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株式会社菊屋は、陶磁器やガラス器、漆器などの和食器やキッチン雑貨などを扱う小売業を営む会社だ。東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県に50店舗展開しており、商品の多くは各店舗の店長が独自に仕入れを行っているという。同社の主力商品である和食器の魅力について、代表取締役社長の宮﨑浩彰氏に話をうかがった。
アメリカでMBA取得後に会社の再建に臨む
ーー社長就任までのご経歴を教えてください。
宮﨑浩彰:
大学で法律を専攻していたのですが「性に合わない」と感じて、経営者になるための勉強をしたいと考えるようになりました。経営について学ぶならアメリカだろうと、卒業後に渡米し、アメリカのサザン・ニュー・ハンプシャー大学でMBAを取得しました。
日本でいう大学院に在籍中、知人のすすめで将来MBAを取得する見込みのある人を対象にした就職説明会に参加しました。そこでとある小売業の企業に採用されて、「卒業後に連絡してほしい」と言われたのです。
私が卒業する頃には、その企業が日本に進出して1年ほどが経過していました。約束どおり卒業後に連絡したところ、日本人で英語が話せる私は重宝され、直ぐにその企業の日本法人で働くことになりました。入社から1年が過ぎた頃、株式会社菊屋を経営していた両親に「入社してほしい」と頼まれたため、1996年に入社した次第です。
ーー経営について学んだのは、会社を継ぎたいという思いからだったのでしょうか。
宮﨑浩彰:
正直、両親の会社を継ぎたいという気持ちはあまり無く、自分で起業したいという気持ちが強かったです。ただ、両親から頼まれたときは、ちょうどバブルの影響で会社が財務的にかなり厳しい状態だったのです。半年近く考えた上、「やはり自身を育ててくれた両親に恩返しする為、私が会社の建て直しをしなければいけない」と考えて、入社を決心しました。
ーー入社後はどのような取り組みをしたのですか。
宮﨑浩彰:
最初の1年は、生産性を高めるために、システム化できそうなものはシステムに置き換える取り組みを行いました。あとはお客様に対しての販促活動や、一番の重要課題であった財務改革を徹底的に行いましたね。
30歳の頃にはすでに取締役になり、財務改革・人事改革・出店戦略等を中心に業務を遂行してきました。2008年に38歳で代表取締役に就任しましたが、「事業が軌道に乗った」と思えるようになったのは、つい最近の2〜3年前の話です。
和食器のよさを伝え生活に楽しさと豊かさを提供する
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ーー貴社の事業の強みや特徴はどのようなところですか。
宮﨑浩彰:
弊社が扱っている商品は古来から伝わる日本製の食器、いわゆる「和食器」です。日本の伝統文化を扱っているというところが、弊社の最大の特徴といえます。古きよき伝統品を求めるお客様に、造り手が和食器に込めた伝統文化や技術を伝えるメッセンジャーの役割を担っていることが、弊社の事業の特徴です。
弊社は、「日々の生活に楽しさと豊かさを」をキャッチフレーズにしています。食器は、使わない日はないというくらい、日々の生活に欠かせない道具です。いい食器に囲まれて日々を過ごすことで、心が豊かになります。
たとえば同じスーパーで買ってきたお惣菜であっても、プラスチックの容器に入ったまま食べるよりも、良質な食器に盛り付けたほうが美味しく食べれます。単に食器を販売するのではなく、そういった食器を通じて、日々の生活を豊かにすること、言い換えれば心を豊かにすることをお客様に伝えているところが弊社のこだわりといえるでしょう。
ーー和食器ならではのよさはどのようなところにあるとお考えですか。
宮﨑浩彰:
和食器が優れていると思うのは、細かいところにまで配慮がなされているところです。安価な食器の場合は、白磁という白素地の陶磁器にフィルムを貼って、熱で蒸着させて模様をプリントしていることが多いです。
一方、日本の伝統的な技術でつくられた和食器は模様を手描きで描いていたり、模様を描くときの塗料の安全性にも気を配ったりしています。塗料が溶けて口に入ったとしても、それが体に悪影響を及ぼさないようにきちんと考えて作られているのです。
和食器は古くから存在しており、縄文時代には「浅鉢」という食器があったといわれています。戦国時代においても有名な武将が焼き物や陶器を愛用しているなど、非常に歴史があるものです。古来からの技術が息づいている和食器の素晴らしさを、後世に伝えていきたいですね。
ニッチでブランド価値の高い企業を目指す
ーー最後に貴社の今後の展望について教えてください。
宮﨑浩彰:
食器を大量生産して大量に売るのではなく、ニッチでかつブランド価値の高い企業になりたいと考えています。たとえばルイ・ヴィトンのように、持つだけでステータスになるような商品を販売していきたいです。そのために、商品の良さをお客様に伝えられるように、販売スタッフの知識やスキルも強化していかなければなりません。今後はこういったことに力を入れ、和食器のファンを増やしていきたいです。
編集後記
和食器の一つである有田焼の絵付けの技術は、ロイヤルコペンハーゲンやマイセンなどの洋食器ブランドの誕生にも影響を与えていると宮﨑社長は語る。それだけ素晴らしい技術が和食器に込められているということなのだろう。これまで知らなかった和食器の魅力を再認識したインタビューだった。
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宮﨑浩彰/1991年日本大学法学部卒、1994年 Southern New Hampshire University にてMBA取得。外資系企業での勤務を経て、1996年株式会社菊屋に入社。総務部経理課主任、財務課及びシステム課長、経営企画室長、常務取締役を経て、2008年代表取締役社長に就任。