1976年の創業以来、さまざまな業界の販促活動を支援してきた株式会社ロマン。販売促進用ノベルティ商品の輸入・販売だけでなく、商品企画や流通も自社で行う「ワンストップの対応力」が強みだ。
代表取締役の田崎豪氏は、物流、営業、貿易、商品企画などさまざまな経験を経て2017年に代表取締役に就任し、同社のさらなる発展に向けて尽力している。そんな田崎社長に、そのポリシーや、同社の取り組み、今後の展望を聞いた。
コロナ禍の困難を、時流に合わせた決断と築き上げた信頼関係で乗り切る
ーー田崎社長のポリシーや、仕事をする上で心がけていることを教えてください。
田崎豪:
私が株式会社ロマンの社長として心がけているのは、決断力です。スピーディーなレスポンスはもちろん重要ですが、それだけではなく、筋道やさまざまな物事を考慮した意思決定を大事にしています。
たとえば、コロナ禍ではステイホームで気軽に外出できない状況となり、企業がイベントやキャンペーンを控えるようになりました。すると弊社で扱うノベルティの需要も低下し、売上は日に日に落ちていきました。また、仕入先である中国の工場がロックダウンの影響で生産が止まり、商品が輸入できなくなってしまったことも重大な問題でした。
そこで弊社は、従来取り扱っていたノベルティに加えて、コロナ対策用にマスクやハンドジェルなどの衛生用品の販売に舵を切りました。実は、これはある1人の社員の何気ない一言から始まりました。「どこの薬局でもマスクが品切れしてます。ロマンでも仕入れ出来ませんか?」
これまで新商品を仕入れる為には企画会議で検討して、市場調査でデータを取り、稟議書を回して、営業に周知して、お客様に案内する流れが通常でしたが、この時ばかりは「マスクが無くて困っている方にいち早く届けたい」という事もあり【私が即断即決】をし、数週間後には日本に向けてマスクを載せたコンテナが出発しました。
この決断により売上を何とか確保することができ、会社や社員の生活を何とか守ることができました。当時は「これが本当に良い選択なのか」と悩みながら必死に走っていましたが、今となってはベストな決断だったと感じています。
ーーマスクやハンドジェルは全国的に品薄でしたが、どのように仕入れたのですか?
田崎豪:
中国の商社を経由して直接輸入で調達しました。取引歴の長い信頼できるパートナー商社を厳選して大量に買い付けました。
新型コロナウイルスの感染が国境を超えて蔓延する中、マスクなどの需要は世界的にも高まっていましたから、関係性がなかったらおそらく販売してもらえなかったでしょう。今まで築いてきた信頼関係があったからこそ、コロナ禍の困難を乗り切れたのだと思います。
笑顔とあいさつを心がけ、人の気持ちを大事に
ーー田崎社長が大事にしている考え方や価値観は何ですか?
