
精肉店として創業し、時代とともに事業を拡大してきた老舗企業、株式会社竹園。ホテル業やレストラン経営にも進出し、地域に根ざした企業として成長を続けている。この成長を支えているのが「品質第一」の精神と、未来を見据えた経営方針だ。
長年の経験と確固たる信念で会社を牽引する代表取締役社長の福本吉宗氏に企業の歩みや経営者としての考え、今後の展望について詳しく話をうかがった。
家業を継ぐまでの苦難と決断に迫る!竹園の継承ストーリー
ーー家業を継いだ経緯を教えてください。
福本吉宗:
私は株式会社竹園の三代目として家業を継ぎましたが、もともとは継ぐ意思を持っておらず、また、従兄弟たちも多かった為、私が家業を継ぐとも思わなかったことから、大学を卒業後、就職したのは信用金庫でした。父が経理部門を担当していたこともあり、その影響で財務や決算に関する知識を深めることができ、金融の世界でキャリアを積んでいこうと志していました。その時の経験は現在でも非常に役立っています。
家業に戻る決断をしたのは、責任感と、父の背中を見て育ったことが大きな理由です。1994年に竹園に入社し、現場で経験を積むうちに、経営の重責を感じるようになり、2006年に伯父や父、叔母などの指名を受け、代表取締役に就任しました。
ーー経営者として、最も苦しかった時期にはどのようにして乗り越えたのでしょうか?
福本吉宗:
代表取締役に就任した直後、資金繰りが非常に厳しい状況に陥り、経営者としての判断力が試される大きな試練に直面しました。まず取り組んだのは、事業計画の見直しと返済計画の策定で、これを基に銀行との交渉を重ねることで、資金繰りを安定させることに成功しました。
この時期に学んだのは、経営における計画性と柔軟な対応の重要性で、経営では予測できない困難に直面することが多々ありますが、その都度冷静に対応することで乗り越えられることを実感しました。
また、リーマン・ショックやコロナ禍といった経済危機に直面した際、宴会やレストランの需要が落ち込んだ一方で、家庭用の精肉需要が増加し、それが私たちを支えてくれました。柔軟な対応と事業の多角化が、困難を乗り越える鍵になったと感じています。
竹園の強みと成功要因を探る!品質と柔軟性の結晶

ーー事業の魅力や強みについて教えてください。
福本吉宗:
当社の事業は、精肉業が中心で、特に神戸ビーフの取り扱いに関しては、長年仕入れから加工、販売までを一貫して自社で行い、厳しい品質管理を徹底しています。これにより多くのお客様からの信頼を得ることができています。
また、68年間ホテル業やレストラン事業も行っており、たとえば、プロ野球チームの宿泊先としての利用が続いていることは、私たちにとって非常に大きな誇りです。これらの事業が互いに補完し合い、安定した経営基盤を築いていることが強みとなっています。
ーー竹園がこれまでに成功を収めてきた背景には、どのような要因があったのでしょうか?
福本吉宗:
株式会社竹園の成功要因は、何よりも「品質第一」を徹底して守り続けてきたことに尽きます。神戸ビーフの品質に対するこだわりや、それを支え続けてくれたスタッフの想いが、私たちのブランドを支える根幹であり、お客様からの信頼を築く要因となっています。
このように、こだわり続けることと市場の変化に柔軟に対応することが、他社との差別化につながっていると言えるでしょう。特にコロナ禍では、多くの企業が苦境に立たされましたが、私たちは精肉事業とホテル事業の両方において迅速な対応を取ることで経営の安定を図りました。たとえば、精肉のオンライン販売を強化したり、テイクアウトメニューを拡充したりすることでの新たな需要のとり込みです。
多様な経験が生む成長の場!竹園で働く魅力と挑戦
ーー貴社で働く魅力について教えてください。
福本吉宗:
竹園で働く魅力は、異なる業種での経験を積める点にあり、精肉業とホテル業という異なる分野での経験を通じて、幅広いスキルが身につく環境を提供しています。
非日常的なホテルクオリティのお客様へのサービスと、日常的な販売業務の両方を経験することで、ビジネスの多様な側面を学ぶことができます。特にプロ野球チームといった顧客との関係を築く機会が多く、他の企業では得られない貴重な体験を提供しています。
また、社員教育にも力を入れており、定期的な研修やOJT、キャリアパスを通じて、社員一人ひとりが成長できる環境を整えています。そして、社員が自分の仕事に誇りを持ち、やりがいを感じられる職場を私たちは目指しています。社員一人ひとりが、自分の仕事に対して情熱を持ち続け、成長し続けることが、会社全体の成長にもつながると信じています。
ーー今後の未来について、どのような展望をお持ちですか?
福本吉宗:
今後も「品質第一」の理念を守り続けながら、新しい市場への挑戦を続けていきたいと考えています。既存の事業をさらに強化するだけでなく、オンライン販売の拡充や新たなサービスの提供などを通じて、より多くのお客様に竹園の魅力を届けてまいります。
また、次世代のリーダーを育成し、会社全体の成長を目指していきたいと考えています。経営者としての私の役割は、現在のビジネスを成功させることに留まらず、将来の発展を見据えた戦略を策定し、実行していくことです。
竹園が新しい時代を切り開いていくためには、社員全員が同じ目標に向かって力を合わせることが重要です。これからも「竹園力」を追求し続け、地域とともに成長していく企業であり続けます。
編集後記
お客様の気持ちに寄り添い、企業としての成長を続ける福本社長の姿勢は、竹園の未来を明るく照らしている。企業の基盤である神戸ビーフの品質へのこだわりと、ホテル業を通じて地域に根差したサービスを提供する強い意志が感じられる。
創業から78年経った今も、福本社長のリーダーシップのもと、企業は次のステージへと進んでいる。竹園のこれからの成長が、地域社会や従業員にとっても新たな可能性をもたらすことを期待せずにはいられない。

福本吉宗/1969年兵庫県生まれ。桃山学院大学卒業後、相互信用金庫に入社し、2年の修業期間を経て1994年に株式会社竹園へ入社。2006年に同社の代表取締役社長に就任。神戸ビーフの普及活動にも力を入れている。