
電気を送る電線は、現代社会に不可欠なインフラの一つである。1982年の創業以来、耐熱電線や補償導線、FAケーブル、ロボットケーブルなど、電線の専門商社として実績を積み重ねてきた株式会社ユウデン。
「電気と心を繋げます 電気と人を繋げます」をスローガンに掲げ、メーカーと顧客を結ぶ架け橋として、豊富な商品知識と即納体制で顧客からの厚い信頼を獲得している。今回は営業から社長に抜擢された遠藤太嘉志氏に、これまでの歩みと今後の展望について話をうかがった。
挫折を乗り越え見出した新たな道筋
ーー入社されるまでのご経歴を教えてください。
遠藤太嘉志:
私は東京生まれですが、育ちは埼玉県です。5歳くらいまでは仙台と埼玉を行き来していましたが、その後、高校卒業まで埼玉県で過ごしています。高校卒業後に東北学院大学に進学すると決まったときは、仙台でお世話になった方々が「こちらに来るのか!」と非常に喜んでくれました。
大学時代は知り合いの果物屋さんでアルバイトをしながら経済学を学んでいましたが、一般教養から専門学部に進む際に挫折してしまい、結局、2年で大学を中退しました。その後は建築材料をつくる工場や運送会社で働き、24歳のときに、当時の専務に誘われて弊社に入社した次第です。
ーー入社後はどのようなお仕事をされましたか?
遠藤太嘉志:
入社する際に「運転手として働きたい」とお願いしていたのですが、実際に運転手として働いたのは3年だけで、その後は営業職になりました。技術系の営業職を30年くらいやりましたが、前社長から抜擢されて、2012年に社長に就任しました。
また、これはプライベートな活動ですが、地域活性化の助けになればという気持ちで、青少年のスポーツ活動のサポートをしたこともあります。この活動は24歳で入社したときから30年ほど続けていたのですが、腰を痛めたことをきっかけに、10年前に引退しました。現在は町内会長として地域に貢献するべく活動しています。
ーー社長として重視していることは何ですか?
遠藤太嘉志:
「できない」と「やらない」の違いを見極めるということを重視しています。よく「できない」という言葉を使う人がいますが、何事もチャレンジしなければできないのは当然です。「できない」というのは、誰かがチャレンジした結果を他の人が見て「これはできていないな」と判断すべきことです。
私は社長として社員にいろいろな仕事を与えてますが、何かをやる前から「できない」と口にする人に対しては、「できないのではなく、やらない人だ」と感じてしまいます。まずは、「やってみよう」という気持ちになってほしいですね。
専門知識と即納体制で築く顧客からの信頼

ーー貴社の事業内容について教えてください。
遠藤太嘉志:
弊社は弱電線・特殊電線の専門商社です。事業内容を一言で言うと、メーカーがつくったものをお客さまが使いやすい形状に加工して供給する仕事です。たとえばメーカーが500メートル、1000メートルの長さでつくった電線を、10メートル単位に切ってお客さまに販売するのが弊社の主な仕事です。同業の専門商社や、電材店と呼ばれる卸売商社に商品を卸しています。
電材店というのは、工事を施工する会社に電気設備資材の仕入れ販売を行う会社です。弊社の取引先の商社が卸売販売を行い、エンドユーザーに商品が届けられる仕組みになっています。メーカーから仕入れて他の問屋に商品を卸している弊社は、いわば大問屋のような立場ですね。
ーー貴社の事業の強みはどのようなところですか?
遠藤太嘉志:
お客さまから信頼されている点が、非常に大きな強みだと思います。弊社のお客さまは、長年取引がある企業が多いのですが、「ユウデンさんに聞けば何でもわかる」と言われるくらい信頼されています。
弊社はお客さまの信頼に応えるべく、さまざまなメーカーの商品を取りそろえ、多様なニーズに対応してきました。各メーカーの特徴をお客さまに伝えて、ご要望に沿った商品をお届けしています。バリエーション豊かな商品を在庫として持つことで、即納体制・最短納品体制を整えていることが弊社の特徴です。
次の時代を見据え、経営基盤を強化していく
ーー次世代に向けて、どのような取り組みをしていきたいですか?
遠藤太嘉志:
経営幹部の育成を考えなければいけないと思っています。私の後継者となる次期社長はすでに決まっていますが、その人を支える幹部を育成する必要があります。言うなれば、私の次の次に社長になれる人を見つけたいと考えているのです。
弊社はここ5年くらいの間に新卒採用を積極的に行ったので、若い社員が大勢います。離職率が低く、直近1〜2年の間の退職者は2〜3人という状況です。働きやすい環境は整っていると感じていますので、未来を担う人材が弊社で活躍してくれたら嬉しいですね。
ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
遠藤太嘉志:
既存のお客さまとの取引を、今よりさらに活発にしていきたいです。そのためには、深い商品知識を持つことが必要不可欠だと考えています。知識がなければ、お客さまに言われるがまま商品を納めるだけの取引になり、お客さまとの間に活発なコミュニケーションが生まれる余地はありません。
お客さまの情報を知り、ニーズに沿った商品をご提案するためにも、専門的な質問に答えられるだけの知識を社員一人ひとりが身につける必要があります。現在、弊社の営業は既存のお客さまのところを回ることが多いので、お客さまのニーズを深掘りして、より良い提案をしてもらいたいですね。
編集後記
遠藤社長自身が30年以上の営業経験を持ち、現場を知り尽くしているからこそ、社員に対する期待と育成への思いも具体的で説得力がある。離職率の低さは、そうした経営姿勢に対する社員の共感の表れだろう。電線という縁の下の力持ちを扱う専門商社の矜持と誠実さを、強く感じた。

遠藤太嘉志/1956年、東京都生まれ。1982年、株式会社ユウデン入社。2012年、同社の代表取締役社長に就任。