※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

株式会社プログレが名古屋と関東を中心に展開する「鳥開総本家」などの鳥料理専門店では、名古屋コーチンを使ったこだわりの鳥料理を提供している。同社の親子丼や唐揚げは、全国丼グランプリや唐揚げグランプリで幾度となく賞を獲得してきた。

2000年に1店舗目を開店して以来、鶏一筋で満足度の高いサービスを追求してきた代表取締役、西村和則氏に、創業から今に至るまでの経験や社内風土についてうかがった。

困難な状況を乗り越えるために飲食店としての当たり前を貫く

ーー現在の事業に至るまでの経緯を教えてください。

西村和則:
昔から食べることが好きだったため、独立する前の20代の頃は飲食店を中心としたサービス業を数多く経験しました。好きが高じて焼鳥屋を始めた当時は、親子丼のメニューはなく居酒屋の業態でしたが、若者のお酒離れが進んだこともあり、約10年前から親子丼を提供するレストランに変えました。

ーー創業からこれまでどのような苦労がありましたか?

西村和則:
鳥インフルエンザやリーマン・ショック、東日本大震災にコロナショックと、ジェットコースターのように困難がありましたが、1番大変だったのは鳥インフルエンザです。当時は鶏肉を扱っているお店がどこも大打撃を受けましたが、弊社はそれまでの業績が良かったため、銀行の支援を受けることができました。しかし、事業を再び軌道に乗せるために利益を上げながら、返済しなければいけない状況に苦労しました。

当時はありとあらゆる方法を考えましたが、困難を乗り越えるためには「お店に来ていただいたお客様に感謝の気持ちを持って接客し、心を込めた料理を提供すること」に尽きると思います。結果として、飲食店として基本的なことをやり続けるしかありません。コロナショックでも、世の中の状況は必ず元に戻ると思っていたので、弊社では配達サービスを導入しませんでした。創業から25年にわたりさまざまな経験をしてきましたが、弊社は流行に左右されないメニューを提供しているので、大変な状況にあるときは新しいことをやろうとせずに、耐える勇気が必要だと考えています。

厳選した素材と試行錯誤した調理方法で名古屋コーチンのおいしさを最大限に引き出す

ーー数々の賞をとってきた貴社の鳥料理の魅力を教えてください。

西村和則:
弊社の歴史はまだ25年ですが、名古屋コーチンには100年以上の歴史があります。秋田の比内地鶏、鹿児島の薩摩地鶏とともに日本の三大地鶏に数えられる名古屋コーチンは、愛知県が改良した品種で、現在も県が種鶏を管理しているため、安心安全なブランドです。弊社は名古屋コーチンを扱っている企業として3本の指に入るほどの高いシェアを誇ります。

私たちが扱う鶏は飼育環境を重視し、さらに調理方法を工夫することで、お客様から「鶏肉の味わいが他店と違う」という声をいただいています。創業から25年間で揚げ方や味付けを追求し続けて、失敗も成功も数多く経験してきたため、積み上げてきた日々の努力が受賞にもつながっていると思います。

ーー飲食店の経営において大切にしていることは何ですか?

西村和則:
飲食店がお客様に与える印象は「おいしいかどうか」と「接客が良いかどうか」の2つが大半を占め、その後に立地条件やお店のきれいさなどがくると思っています。そのため、私はとにかく味と接客に一生懸命こだわっていれば、人気が出ないわけがないと考えています。

フラットなコミュニケーションと新しい評価制度で働きやすい職場へ

ーー貴社で働く魅力を教えてください。

西村和則:
弊社は名古屋の会社として名古屋コーチン協会と25年間ともに歩んできました。東京の大企業が同じように名古屋コーチンを使って店を出したいと思っても簡単に参入できる業界ではありません。そこは地元とともに長年歩んできた弊社の強みなので、そこに魅力を感じてくれる人材に来てほしいですね。

また、現在の部長や本部長はほとんどが創業当時のアルバイトのメンバーで、アルバイトから社員になるケースも多くあります。年功序列ではなく、明るくてお客様と話すことや食べることが好きなメンバーは入社2〜3年で店長になることもあり、年齢に関係なくチャンスがある会社だと思います。

ーー社長自身が社内の雰囲気づくりで意識していることを教えてください。

西村和則:
創業当時から、一人ひとりの社員と同じ立場で話をすることを意識しています。たとえば、今日入社したメンバーに対しては自分も入社したての気持ちになって接することで、話しやすい社長でいようとを心がけています。

ーーどのような評価制度を取り入れていますか?

西村和則:
これまで年に2回人事評価を行うことで昇格の機会を与えてきましたが、評価者が常に現場を見ているわけではないので正しく評価することが難しいと感じました。そこで、東京の店舗でアルバイトが上長を評価する制度をテスト的に取り入れています。これがうまくいけば、来年以降は全社で導入しようと考えているところです。

ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。

西村和則:
ある程度、店舗のブランドが確立されてきた今、店舗数などの具体的な目標はなく、立地条件の良い場所に出店することを重視しています。たとえば、名古屋や東京に限らず、駅構内に出店していきたいですね。また、時間をかけてブランドの価値を高めながら、働き方についてもスタッフが個人の力で稼げるようにするなど、時代に合わせて変化させていきたいですね。

編集後記

「自分の好きなことをしていたら今の形になった」と語る西村社長。「食べることが好き」というシンプルな気持ちがおいしさを追求する原動力であり、数々の実績につながっている。飲食店の基本となる味と接客に真摯に向き合う西村社長が率いるプログレは、これからも店に訪れた人に高い満足感を与え続けるだろう。

西村和則/1970年生まれ。29歳で起業し現在に至る。