学生時代から英語を学び、様々な学習サービスを活用できる環境が充実しているにもかかわらず、英語を話せない人が大多数を占める日本。そんな中、英語教育と海外留学サービスを展開し、世界で活躍する人材の養成を支援しているのが、MeRISE株式会社だ。
起業のきっかけとなった言語の壁に気付いた出来事や、「音」から学ぶ自社サービスの強みなどについて、代表取締役社長である呉宗樹氏に話をうかがった。
「なぜ」を突き詰め、物事の本質を探る。自分のルーツを知るために訪れた韓国での気付き
ーーまずは呉社長の経歴をお聞かせください。
呉宗樹:
大学在学中に実家の会社が倒産し、継ぐ選択肢は無かったものの、将来起業する事も視野に入れ、成果重視の業界にしぼって就職活動しました。その中でも、よく祖母にモデルルームに連れて行ってもらったことを思い出して、不動産業界を選びました。
在日韓国人3世の私は東京で生まれ育ち、幼稚園から大学まで日本の学校に通っていました。そのため多くの日本人と同じように海外になじみがなく、英語も話せなかったため、グローバル企業は選択肢になかったのです。
そして不動産会社に入社し、営業活動する中で学んだのが、お客様の言葉を深掘りして潜在ニーズを引き出すことです。「なぜその駅に近い物件がいいのか」「なぜ2LDKなのか」といった本質的な部分を理解する。その結果、お客様の要望に沿った提案ができるようになりました。この「なぜ」を追求する姿勢は、現在の事業にも活かせていると思います。
ーーその後退職し、韓国に行かれたそうですね。
呉宗樹:
その会社で10年後、20年後の自分が想像できてしまい、わくわく感がなくなってしまったんです。そこで、自分は本当は何をしたいのか、どうしたいのか考えてみたところ、自分のバックグラウンドに向き合ってこなかったことに気付きました。
周囲からは外国人扱いされてきましたが、私自身は日本語しか話せず、海外で生活したこともありませんでした。この先も心に引っかかるものを抱えたまま生きていくのは嫌だと思い、自分のルーツである韓国に行こうと決意しました。
私にとって韓国で一時的に仕事から距離を置いたこのキャリアブレイク(キャリアの小休止+キャリアの打破の造語)の経験が、新たなキャリアを築き上げるきっかけとなります。
海外進出を妨げる言葉の壁を取り払うため、起業を決意
ーー実際に韓国で生活してみてどのような気付きがありましたか。
呉宗樹:
特に印象深かったのは、韓国人の英語力の高さです。なぜ同じアジア圏でここまで差があるのか考えてみたところ、日本企業のグローバル化の遅れが要因だと気付きました。また、韓国企業が海外事業で多くの成功を果たしていると知り、日本企業も海外進出することが急務だと確信しました。
それから日本企業の海外進出を支援するために日本へ戻り、当時まだ無名だったアリババ株式会社に入社しました。そこで、多くの中小企業の経営者が「英語ができる人がいない」という理由で海外進出を躊躇している状況に気づいたのです。せっかく素晴らしい製品やサービスを持っているのに、言語の問題で海外進出できないのはもったいないと感じました。
音から学ぶことで短期習得を実現。新たな環境での挑戦をサポート
ーー貴社の特徴や強みについて教えてください。
呉宗樹:
弊社の特徴は、音から学ぶという点です。日本国内には英会話サービスを提供している事業者が数多くあり、英語業界の市場規模はおよそ7800億円とも言われています。しかし、日本の英語教育はTOEICなどテストのための勉強に偏っているため、いつまでも英会話が上達しないのです。
そこで私たちは発音から入ることで、より実践的な英語力を身につけられるようにしています。また、英語特有の発音をマスターすることで、成長実感を得やすい所から自己肯定感を上げ、英語学習が楽しいと思ってもらえるようにサポートしています。さらに、発音を習得する前後のビフォーアフター動画で上達度を可視化することで、モチベーションアップにつなげています。
これによりネイティブのように流暢に話せるようになり、ビジネスの場で通用する英語力を習得できるのが、他社との大きな違いです。
なお、弊社は英語学習サービスのほか、語学留学サービスも提供しています。語学学習に加えて現地で異文化を体験することで、世界で活躍できる人材へと成長して「世界人デビュー」する事を目指します。
ーー経営者としてやりがいを感じるのはどのようなときですか。
呉宗樹:
みなさんの人生を好転させる一助になったと実感する瞬間です。留学を通じ、長年抱えていた悩みを解消できたという声も多く聞きます。また、語学力を身に付け、一から新たな仕事に挑戦した人もいます。
さらに、フィリピンの方々を講師として雇うことで、新たな可能性を提供する役割も果たしていると感じています。フィリピンでは潜在的に大きなポテンシャルを持っているにも関わらず、生まれた場所が理由で、能力を十分に発揮できない人たちがたくさんいます。
そこで彼らに日本に来てもらい、活躍できる場を提供しています。このように私たちの事業はユーザーの方々だけでなく、現地の人々のキャリア開拓支援にもつながっているのです。
英語を身につけ、広い世界に出て自分の可能性を広げよう
ーー今後の展望について教えてください。
呉宗樹:
現在は個人向けサービスがメインですが、今後は法人営業を強化したいと考えています。これまでは語学留学プログラムの卒業生が弊社のサービスを自社で紹介してくれることで、研修の依頼をいただくケースがほとんどでした。そこで今後は積極的に営業をかけようと、法人営業に特化したチームを立ち上げました。
採用に関しては、留学経験者や帰国子女の方など、グローバルな視点を持った方を求めています。特に幹部候補や各部門のマネージャー候補といった、即戦力となる方に来ていただきたいですね。
ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
呉宗樹:
言語はあくまでもコミュニケーションツールであり、習得自体が目的ではありません。弊社のサービスを活用して効果的に語学力を身に付け、どんどん外の世界に出て行ってください。私たちと一緒に、世界への挑戦を身近なものにしていきましょう。
編集後記
自身のルーツに対するコンプレックスを解消するため韓国に行き、そこで人生の転機となる気付きを得た呉社長。これまでのキャリアを捨て、一から自分のキャリアを築き上げるためのキャリア・ブレイクは、その人の可能性を広げる大きな一歩にもなると感じた。MeRISE株式会社は、日本人の英語力向上と企業のグローバル化に大きく貢献することだろう。
呉宗樹/1983年、東京都生まれ。2005年、東急リバブル株式会社に入社。新人から4年連続で全国トップセールスにランクされるなど、数々の賞を受賞。2011年、中国系企業アリババ株式会社(Alibaba.com、阿里巴巴集団)に入社。日本企業の海外事業戦略立案や、ITを通じた海外販路の開拓支援に従事。2012年にMeRISE株式会社を創業。