※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

2015年に日本に上陸し、タピオカブームを追い風に成長してきたグローバルティーカフェブランド、「Gong cha(ゴンチャ)」。同店を運営する株式会社ゴンチャ ジャパンの代表取締役社長、角田淳氏は「Brewing Happiness 幸せを淹れよう」をミッションに掲げ、新しいティーカルチャーを確立した。

タピオカブームの終焉、新型コロナ禍などの逆風を乗り越え、快進撃を続けるゴンチャの未来や価値観、そして経営戦略について角田社長に聞いた。

自動車メーカー勤務からエンタメ、そして「楽しい」を求めて飲食の世界へ

ーーご経歴や仕事に対する思いをお聞かせください。

角田淳:
アメリカの大学を卒業後、最初に就職した日本の自動車メーカーで勤務する傍ら、フリーでイベント企画や運営をしていくうちに、仕事の面白さに惹かれて、独立しました。それ以降、10年ほどスポーツや音楽イベントの企画運営、PRの業務に携わっていました。

独立後は、一貫して「楽しい」を軸とした仕事がしたいという思いを大切にしていました。私が外食産業にフィールドを移したのも、「外食すること=楽しい」という価値観が自分の考えと共通していたからです。

ーーそのような考えで日本サブウェイ合同会社に入社したそうですが、同社で特に注力したことは何でしたか。

角田淳:
日本サブウェイでは、マーケティング活動やフランチャイズ店舗のサポート、グローバル対応などを担当を経て2016年に代表となりました。当時、特に私が重点を置いたのが、チームづくりです。働く人間が楽しくなかったら、お客さまを楽しませることができないという信念のもと、チームが機能的に回るためには何をするべきかを追求し、働く環境づくりに力を入れていました。

ーー株式会社ゴンチャ ジャパンとの出会いはどのような経緯でしたか?

角田淳:
参画のきっかけはお声がけをいただいたことですが、タピオカブームが来たときに「ゴンチャって面白そうなブランドだな」と感じ、個人的に注目していましたね。当時、店舗に足を運んで、男女比や注文にかかる時間などをリサーチしていたところ、ポイントカードの有無によって注文対応にかかる時間が大きく異なることに気づきました。これは「仕組みに機会点がありそうだな」など、さまざまな分析を試みました。

タピオカブーム後の逆境からゴンチャの未来をつくるために

ーー入社当時はまさに貴社にとって厳しい時代だったのではないでしょうか?

角田淳:
私が入社したのは、タピオカブームが過ぎ去ったタイミングです。逆境を乗り越え、ブランドを成長させるというのが私にとって一番重要なミッションでしたが、私の中では「大丈夫だ」という確信がありました。

なぜなら、日本にはもともとお茶を楽しむ文化があるということ、また、弊社はもともとタピオカ屋として始まった会社ではありません。ストレートなお茶を好む傾向にある日本人に、創業時から一貫してお茶をアレンジする新たな楽しみ方を提案してきました。

お茶はフルーツと合わせても、ミルクと合わせても、もちろんストレートでも楽しめます。ですから、その日の気分やトレンド、季節に合わせて、自由自在に楽しんでいただけるように、さまざまなお茶を提供できるのが弊社の魅力なのです。

ーーお茶の味わい方だけでなく、店舗づくりにもこだわりがあるとうかがっています。

角田淳:
弊社で徹底していることは、「Brewing Happiness 幸せを淹れよう」という理念です。「お茶する」という言葉には、さまざまな意味が込められています。ただ単にお茶を飲むだけでなく、誰かと会話やコミュニケーションを楽しむことも含まれています。そんな雰囲気を大切にしたいという思いがあり、ライブ感があり、自由に楽しめる店舗空間づくりを意識しているのです。

ハピネス、そして「お茶する」楽しさがゴンチャを支える体験価値に

ーークルーの方々のハピネスや楽しさも重視していますか。

角田淳:
もちろんです。ありがたいことに弊社は若い年齢層からのアルバイト応募が非常に多く集まっています。せっかく社会人スタートの場所として弊社を選んでいただいていますので、その経験や弊社で過ごす時間の価値も高めていきたいと思っています。

