※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

鏡にスマートフォンのような機能を持たせた「スマートミラー」というデバイスを知っているだろうか。ミラーフィット株式会社の代表取締役である黄皓氏は、このデバイスの可能性に目を付け、自宅にいながら1on1フィットネスが受けられる「MIRROR FIT.(ミラーフィット)」を運営している。

この事業にはオンラインの利便性と人のぬくもりが融合しており、単なるフィットネスビジネス以上の価値があると語る黄社長に、スマートミラーに秘められた社会を変えていく可能性について語っていただいた。

自らの可能性を追い求めてボディメイク事業で起業

ーー黄社長の経歴をお聞かせください。

黄皓:
大学卒業後の最初のキャリアは、貿易に関するノウハウを学ぶために入社した三菱商事から始まります。当時、私の父が中国の物流会社「Shanghai Transport China Logistics International Co., Ltd」の社長だったので、まず父の会社に近い領域を学ぶことにしました。

私が起業を意識するようになったのは、2年間のメキシコ駐在がきっかけです。成長の刺激に満ちていると想像していた海外での仕事が意外と日本と変わらなかったことに落胆し、起業を通じて自分を成長させたいと考えるようになったのです。

こうして2016年に三菱商事を退社し、同年にShanghai Transport China Logistics Internationalへの入社を経て、ボディメイク事業を行うRILISIST株式会社を設立。さらに2020年にはオンラインフィットネス事業を行うミラーフィット株式会社を設立するに至りました。

ーーボディメイク事業で起業をしようと思ったきっかけは何ですか?

黄皓:
自分がボディメイクや健康に興味を持っていたからです。当時は父親の跡を継ぐ話も出ていましたが、父の会社には私が求めるスピード感が欠けており、それならばと自分で起業する道を選びました。

それまでと完全に異なる業界へのチャレンジでしたが、自分のサービスがお客様の身体や人生を良い方向へと変化させる「手触り感」が本当に楽しく、すぐにボディメイク業界で生きる決意が固まりました。

「自分自身」を認知してもらうことの難しさ

ーー黄社長がビジネスにおいて大事にしていることを教えてください。

黄皓:
自分を世界に認知してもらうために発信を絶やさないことです。私たちビジネスマンの大半は「会社の看板」があって初めて知名度を獲得できます。純粋な自分の価値だけを考えたら恐らくほとんどの人が無名でしょう。

私はこの事実に気付いてから、自分という存在を世界へ広めるためにSNSでボディメイクやトレーニングに関係するコンテンツの投稿を始めました。継続し続けたおかげで少しずつ「黄皓=トレーニング」の構図ができ上がっていき、やがてアメリカ発の人気番組「バチェラー・ジャパン」のオファーがくるほどの知名度を獲得するに至りました。

大切なのは、人と違う自分だけの意見を恐れずに発信することです。否定を恐れず発信を続けてこそ、そこに自らのオリジナリティが築けます。

スマートミラーを活用して新時代のフィットネススタイルを提供

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

黄皓:
スマートミラーを利用したオンラインフィットネス事業を行っています。スマートミラーとは、全身鏡にスマートフォン機能を組み合わせたデバイスのことです。スマートミラーにはカメラが内蔵されており、トレーナーとリアルタイムで会話しながらパーソナルトレーニングが受けられます。

スマートミラーさえあれば、どこでも1on1レッスンを始められます。トレーニングカテゴリーは筋力トレーニングやヨガ、ダンスなど15種類以上そろっており、ビデオオンデマンドクラスも500本以上を用意。自宅で本格的なフィットネスを可能にしています。

ーー貴社の事業における独自の強みは何ですか?

黄皓:
弊社の事業の核であるスマートミラーの存在です。全身を映した双方向コミュニケーションがとれるので、オンラインでもクオリティの高いメニューの提供が可能です。

スマートミラーは場所の制約を受けないので、フィットネス施設が少ない地方部と相性が良いという強みもあります。この特徴はフィットネスの地域格差解消に役立ちますし、ミラーフィットが十分に普及すれば地方における「健康インフラ」と呼べる存在になると思っています。

また、スマートフォンとの連動により利用者のヘルスケアデータを集積すれば、ビッグデータに基づいた運動習慣やモチベーションアップなどの提案も可能です。スマートミラーはただの遠隔デバイスではなく、世界中へ健康を届けられる可能性がある夢の詰まった存在なのです。

スマートミラーに秘められた可能性を日本から世界へ

ーー今後、会社を成長させるために注力していきたいことを教えてください。

黄皓:
スマートミラーをより手軽で身近な存在にしたいですね。普及に成功すれば美容やファッションなどの外見に関連する業界で事業創出に役立つ存在になるはずです。しかし、日本にはまだ数えるほどしか関連の会社がないため、弊社がスマートミラーのパイオニアになれればと思っています。

そのほかにも、スマートミラーを設置したフィットネス施設を提案し、フランチャイズ展開で広めていくアイデアがあります。国内の地方はもちろん、気候が厳しくフィットネス施設に通いにくい国にもマッチするでしょう。大切なことは誰もが気軽に立ち寄れる身近な場所を広めることです。

なお、海外は日本よりも市場規模が大きく、成長のエンジンになり得る可能性があります。弊社のアプリやコンテンツは世界に誇れるレベルにあると自負しているので、積極的に打って出たいところです。

いつまでも夢を楽しむように全力で事業に取り組む

ーー黄社長がこれから叶えたい夢とは何でしょうか?

黄皓:
私は個人として一定の成功を収めたので、今度は組織で味わえる喜びを経験してみたいですね。弊社を社会に大きなインパクトを与えられる存在へと成長させて、その可能性がどこまで広がるか試してみたいのです。

現在、弊社はメンバーを増やす段階に突入しており、多くの頼れる仲間を必要としています。特に視座が高い方は既存の価値観にとらわれない発想ができるので、積極的に採用したいところです。

私は、いつまでも自由でワクワクする挑戦を続けていきたいと考えています。この考えに共感いただける方は、私と一緒に可能性を追求する人生を送ってみませんか?

編集後記

起業当時の勢いそのままに未来を語る黄社長は、まるで人々の生活を豊かにするアイデアの源泉のようだ。人間が根源的な喜びを覚える「可能性」とは黄社長にとって宝箱のような存在なのだろうか。次はどんなアイデアが飛び出すのか、黄社長は一挙手一投足まで注目したい魅力的な人物だ。

黄皓/1986年、中国湖南省生まれ。中国人の両親とともに10代で来日。早稲田大学卒業後、大手商社を経て、2020年にミラーフィット株式会社を起業。サブスクリプション型パーソナルジム「KARADA BESTA」やスマートミラーデバイスを活用した「MIRROR FIT.」などを開発・提供し、現在3社の代表を務める。