田崎豪:
仕事でもプライベートでも、人として大事にしているのは笑顔とあいさつです。お客様はもちろん、仕入先や社員同士、また家族に対しても、笑顔で話しかけたり、あいさつをしたりして嫌がられることはないでしょう。
私自身、昔から笑顔やあいさつを徹底できていたわけではありませんでした。しかし、さまざまな人とコミュニケーションをとる中で、「もしかしたら自分も人を嫌な気持ちにさせてしまっているかもしれない」と思い至るようになり、笑顔とあいさつを心がけるようになりました。
アポ無しの飛び入り営業が来ても、時間の許す限り話を聞くなど、常に相手の気持ちを意識して寄り添うようにしています。
販促活動の困りごとに幅広くワンストップで対応
ーー株式会社ロマンの強みを教えてください。
田崎豪:
ワンストップでさまざまな依頼に対応できることです。商品を中国から輸入するだけでなく、社内にデザイナーが在籍しているため、企画も可能です。岐阜、東京、福岡に営業拠点があるため幅広い地域に対応でき、物流センターを完備しているので流通も自社で行えます。
「販促で悩んだらロマンに頼めば解決できる」というポジションを目指して、地域のお客様のお困りごとを解決したいと考えています。もちろん、販促ノベルティグッズに限らず、最近では贈答用の胡蝶蘭や法人様のスタッフTシャツ、お中元お歳暮のご用命も頂いております。
組織再編や経営計画発表会の実施で、社員の責任感と結束力を強化
ーー田崎社長がこれまでに行ってきた改革をお聞かせください。
田崎豪:
私が社長に就任して最初に行ったのは組織再編です。それまでは明確に決まった組織図がなく、社員それぞれの業務内容や責任の範囲も曖昧でした。組織の再編を行ったことで部署ごと、個人ごとの目標が明確になり、業務に対する責任感が強まったと感じています。
また、1年に1回経営計画書を作成し、経営計画発表会を開催しています。経営計画発表会では全社員が集まり、部署ごと、拠点ごとの業務内容や実績、目標などを発表します。
本社は岐阜にあり、東京と福岡の拠点に在籍する社員と直接顔を合わせる機会はなかなかありません。また、コロナ禍を経て岐阜本社内でも社員全員が集まることは滅多になくなってしまいました。
経営計画発表会を行うようになってから、会社全体として進むベクトルを全社員に示す機会ができ、同じ目標に向かって進む仲間として社員同士も協力しやすくなったと感じています。
企画と営業の協働により生まれる提案力
ーー現在貴社で力を入れている取り組みは何でしょうか?
田崎豪:
やはり商品企画ですね。例えば、毎月1回ノベルティの配布されるお客様は、最低でも年間12商品のノベルティが必要になります。お客様を飽きさせない商品づくりは究極の課題です。弊社は化粧品会社向けのノベルティ販売から事業をスタートしたため、女性向けの商品を多く取り扱っています。現在商品企画を担当しているスタッフは女性が中心で、今後も女性目線の商品開発を大切にしていきたいと考えています。
良い商品を企画するだけでなく、営業担当の的確な提案も重要な要素です。ただし、弊社の営業担当者は全員男性で、取引先の担当者も多くの場合は男性です。女性目線を取り入れた商品の特徴を男性の営業が的確に捉えられなくては、商品の魅力が伝わりません。
そこで弊社では、商品企画担当者と営業担当者が年に数回集まり、合同で商品づくりを行っています。ここではそれぞれの担当者が率直に意見を交換し合い、協力して商品を企画していきます。労力はかかりますが、その分相乗効果が生まれ、より良い商品づくりと営業担当者の提案しやすさにつながっています。
ITツールの導入で業界のモデルを目指し、知名度を向上
ーー貴社のこれからの展望をお聞かせください。
田崎豪:
現在は為替変動や人手不足など無視できない課題があり、当面はこの状況が続くでしょう。しかし、「円安だから」「人がいないから」を言い訳にせず、環境に適応しながら、一歩ずつ着実に前進していきたいと考えています。
たとえば、DXやRPAなどITツールをもっと活用できないか検討しています。弊社は岐阜の中でも中心地から少々外れた地域に本社があり、従業員数も多いわけではありません。だからこそ、弊社がITツールを活用する中小企業のモデルとなれるように、改革を進めていくつもりです。
ノベルティの販売という事業の特性上、急に認知度を上げることは難しいですが、地域行事や異業種交流、地元紙掲載など、私自らが広告塔となって動いております。業界全体の知名度アップやセールスプロモーションという手法の普及にも貢献していきたいと思います。
編集後記
仕事のスピード感や笑顔・あいさつが重要と話す田崎社長。立場や職種にかかわらず、仕事をする上で大事な心構えであると感じた。長年かけて築き上げた信頼とワンストップの対応力を武器に、さらなる成長を続ける株式会社ロマンの今後に注目だ。
田崎 豪/1976年、長崎県生まれ。地元の高校卒業後に株式会社ロマン入社。物流部門を皮切りに、営業部門、貿易部門、企画部門と社内の各部署を経験し、2015年に取締役統括本部長を経て、2017年に親族外承継で3代目の代表取締役に就任。