
コロナ禍以降、在宅時間が増加したことで自宅に観葉植物を置く人が増え、需要が伸びているガーデニング市場。そうした中、1,200坪の店内に所狭しと植物を並べ、まるでジャングルのような売り場づくりを行っているのが、株式会社オザキフラワーパークだ。
体験型の売り場を展開し業績を回復させたエピソードや、海外のガーデンセンターを意識した店づくりなどについて、代表取締役の尾崎明弘氏にうかがった。
花文化が根付いているオランダで修業した日々
ーー尾崎社長のキャリアについてお聞かせいただけますか。
尾崎明弘:
まず、植物を扱う家業を継ぐため、ガーデニング文化が盛んなオランダに行き、現地の文化を学ぶところから始まります。そこで新規事業の輸出入業務を行いながら、種子や園芸関係の商品を取り扱う日本企業のオランダ支店で、2年間研修させてもらいました。
その後独立し、現地で築いた人脈を活かしてオザキフラワーパークのオランダ支店を立ち上げます。オランダは100メートルおきぐらいに花屋がある激戦区なので、とにかく集客に苦労しましたね。最初は日本の独自性を出そうと盆栽を置いてみたりしましたが、現地の方には受け入れられませんでした。
そこで、現地の方が日常的に使う切り花や鉢物を増やした結果、少しずつ売上が伸びていきましたね。こうして現地で経験を積んだ後、帰国して家業に入りました。
体験型店舗をつくるきっかけとなったエピソード
ーー家業に戻られてから苦労したエピソードを教えてください。
尾崎明弘:
1990年に大阪で花の万博・EXPO'90が開催され、日本でガーデニングブームが起きました。しかし、私が帰国した1998年にはすでにブームが終焉し、弊社の売上は下降の一途をたどります。
何とか経営を立て直そうと改善策を講じたものの、売上は一向に回復しませんでした。そんな中、日本農業新聞の園芸業界予測で、「今後25年間、園芸業界は低迷し続ける」と書かれた記事を目にします。
このままでは業界で生き残れないと思い、さまざまなチャレンジをしましたが、どれも効果が出ませんでした。そこでやむなく売上が減少していた植物コーナーを縮小し、安定した需要が見込める家庭用品売り場を広げることにしたのです。
それでも私は観葉植物が好きなので、市場に行くとつい植物を買ってしまい、毎回新しいものを店に持ち帰っていました。ただし、以前よりスペースが狭いため、無理やり植物を詰め込むように展示していたのです。
すると、お客様が「ジャングルみたいで面白い」と、店に足を運んでくれるようになりました。この反応を間近で見て、「直感的にワクワクするような売り場づくりをすれば、お客様が興味を持ってくれるかもしれない」とひらめいたのです。
そこで、商品の間隔を空けて見やすくするという小売業の固定観念を覆し、植物をギュウギュウに詰め込み売り場をジャングル化してみました。そうすると、次第に客数が増えていき、売上も回復していきます。そこから店全体を体験型の施設に変えるため、2018年にリブランディングを行いました。
店の外観を変え、飲食を楽しめるカフェも導入し、店のロゴや制服もつくり直しました。その結果、植物好きの方々に「聖地」と呼ばれ、一般のお客様も増えたことで、売上は右肩上がりに成長していきましたね。
海外のガーデンセンターをモデルにした店づくり

ーー改めて貴社の事業内容について教えてください。
尾崎明弘:
弊社は首都圏最大級となるガーデンセンターの運営を行っています。切り花や花苗、野菜苗、植木など植物全般を扱っており、初心者からマニアの方まで楽しんでいただけます。長時間滞在していただけるよう、カフェも併設しています。
店のリブランディングにあたりモデルにしたのが、海外のガーデンセンターです。花を見て回り、疲れたらカフェに寄っていったん休憩する。こうした植物に癒やされるくつろぎの空間にしたいと思い、ガーデンスペースを設け、カフェも設置しました。
また、庭のデザイン・施工を行う「Green Breeze(グリーンブリーズ)」と、生花専門店「Rafflesia(ラフレシア)」の運営も行っています。さらに昨年からは、ポップアップショップも開催しています。これからは各地域に出店し、多くの方へ「花に触れる機会」を提供していきたいですね。
ーー事業へのこだわりや、意識していることはありますか?