顧客に対しても同様で、支払った金額に対して、過ごした時間や体験が価値あるものかどうかは、無意識のうちに評価されていると思います。ですから、その時間に見合う体験価値を提供できているかは常に意識しています。

ーー貴社ではどのようなタイプの方が活躍しているのでしょうか。

角田淳:
弊社で活躍しているのは、枠にとらわれることなくチャレンジし続けられる人材です。仕事で「ノー(できません)」と伝えるのは簡単ですが、「どうやったらできるのか」を追求できる人はそれほど多くありません。

1日のうち8時間くらいを占める業務の中で、投資を意味する「働く時間」に対して、どれだけ自分にリターンがあるかを意識していないともったいないと思います。弊社としても、このような価値観を持った方を仲間として増やしたいですね。

ゴンチャでお茶を飲んだときに、何か一つでも良い体験をしたと感じてくだされば、それが弊社で働きたいと思うきっかけになるかもしれません。弊社で働く従業員は人を楽しませることが好きな人が多いので、できるだけお客さまとの触れ合いに時間や意識を注げるように、セルフオーダー端末やモバイルオーダーを導入して業務の効率化に取り組んでいます。

ーー5年後、10年後に描くゴンチャの未来はどうなっているでしょうか?

角田淳:
体験価値をお客さまにしっかりと届けられるブランドを確立したいと考えています。そして、ティーカフェ業界のナンバーワンであり続けたいと思っています。

ゴンチャが日本に初上陸したのは2015年で、2025年でようやく10年目を迎えます。私たちが価値提供できるのは、ワクワクしてハッピーな気分になれるような商品をお届けすること。お茶を楽しむのは15分や30分という短い時間かもしれませんが、限られた時間の中で少しでも多くのハッピーやワクワクを創出したいと考え、新商品の開発やさまざまなコラボレーションにも取り組んでいます。

こうした取り組みを支えてくれているのが、ゴンチャの一番のファンである店舗スタッフ(クルーのみなさん)です。クルーのみなさんは現場視点から新商品を考案するなど、お客さまの心を引き寄せる取り組みをしています。

また、様々なコラボなども今まで取り組んできましたが、機会があれば積極的に外部の方とのコラボレーションの活性化を図りたいですね。

ーー20代、30代の読者にメッセージをお願いします。

角田淳:
自転車に乗らなければ転ぶこともないし、リスクを犯さないという意味では安全かもしれませんが、自転車の本来の良さもわかりません。若い時期こそ積極的に挑戦して、失敗し、そこで学びを得てほしいですね!

編集後記

タピオカブームを乗り越えたゴンチャの成功の鍵は、単なる「流行」で終わらせない、お茶の本質的な体験価値の提供と、ハッピーの創出だった。「Brewing Happiness 幸せを淹れよう」を掲げ、店舗スタッフや顧客がともに楽しむ場を大切にするという一貫した姿勢が、ゴンチャの成長を支えている。角田社長の言葉からは、楽しさと挑戦への情熱が伝わり、同時に従業員や顧客への深い信頼と愛情も感じられた。

角田淳(Jun Tsunoda)/1971年生まれ。東京生まれ、ブラジル・神奈川育ち。アメリカの大学を卒業後、大手自動車メーカーに勤務。後に独立し、約10年に亘り、スポーツや音楽イベントの企画運営・マーケティングに携わる。2010年日本サブウェイ合同会社に入社。マーケティング・経営企画等を経て、2016年同社社長に就任。2021年10月、株式会社ゴンチャ ジャパン代表取締役社長に就任。セルフオーダーKIOSKやモバイルオーダー導入でデジタルシフトへの注力、売上に繋がる顧客&従業員ロイヤルティ(推奨度)に着目したプロジェクト『Happiness Project』の発足など、おしゃべり歓迎のティーカフェブランドとして年間来客数3,000万人超えの成長を導く。