※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

1987年に設立された株式会社ビームス クリエイティブ。セレクトショップ「BEAMS(ビームス)」を運営する株式会社ビームスのグループ企業として、企業や自治体などを相手とする法人向けのビジネスをはじめ、広告やマーケティング、さまざまなデザインなどを手がけている。代表取締役の池内光氏に、詳しい事業内容や今後の展開についてうかがった。

クリエイティブな視点で小売の未来を変える新たな一歩

ーーご経歴を教えていただけますか。

池内光:
大学卒業後、新卒で入社した株式会社電通に23年ほど勤務しました。大手企業担当の営業職を務めたのち、13年目からはクリエイティブ領域のプロデュース業務に移りました。そこは、インターネットの普及など様々な時代の変化により、より統合的なプロモーションが必要となったため、多様化するクライアントの課題に応える部署でした。新しいことにチャレンジするのは非常に面白かったですね。

そこで約10年様々なプロジェクトのプロデュースを経験した後に、ビームスに入社しました。

ブランドビジネスに頼らない多様な戦略

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

池内光:
弊社は約30年の歴史があり、ビームスにおけるプレス・宣伝・販促・店舗設計・店舗デザインといった部門を擁するハウスエージェンシーとして機能してきました。

私が設楽から与えられたミッションの一つは、ビームスグループのさらなる発展のために「小売以外の大きな柱を作り、事業領域を拡張させること」でした。入社後はビームスの各部門に分散していたBtoB事業の窓口をビームスクリエイティブに一本化させました。さらに2024年3月の組織改編を経て、今まで以上に新規のBtoB事業開発を進めていきます。

ーー貴社におけるBtoB事業とはどのようなものでしょうか?

池内光:
まず「ビームスの名を入れた商品を作りたい」というお話をよくいただくことが多いのですが、クライアントからのお話しを丁寧に聞いていくと、限定品やコラボ商品を作るだけでは皆様が抱える根本的な課題を解決できないケースもありました。

そのためクライアントによっては、ビームスのブランド力だけではなく、ビームスが持つクリエーション力やノウハウで「企業の価値」を世の中に浸透させる継続的な取り組みを提案します。単なるブランドビジネスだけではない、新しいビジネスの余白を狙うのです。

ーー事業の成功事例をお聞かせください。

池内光:
釣具のダイワを展開するグローブライド株式会社様との取り組みで「DAIWA PIER39(ダイワピア39)」というブランドをディレクションしました。グローブライド様はダイワの名を冠した釣具において世界のフィッシングを牽引する会社で、「釣具ウェアのディティールを活かしたライフスタイルウェアの開発でアパレル領域を強化したい」とお考えでした。

当初のオファーはビームスとのコラボでしたが、最終目標はやはり自分たちのブランドを育てて、ダイワのファッションのイメージを定着させることです。そのため、私たちはダイワ商品のデザインやプロモーション、展示会運営を支援する一方で、ビームスでの販売は行わず、他のセレクトショップに販路を拡大させることで、「DAIWA PIER39」のブランド認知向上に貢献しました。

世の中をウォッチし続け、事業の種を見つける企業として

ーー将来に向けた取り組みはありますか。

池内光:
クライアントのお困りごとに新たな提案をするために、事業開発機能と営業体制をより強化する必要性を感じています。

ファッションを生業としている会社なので、メタバースやNFTなど話題の分野にいち早く取り組むなど、いい意味でミーハーな会社であり続けたいとも思います。企業の武器となる要素が眠っていることも多いので、門外漢ならではの強みで、事業を生むというよりは種を発見してビジネスにつなげる姿勢を大切にしています。

ーーどんな人と共に働きたいと考えますか?

池内光:
経験上「話しているうちにアイデアが湧いてきて、色々なところに話が飛ぶような人」は、面白い成果を出すことが多いなと感じています。

電通時代に関わった有名クリエイターは個性的な人ばかりでした。傍から見ると変人的・変態的な発想を持つ人には強いこだわりがあります。その人たちと合意をとりながら物事を着地させると、やはりいいものができるのです。

ただどんなに優れた能力を持っていても、一人で完遂できる仕事はほとんどありません。それぞれが果たすべき役割を持ってチームとして動くからこそ、より大きな成果がもたらされます。チーム全体でお互いをリスペクトしあえる関係性は常に意識していたいと思っています。色々な苦労ものちに笑い話になるので、現場の困りごとも含めて仕事を楽しみたいですね。

編集後記

人気ブランドとのコラボレーション商品は世の中で話題を呼ぶ。しかし、打ち上げ花火のように瞬発的な売り上げを得るだけでは、企業の課題解決に至らないことがわかった。ブランド力に頼るだけではない事業開発が、どのような種をまいていくのか。ビームス クリエイティブが花を咲かせる未来が楽しみだ。

池内光/1971年生まれ。大学卒業後、株式会社電通に入社。23年間の在籍期間のうち、前半は営業職、後半はクリエイティブ職に従事。プロジェクトを指揮するプロデューサーとして大小さまざまな企画を手がけた。2018年にビームスへ入社し、社長室室長に就任。2020年、株式会社ビームス クリエイティブの代表取締役社長に就任。