尾崎明弘:
事業を運営する上でこだわっているポイントは、主に3つです。
1つ目は、単に買い物をする場所ではなく、お客様に「あの店に行ってみたい」と思わせることです。そのために密集した植物の中から自分好みのものを見つける、まるで宝さがしのような売り場づくりを意識しています。
2つ目が、豊富な品ぞろえです。あらゆるジャンルの植物と、生育に必要な資材や肥料、用土も販売しているため、大抵のものはここでそろえられます。
3つ目が、お客様とのコミュニケーションです。ワークショップやイベントを定期的に開催し、植物を通じてお客様と会話を楽しむ場を提供しています。
さらなる企業の成長に向けた取り組みについて
ーーDX推進の取り組みについてお聞かせください。
尾崎明弘:
弊社では会員システムを導入しており、現在約3万人の会員様がいらっしゃいます。入会には年会費500円と、オザキフラワーカードの作成費200円が必要です。お会計時に会員カードを提示していただくと5%オフになり、年2回の優待セールでは植物が20%オフ、園芸関連商品は10%オフになります。
また、現在は自社のアプリ開発にも着手しています。今後も積極的にITを活用し、お客様の満足度の向上に努めていきたいですね。さらに、社内でも業務のDX推進を進めています。たとえば従業員同士でスムーズにコミュニケーションが取れるようチャットツールや業務管理ツールを導入するなど、業務の効率化に取り組んでいます。
ーー組織づくりと貴社が求める人材像について教えていただけますか。
尾崎明弘:
適材適所に人材を配置し、組織力を強化したいと考えています。そこで内部だけでなく外部からも人材を集めるため、採用を強化する予定です。また、社内制度を見直し、採用後にスキルアップできる体制を構築しているところです。一人ひとりが心地よく働け、着実にキャリアアップできる環境を整えていきます。
さらに、植物に関して初心者からマニアの方まで、全方位の対応ができる人材を育てていこうと思っています。
求める人材像としては、お客様をワクワクさせるアイデアを生み出せる発想力のある人を求めています。たとえばデザインが得意な方や、売場づくりに興味がある方がいいですね。また、弊社の魅力を発信してくれる広報担当者も募集しています。
ーー最後に就職・転職を考えている方々へメッセージをお願いします。
尾崎明弘:
弊社では植物が好きな方、お客様にワクワクする体験を提供したい方、新しいことにチャレンジしたい方を募集しています。一人ひとりが自分の強みを活かし、成長できる職場です。花や緑のある暮らしを日本に定着させるため、協力していただける方をお待ちしています。
編集後記
「地域の方々に『オザキフラワーパークのガーデンセンターができてから、花や緑が増えて良い街になったね』と言われる存在になりたい」と話していた尾崎社長。植物に触れる機会が増えることで自然とコミュニケーションが生まれれば、地域の方々が心地良く暮らせる街になることだろう。株式会社オザキフラワーパークは、花や緑が身近にある暮らしを定着させるため、これからも植物の魅力を伝え続けていく。

尾崎明弘/1969年東京都生まれ。大学卒業後、大手ホームセンター勤務を経て、1992年オランダへと渡る。オザキフラワーパークの輸出入業務を行いながら、株式会社サカタのタネ・オランダ支社において2年間の研修生として人脈と知見を広げる。その後、アムステルダムにてフラワーショップを開業し、4年間運営に携わる。2007年に株式会社オザキフラワーパークの代表取締役に就任し、園芸専門店としてのブランディング強化に努める。