人材派遣・紹介事業やコンサルティング事業を手がける、株式会社Enrich MR Holdings。同社は、有名企業の社長陣が審査する「ベストベンチャー100」や「人財力100」に選出されるなど市場で高い評価を受け、グループ会社は7社に拡大した。
そんなEnrich MR Holdingsを率いる代表取締役の森龍一氏は、2013年に独立起業し、わずか4年間で年商20億円の企業をつくり売却した人物だ。そんな森社長の軌跡や、経営者として大切にする考え方、今後の展望を聞いた。
憧れを追い求めて人材派遣会社を起業
ーーご経歴を教えてください。
森龍一:
高校時代からバイクが大好きだったこともあり、自動車整備の専門学校卒業後はオートバイのカスタム業務の職に就きました。ただ、想像していたより稼ぐことができなかったため、この仕事は半年ほどで退職。その後、派遣社員として携帯電話の販売員の仕事を始めました。
この派遣の仕事がきっかけで営業職に魅力を感じるようになり、それと同時にきちっとしたスーツを着た派遣会社の営業担当者の姿を見て、自分もああなりたいと憧れるようになりました。その後、仕事で成果を出したことで、派遣会社にそのまま就職させてもらうことができました。
入社後も営業職として好成績を残せたのは、私自身に派遣社員としての経験があり、その視点も持っていたからだと思います。そのうち「今度は派遣会社の社長になりたい」と思うようになり、自分で人材派遣の会社を起業しました。
ーー起業後は順調でしたか。
森龍一:
創業4年で年商20億円ほどまで会社を成長させることができました。しかし、100%自己資金で始めた会社ではないため株を持っていなかったこと、さらに会社の主導権争いに負けたことで、会社から追い出されてしまったのです。
この経験から「次は100%自己資金で会社を始めたい」「株主の立場になりたい」と考えるようになりました。その仕切り直しとして最初に立ち上げた会社が、株式会社NEXTスタッフサービスです。
派遣社員のときは派遣会社の営業担当者、社長になってからは株主に憧れるなど、私は今まで自分の1つ上のポジションにいる人を追いかけてきました。
単純な憧れだけで起業しましたが、実際に会社を立ち上げるとどんどんこだわりも出てきて、徐々に憧れだけではやっていけないということが身にしみてわかるようになりました。
「見える化する力」と「成長性」で確固たる地位を確立
ーー会社や事業について教えてください。
森龍一:
自己資金で初めて立ち上げた会社が、コールセンターや物流、人材派遣、BPM(業務プロセス改善)などをメインに行うNEXTスタッフサービスです。次に、人材派遣や人材会社向けにコンサルティングを行う株式会社ファミリアモサ。次に、人材派遣やセールスプロモーションを行うエスエスパートナー株式会社を設立しました。
Enrich MR Holdingsに関しては、企業の経営に関する後方支援を行っていますが、弊社には採用に関するノウハウが豊富にあるので、最近は採用コンサルティングサービスの需要が増えています。
ーー貴社ならではの強みは何でしょうか。
森龍一:
私たちのこだわりのひとつに、「曖昧なものを定義して数字で扱えるようにする」というものがあります。たとえば派遣スタッフの心のコンディションを数字で見えるようにして問題解決したり、派遣スタッフの入社率・出勤率・残存率をKPI(事業成功に向けて数値化した目標)に表したりしています。
また、高い成長性も弊社の強みで、前例のない戦略や戦術を積極的に取り入れている点も、市場から評価されているポイントだと思います。
派遣社員時代の経験を通して気づいた「4つの実感」の重要性
ーー事業を行ううえで大切にしている考え方を教えてください。
森龍一:
NEXTスタッフサービスのミッションは「働く人の心と懐を豊かにする」で、この心の豊かさとは、必要とされている実感・貢献できている実感・成長できている実感・役に立てている実感の4つだと考えています。
私は派遣社員時代から、人の「無意識」にとても興味がありました。売れる営業マンが接客をすると、何となく無意識のうちに商品を買いたくなるものですが、その無意識の中には何かメカニズムがあるのではと考えたのです。
そういった派遣社員時代や派遣会社勤務時代の経験を通して、最もシンプルかつ重要な要素がこの4つの実感だと気づきました。
直接雇用の比率向上を支援して課題解決に貢献したい
ーー現在の注力テーマは何でしょうか。
森龍一:
1つ目は取引先の開拓で、各業界でトップ10に入るような大企業との関係を広げていきたいと考えています。2つ目は、弊社のノウハウをコンサルティングのような形で提供していきたいと思っています。そして3つ目は経営幹部の育成です。現在、グループ会社の経営者たちの成長につながる経験の提供に力を入れているところです。
また、IPO(新規株式公開)の準備を踏まえて、内部統制にも力を入れ始めました。弊社では入社9か月目の若手を部長に任命するなど、抜擢人事のようなことも積極的に行っています。
ーー最後に今後の展望を教えてください。
森龍一:
私がここまでやってこられたのも、活躍できる市場があったからこそ。今まで私は自分の1つ上のポジションを追いかけてきましたが、次に私が追いかけるべき対象は市場だと思っています。そのため今後は、私の現在のテーマ「破壊と創造」を掲げながら、市場をつくる側に回ることを目指していきたいと思います。
また、弊社は人材派遣の事業をメインに行っていますが、本当の意味でお客様のためになることは派遣会社との契約だけではなく、お客様が正社員など直接雇用も併せて進めることだと考えています。お客様の直接雇用の比率を高める支援をするためにも、弊社としては採用コンサルティング事業に力を入れていく予定です。
編集後記
「弊社には挑戦を称賛する文化がある」と語った森社長。20代のキャリア形成で最も重要なポイントは失敗の数であり、同社では失敗経験を通して30代での市場価値にインパクトを与えるような体験ができるとのこと。
多くの業界で人材不足が課題となっている昨今。数多くの挑戦を通してグループを大きくしてきたEnrich MR Holdingsが、この社会課題を解決してくれることに期待したい。
森龍一/1985年、長崎県生まれ。高校時代からバイクに熱中しており自動車整備の専門学校に進学。卒業後は、オートバイのカスタム業務に就く。その後、人材派遣会社で派遣スタッフと本社営業職を経験。2013年に27歳にして独立起業し、4年間で年商20億円の企業に成長させた後、事業を売却。2017年、株式会社NEXTスタッフサービスを設立し、代表取締役に就任。株式会社ファミリアモサ設立。エスエスパートナー株式会社設立。2022年に株式会社Enrich MR Holdingsを設立し、代表取締役に就任。