※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

街中の広告やWeb上でよく目にする、タレントを起用した広告。これらのタレントの宣材素材を提供するサービスを行っているのが、株式会社Wunderbar(ヴンダーバー)だ。

同社を率いるのは代表取締役CEOの長尾慶人氏。15歳で芸能界入り、そして高校中退を経験した長尾氏が起業するまでの経緯や、今の成功の礎となっている過去の失敗、今後の展望などについてうかがった。

芸能界で味わった挫折。中卒で働き始め起業家の道へ

ーーはじめに、長尾社長のこれまでの経歴をお聞かせください。

長尾慶人:
私は、幼少期から人を笑顔にすることが好きで、たくさんの人を楽しませたいと思い、15歳でジュノンボーイコンテストを受けました。当時はテレビの影響力が強かったので、自分の理想を叶える一番の近道だと思っていましたね。

そのコンテストで上位に入賞し芸能事務所に入ったのですが、芸能活動は上手くいかず、翌年には退所することになります。そのタイミングで父親が亡くなり、自分が働きに出て家計を支えようと、通っていた高校も1年生で中退しました。

それから地元の北海道で光通信系の会社に営業として入社し、3年ほど働きました。IT業界を選んだのは、これから伸びる分野だと思ったからです。この職場は手と受話器をガムテープでグルグル巻きにして1日中電話をかけ続けるなど、とてもハードでしたね。

ただ、このときにどん底を味わったからこそ、今の自分があると思っています。その後、18歳のときにIT企業へ転職し、上京します。そしてフリーランスなども経験したのち、23歳で一つ目の会社を起業しました。

そこで4年間経営に携わった後、株を手放して立ち上げたのが今の会社です。

ーーもともと起業家になりたいという思いはあったのですか。

長尾慶人:
父が会社を経営していたので、興味はありましたね。特にその思いが強くなったのは、父の葬儀のときです。当日はたくさんの方に参列していただき、経営者が人に与える影響力の大きさを実感しました。

案件ごとに適したタレントをマッチングし、事務所さまとお客様の双方にメリットをもたらす仕組みを構築

ーー貴社のサービス内容と強みについて教えてください。

長尾慶人:
IP(Intellectual Property)、いわゆる知的財産を軸に事業を展開しています。

弊社の主力サービスは、タレントの宣伝素材を1ヶ月単位で利用できる「Skettt(スケット)」です。また、著作権を身近に感じていただくため、エンタメIPに特化したWebメディア「IP mag(アイピー・マグ)」も運営しています。

弊社の強みは、圧倒的なタレント数、利用期間やレギュレーションの柔軟性、一貫したマーケティング支援の3つです。特に1ヶ月単位で利用できる手軽さが評価されています。また、月額20万円~と、あまりコストをかけずに有名タレントを起用できるのもポイントですね。

現在は業界の9割以上となる約100社の芸能事務所と提携しており、約250名のタレントさんにご参画いただいています。これほど芸能界の方にご協力いただけているのは、自社で抱えるタレントさんの活躍の場を広げられるメリットがあるからです。

弊社では案件のターゲット層と、ファン層とが合致するタレントさんにオファーするようにしています。そのため、ネームバリューにかかわらず、宣伝効果を高められるのです。事務所さまには新たな収入源ができ、お客様は効果的な集客ができるというまさにWin-Winの関係性をつくっています。

今の成功があるのは一度経験した失敗のおかげ。タレントの起用で集客・採用効果をアップ

ーー現在の事業を思い付いたきっかけは何だったのですか?

長尾慶人:
この事業の元となったのが、タレントさんから動画メッセージが送られてくるサービス「VOM(ヴォム)」です。同様のサービスが米国で流行っていたこともあり、日本版をつくろうと開発に着手しました。しかし、海外とのビジネス構造の違いから、このサービスは失敗に終わります。

エージェント制の米国とは違い、日本の場合は事務所さまがタレントのマネジメントを行うのが一般的です。そのため事務所さまの裁量権が大きく、オファーの内容がタレントさんに伝わる前に却下されてしまっていたのです。

その後、サービスの問題点を探るため、芸能事務所にヒアリングを行いました。そこで単価が高く、信頼性も高い法人向けのサービスに切り替え、今のサービスにたどり着きました。また、これまでの失敗を活かし、事務所さまとの交渉や企画書でアピールすべきポイントなどを戦略的に組み立てましたね。

こうして一度大きな失敗を経験したことが、今の事業の成功につながっていると感じています。

ーー顧客の特徴やサービスの主な利用目的を教えていただけますか。

長尾慶人:
住宅・人材派遣・クリニック・買取業・不動産業界のお客様が多いですね。これらの業界は他社との差別化が難しいため、タレントを起用することで優位性を出したいというニーズがあります。

また、地方出身のタレントが地元企業の広告塔になる「JAPAN SKETTT. PROJECT(ジャパン・スケット・プロジェクト)」を展開していることから、地方の需要も伸びています。特に地方の企業は人手不足が課題となっているため、地元出身のタレントが広告塔となり、就職活動中の方へPRを行っています。

このように、集客や採用など、お客様のニーズによって適したタレントさんをマッチングしています。実際に弊社のサービスをご利用いただいたお客様は、広告効果が1.5倍~2倍アップしています。

営業の仕組み化と求める人物像について

ーー今後の展望をお聞かせください。

長尾慶人:
今後4年で上場を果たし、社員数を150~200人規模まで拡大したいと考えています。そのためにも、営業組織を強化し、営業の仕組み化を進めていく予定です。現在はタレントさんの提案をする際、営業スタッフによってアプローチの仕方が異なり、属人的になっているのが課題です。

そこでこれまでのデータを整理し、営業方法を統一することで、一定の質を保てるようにしようと考えています。そして営業活動を社員に任せて、私は経営に専念できる体制を整え、企業を成長させたいと思っています。

さらに、ITに強いという弊社の特徴を活かし、海外展開も検討しています。現在フィリピンに開発拠点がありますが、新規事業も展開していきたいですね。

ーー採用において重視している点を教えてください。

長尾慶人:
私たちは個人のスキルよりも人間性を重視しています。特に「タレントさんが活躍できる場を提供したい」「エンターテインメントをより良くしたい」という思いを持っている方がいいですね。

また、弊社では「尊重・感謝・協調」を掲げており、この3つを守れる方を求めています。実際に社員もこの価値観を大切にしていて、相手の意見を受け入れながらも自分の考えを持った人格者が多いです。

エンターテインメントの力で企業の成長を支援したい方、企業文化に共感していただける方は、ぜひ弊社にいらしてください。

編集後記

10代の頃に夢を諦めたものの、今度は経営者という立場で芸能界との接点を持つようになった長尾社長。苦労したからこそ「タレントの活躍の場を広げたい」という思いが人一倍強いのだと感じた。株式会社Wunderbarは、仕事の幅を広げたいタレントと集客や採用を強化したい企業をつなぎ、新たな広告の可能性を見出していく。

長尾慶人/15歳の頃にジュノンボーイコンテストにて上位入賞後、某大手芸能事務所に所属。その後、家庭の事情で高校を中退し、札幌と福岡で光通信系の会社を立ち上げる。GMOインターネット株式会社、株式会社ディーエヌエー、Recustomer株式会社(旧ANVIE共同創業)を経て、株式会社Wunderbarを創業。「IPの可能性を広げ、人々に衝撃と感動を」というビジョンに向かってIP×テクノロジーの領域で挑戦中。