※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

2007年に設立された株式会社ディライト。葬儀業界に特化した人材派遣・紹介サービスからスタートし、そこからさらに業界では珍しかったWeb活用を通して「人材支援事業」「集客支援事業」へと発展している。2015年には一般向けのサービス「葬儀の口コミ」も始動させた。葬儀という分野であえて「ディライト(喜び)」という社名をつけた代表取締役の高橋亮氏に、起業のきっかけや事業の強み、今後の展望についてうかがった。

「社長になりたい」という思いを胸に大学を中退、21歳で起業

ーー社長になるまでの経歴をお話しください。

高橋亮:
大学を卒業してサラリーマンになるよりも、「社長になる人生」の方が楽しいと考え、入学した2ヶ月後に大学を辞めました。事業にこだわりはなく、葬儀業界でアルバイトを始めた理由も「他の職種より給料が良い」というシンプルなものでした。

21歳の頃、3人の仕事仲間と共同出資・共同経営で、葬儀業界向けの人材派遣会社を立ち上げました。今日・明日の食い扶持をつくるため、立ち上げ当時は1日16時間ほど働く日々でした。会社は順調に成長していきましたが、次第にメンバーとの方向性が異なり、僕は9年後に独立してディライトを設立しました。

ーーディライトが成長した背景は何でしょうか。

高橋亮:
葬儀業界のことは理解していたので、創業当初からアクセル全開で活動しました。リーマン・ショックや東日本大震災など、ピンチな状況に陥った時は「同業も皆厳しいんだ」と考えるようにしています。企業の業績は、追い風の時はあまり差が出ないからこそ、僕は向かい風を味方につけてきました。

スポーツに例えると、雨の日も休まず練習したチームは雨天の試合でも結果を出せますよね。そのように、つらい状況を乗り越えた先にこそ、会社の成長があったと感じています。

葬儀業界に特化したWebサービスで人材や集客の「困った」を解決

ーー現在の事業内容を教えてください。

高橋亮:
ディライトの軸は、葬儀業界に特化したBtoBサービスです。葬儀業界の大きな課題として人材不足と、集客、つまり葬儀社を探す方とのマッチング不足の問題があります。弊社は、人材の派遣・紹介サービスで「人の困った」を解決し、Webの活用で「集客の困った」を解決しています。

この業界はまだ、全体的にWebに弱い面があります。弊社は、集客でお困りの葬儀会社や石材店などのホームページ制作や運用を請け負っているほか、「葬儀の口コミ」「お墓の口コミ」という2つの口コミサイトを運営しています。

これは、葬儀会社や霊園・お墓の情報を公開して検索できるようにし、それらを求める方と業者との間を取り持つという、新しいサイトです。業者にとっては効率のいい宣伝になりますので、従来の看板やチラシに加えて、Webが受注の入口になるケースも増えてきました。

ーーなぜ従来はWebの活用が一般的でなかったのでしょうか?

高橋亮:
「葬儀会社がWebで集客できるわけがない」という業界の古い考えや、「事前に葬式について調べるなど縁起でもない」というご家族の思いが影響していたと思います。

従来の葬儀会社は、病院や警察、地域の互助会などとつながって存在をアピールするほかなく、ご遺族側にも比較・検討の余地がほとんどありませんでした。しかし、Web化が浸透するとともに、「ネットで事前に調べることは不謹慎ではない」という一般の方への啓蒙活動が進んだ結果、業界の枠を越えてWebサービスが増えていったのだと思います。

ーー貴社の強みをアピールいただければと思います。

高橋亮:
業界をよく知るインサイダーであることを最大の強みに「ニッチトップ」を目指しています。葬儀業界は専門用語が多く、閉鎖的に感じるため、外部参入者の成功例が少ないのです。高齢社会における成長市場ではあるものの、大手企業ほど「市場規模が意外に小さい」「web化の効果が得られない」といった障壁にぶつかります。

私たちはその障壁を逆にビジネスチャンスと捉え、「数億円規模の事業を複数つくる」という経営戦略を立てました。一つの事業が拡大しすぎると「考える人」と「実行する人」の分業化が進み、仕事がつまらなくなるため、弊社は複数の事業を展開することで、「計画と実行の一致」を心がけています。社員のやりがいにも繋がりますし、お客様にとっては信頼感が高まるという強みにもなります。

「変化」に挑む中で狙う「葬儀業界×AI」というオンリーワン企業

ーー採用活動や人材育成の方針を教えていただけますか。

高橋亮:
採用に関する権限は「現場に一番近い人」にありますので、推薦や紹介といったリファーラル採用が多いですね。葬儀業界で働きたい若手人材を増やし、「自立・自律した人材」を育てられるように、会社の風土づくりにも力を入れています。

「自律」の対義語は、人から命令される「他律」です。社内では、なるべく上下関係が生まれないようにコミュニケーションを重視しているほか、必要な本を経費で買えるなど「学び」に対する投資も惜しみません。学びの重要性を教わったあとは、一人ひとりが自立した上で、「学び続けることが当たり前」という風土が根付いていくと思います。

変化の激しい現代の企業では、積極的な「世代交代」が必要です。弊社はチーム単位で複数の事業を動かしているからこそ、社員が会社を「自分ごと」に捉えています。また近年は、新入社員でも新規事業をつくれるような体制づくりも進めています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

高橋亮:
高齢化にともない引退する人が増える一方で、若手が入ってこないことから、葬儀業界の就業者数は減少し続けています。弊社は「変化を止められないならば、変化の先頭に立とう」を唱え、AIの領域についても、他ジャンルに先駆けて開発を進めてきました。Webでの集客も、今後は大手検索エンジンからAIにシェアが移行すると予想しています。

会社としては「葬儀業界のインフラ企業」を目指しつつ、新規事業を含めて3年以内に売上25〜30億円を達成したいと思います。既存事業の一歩先や隣にある課題に着目すれば、大規模な事業投資は必要ありません。「葬儀業界×AI」という、オンリーワンのポジションを取りに行く戦略性を考えると、これほど面白い市場は他にないかもしれません。

編集後記

「一歩を踏み出すと新たな景色が見えてきて、そこに立つとまた次の一歩が見えてくる」と語る高橋代表。未来を切り開く強い行動力は、起業を志した頃からすでに彼の中にあった。「自立・自律」を体現する社員たちの力を信じているからこそ、恐れることなく「事業の種」を撒き続けることができるのだろう。「終活」が多様化している現在、ディライトのAI戦略はますます注目され、時代を牽引する存在として注目されるだろう。

高橋亮/1977年、神奈川県生まれ。青山学院大学を2ヵ月で中退し、葬儀業界でアルバイトを始める。21歳で起業(3人の共同出資・共同経営)し、取締役に就任。30歳で株式会社ディライトを創業。売上の1%を社会貢献活動に充て、2024年時点でカンボジアに18校の校舎を建設。公益財団法人スクールエイドジャパンの理事も務めている。