、産業から求められる役割を果たす」という考えを大切にしています。

長年の経験と豊富な知識が強み。BL部品の認定と検査・試験業務の2軸で事業を展開

ーー事業の内容や強みを教えてください。

眞鍋純:
弊財団は、BL部品の認定や建築物に関連する試験など、複数の領域で事業を展開しています。BL部品の認定はもともと当時の建設省が担当していましたが、1987年から私たちの財団独自の基準のもと自ら認定する仕組みに変わりました。

試験業務に関しては、つくば市内の試験センターで部品の試験をする業務からスタートし、現在は住宅やビルなどあらゆる建物の構造や環境、防火、耐久性などの試験を行っています。ハウスメーカーやゼネコン、建材メーカーなど、大手中小関係なく幅広い企業と取引している状況です。

博士号を取得している社員が14名いるなど、長年培われた知識と経験を持った職員が多く在籍しているのも大きな強みです。

ーー採用に対する考えや取り組みについても聞かせてください。

眞鍋純:
採用に関しては、新卒も採りたいと思っていますが、弊財団は現状、知名度がまだそこまで高くないため、あまり上手くいっていないのが実情です。そのため、現在は経験や知識を重視して中途採用を中心にしています。昨年度は大阪拠点の立ち上げなどもあり、12名を新規に迎え入れました。

弊財団では、新しい発想ができる方を求めています。財団の現在の仕組みやサービスを維持しつつも、さらに良い方向に発展させるために若い人を採用する方針です。常に新しい風を吹かせ、次代の経営にも携わってもらいたいですね。

環境対策・DX・人材育成の3つに注力し、社会により貢献できる仕組みをつくる

ーー今後の展望を聞かせてください。

眞鍋純:
主な注力テーマは、環境対策、DX、人材の育成です。

環境対策に関しては、環境保護と経済成長を両立させながら事業を行う「GX(グリーントランスフォーメーション)」の取り組みへの貢献です。今まで培ってきた建物や住宅部品の審査ノウハウを活かして、社会の要請に応えながら新しい役割を果たしていきたいと思っています。

どのような取り組みをしていくかは目下検討の最中ですが、新しい取り組みを始めることは既存事業にもプラスになると信じておりますし、今後数年以内には形にしたいです。

DXについては、ペーパーレス化は当然のこととして、お客様からの多様な申請や要請に対して、素早く的確に対応できる仕組みづくりを想定しています。

現在はそれぞれの手続きに対して個別で対応しているので、たとえば1つの建築物件の書類を提出いただければ、複数の審査の申請ができるようにするなど、手続きの一本化を目指して検討を進めているところです。実際に今、お客様の手続きをできる限り簡略化し、私たちもクイックレスポンスできるよう、社内でチームを編成して取り組んでいます。

そのほか、昨年、関西エリアで初めて開設した大阪事務所(構造判定室)からお客様を増やしていく考えです。関西エリアの新規開拓に注力するためにも、人材採用などを含め体制の強化を進めていきます。

編集後記

BL部品の認定と建築物の試験という観点から、人々の暮らしを50年以上支えてきたベターリビング。「街づくりや住宅行政はライフワークだった」と語る眞鍋理事長からは、この仕事に対する情熱と誇りが感じられた。

「今後は環境対策の分野でも貢献していきたい」とのことで、歴史ある法人でありながら守りに入らず、新たな分野へ挑戦するベターリビングの今後が楽しみだ。

眞鍋純/1963年1月生まれ。東京大学工学部卒業後、建設省へ入省。国土交通省大臣官房審議官(住宅局担当)や国土交通省住宅局長を担った後、2022年6月に一般財団法人ベターリビング理事長に就任。