※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

関東エリアを中心に「和食処とんでん」を展開する株式会社とんでんホールディングス。創業から55年以上にわたって地域から愛され続ける同社だが、その理由は食材と接客に対するこだわりによって生み出されているものだった。

今回は、同社の代表取締役社長である駒場雅志氏に、キャリアやとんでんホールディングスの強み、目指すべきビジョンなどを聞いた。

18年間勤めた銀行から、さらなる成長を目指して飲食業界へ転身

ーー駒場社長が飲食業界へ転職するまでの経歴をお聞かせください。

駒場雅志:
大学卒業後は新卒で銀行に入行し、法人営業を担当した後、官庁への出向を経て、頭取の秘書を任されました。

私の銀行時代はちょうどバブル期からバブル崩壊にまたがっていたため、その中で銀行の破綻と再生を体験しました。今の金融庁による公的資金の注入や、銀行の買い手となる企業との交渉といった貴重な経験を通じて、社会が変わりゆくさまを肌で感じたものです。

転職を考え始めたのもちょうどこの頃です。銀行の経営母体が変わったことで、私が好きだった組織とのズレを感じるようになり、それと同時に「実業の場で成長していきたい」という気持ちが強くなっていきました。

そこで、誰もが触れやすくわかりやすい飲食業界を新たな出発点に定め、社員食堂事業やとんかつ新宿さぼてんなどで知られる、株式会社グリーンハウスに転職しました。

ーー飲食業界に入ってから、どのような経緯でとんでんホールディングスに入社したのですか?

駒場雅志:
飲食業界に転身して最初のキャリアは、グリーンハウスでの社長室長と取締役の経験です。飲食業界の雰囲気は銀行とかけ離れたものでしたが、想定内だったので苦には感じませんでした。

その後、知人の誘いを受けてマンションデベロッパーの役員を経験したのち、縁あって、株式会社コメダに入社することになります。入社当時、まだ未上場だったコメダの成長や上場のプロセスを専務の立場で間近で見守れたのは本当に良い経験でした。

コメダで約10年間働き、新たなキャリアを考えていたころ、とんでんホールディングスの現会長との出会いを果たします。会長の人間としての素晴らしさに感銘を受けた私は「この人の側なら本当にやりがいのある仕事ができるはずだ」と考え、とんでんへの入社を決意しました。

こうして、弊社に副社長として迎えられることになったのです。会長からの打診を受け、2024年に社長に就任して、今に至ります。

創業から55年以上、地域から愛され続ける「和食処とんでん」とは

ーー貴社の事業内容を教えてください。

駒場雅志:
和食レストラン「北海道生まれ和食処とんでん」を運営しています。とんでんは北海道生まれのレストランで、2024年で創業56周年を迎えます。店舗は、関東を中心に95店舗を展開しており、北海道にも数店舗を構えています。

料理は、そば、鮨、天ぷらといった、皆様に馴染みのある和食を中心に、ランチとディナーどちらにもご利用いただける、豊富なラインナップを用意しています。また、単品料理も豊富で、お酒と一緒にお楽しみいただけるメニューも数多く取り揃えています。鮨を一貫から頼むこともできるので、メインメニューにプラス一貫のような楽しみ方もおすすめです。

メニューの中で特に有名なのが「名物ジャンボ茶わんむし」です。これは、約440gという大容量の中に栗の甘露煮やコーン、鶏肉、銀杏など豊富な具材が入った、とんでんの看板メニューです。2023年にはおもてなしセレクション特別賞を受賞しました。

ーー貴社が運営する「とんでん」の強みは何でしょうか?

駒場雅志:
とんでんの強みは、北海道産にこだわった食材選びと、接客における高いホスピタリティにあります。

食材とメニュー選びでは、北海道を感じていただけることを第一に考えています。たとえば、いわしはずっとこだわり続けている食材で、毎年10月4日の「いわしの日」にちなみ、のぼり旗を大々的に掲げていわし祭を開催するほどです。この「北海道生まれ」を意識した店作りが、関東の皆様に受け入れられたのだと思います。

接客面では、いまだにタッチパネルや配膳ロボットなどを使わずに、人の手による「フルサービス」を続けています。弊社では、お客様にとってとんでんに来店してから帰るまでの時間全てが「食の体験」だと思っているからです。お客様に「とんでんに来てよかった」と思ってもらえるような細かな心配りを徹底しています。

「日本で一番、感動と笑顔であふれる和食レストラン」を目指して

ーー今後の経営ビジョンについて教えてください。

駒場雅志:
現在の目標は、2024年に策定した新たな「中期経営計画経営ビジョン2030」に則って「日本で一番、感動と笑顔であふれる和食レストラン」を目指すことです。

そのためにも「接客の品質向上」と「顧客満足度の向上」を重要指標に据えて、社員たちの意識や行動を変えることで、ボトムアップ型の改革を進めていきます。

人口減少が進む昨今では、飲食業界はどこも苦戦していますが、幸い、弊社のお客様は50代から70代の方が中心なので、引き続き顧客の増加が見込めます。これからも、ゆったりした空間で美味しい料理と心地良い接客を提供し、子供からお年寄りまで、幅広い年代の方が幸せに過ごせる空間づくりを続けていきます。

編集後記

駒場社長が率いる、とんでんホールディングスの食と接客へのこだわりは、とんでんを「食事を提供する場」のみならず「笑顔を創出する場」でもあるように進化させようとしている。長年愛され続けてきたとんでんは、今後も地域の人たちにとっての「嬉しい場所」として愛され続けることだろう。

駒場雅志/1959年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業。日本債券信用銀行(現:あおぞら銀行)へ入行し秘書室秘書役、企画部企画室長などを歴任。その後外食企業への転職を経て、2019年に株式会社とんでんホールディングスへ入社。2024年から同社代表取締役社長に就任。