※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

東京石油株式会社は、工業用潤滑油を中心に取り扱う石油の卸売り会社だ。1965年の創業時から工業用潤滑油に特化し続け、少数精鋭の会社として多くの上場企業から信頼を得てきた。

そして、創業メンバーの1人である代表取締役の菊地延元氏は、長年会社の成長を支えてきた東京石油のキーパーソンだ。創業60周年を来年に控えた同社が見据える未来はどのようなものか。事業の強みや今後の展望について、菊地社長に詳しく話を聞いた。

工業潤滑油の販売から廃棄物処理までを「ワンストップ」で対応

ーー貴社の事業内容を教えてください。

菊地延元:
上場企業向けに工業用潤滑油に関するあらゆるソリューションを提供するコンサルティングセールスが主な事業です。通常、コンサルティングセールスは販売までが業務範囲ですが、弊社では使用済み潤滑油の回収や産業廃棄物の処理までを一貫して行っています。

対応範囲が広ければ、顧客とのコミュニケーションが自然と増え、信頼関係の構築やニーズの深堀りにつながります。こうして顧客にとって欠かせない存在となることで、長期にわたるお付き合いをさせていただいています。

ーー貴社独自の強みは何でしょうか?

菊地延元:
弊社の強みは、1965年から60年以上事業を続けてきた実績と、大手企業との長年の信頼関係です。弊社は小規模な組織ですが、工業用潤滑油に特化した少数精鋭の会社として信頼を築いてきました。これも、潤滑油を提供から処理まで一貫して取り扱ってきたノウハウがあってこそだと思っています。

また、東京の本社を基点に、埼玉県・神奈川県・大阪府に営業所があることを活かして、注文に迅速に対応できる体制がある点も強みです。在庫状況によっては、朝に注文をいただいて午後納品するといったスピード対応も可能です。

特定のジャンルに「ワンチーム」でとり組むことで業界内のポジションを確立

ーー東京石油を創業した経緯をお聞かせください。

菊地延元:
東京石油は、大学卒業後に入社した明治石油株式会社の同僚たちと、1965年に創業した会社です。最初は先輩と2人の同期と私、たった4人からのスタートでした。

工業用潤滑油に特化したビジネススタイルはこのころから始まっていました。当時、多くの会社が自動車用のガソリンを扱い始める中で、弊社は高度成長期という点に目を付け、自動車産業を中心に需要が高かった工業用潤滑油を扱うことに決めたのです。

駆け出しの営業マンの頃に商談の最中、「もうすぐ結婚をする旨」を話したところ今でも収益の柱になっている商材案件を「結婚のご祝儀だよ」と言われて取引開始となった事もあります。今では本当に懐かしい思い出ですね。

時代とともに弊社の工業用潤滑油への特化も進み、次第に工業用潤滑油をトータルコーディネートする会社として知られるようになりました。私が代表取締役に就任したのは2001年のことです。それから20年以上、仲間たちと興した会社を守り続けています。

ーー菊地社長が大切にしている考えを教えてください。

菊地延元:
私が大事にしている考えは、ラグビーにおける「ワンチーム」の精神です。日大二高校で3年生の時、1957年の全国大会決勝戦で主将で出場し準優勝しました。保全高校(東京)との決勝戦で初の東京勢同士の対戦で当時は話題にもなりました。

1人では目標を達成できなくても、社員一人ひとりが協力すれば、目標に対して粘り強く進んでいけます。社員同士が敬い合うことにもつながり、組織全体の強化を実現していくものだと考えております。青春時代の信念がずっと、わたしの背中を後押ししてきました。

60年間の「縁」に感謝し、地域No.1企業という次のビジョンを目指す

ーー今後、貴社をどのように成長させていきたいですか?

菊地延元:
「地域No.1の企業」になるのが当面の目標です。例えばリニア中央新幹線の駅が予定されている相模原エリアで、中小企業支援として一番古く歴史のある相模原金属工業団地組合で営業拠点を構えております。上場企業の関連会社やグループ会社へと取引を広げ、次世代につながる地域産業に根ざした東京石油としての役割を明確にして社会貢献をしていきたいと考えております。

また2年に一度東京ビッグサイトで開催される国際工作機械見本市「JIMTOF」に東京都から委託をうけて危険物取扱い、給油作業業者として参加しております。本年2024年度も開催されました。実際の現場は裏方作業ですが、2年に一度、全営業マンが集まり寝食を共に作業にあたる為士気を高める事業の1つとなっております。

お取引様のご協力をいただきまして、弊社の役目を果たし無事閉会となりました。仕事を通して自分自身と産業社会との関わりを認識しながら各人の成長につながる事業なので今後も是非参加させて頂きたいと存じます。

そのためにも、今までのノウハウを次世代へ承継する社員育成が必要だと感じています。業界の知識を深めるだけでなく、仕入れ先メーカーの同行研修のように、現場で学ぶ機会を積極的に取り入れる必要もあるでしょう。

弊社は2025年に創業60周年を迎えます。それにあたって、今までお世話になったすべての取引先、そして関わってくださったすべての方々に、今一度感謝をお伝えします。これからも、「One for All All for One(ワン フォー オール オール フォー ワン)」を体現する会社として、全員参加経営を目指す組織づくりをしていきます。素晴らしい仲間と出会い一緒に仕事をして混迷の時代を乗り越えていきたいと存じます。

編集後記

菊地社長が一貫して示してきた、工業用潤滑油の安定需要を柱に顧客との関係を強固なものにする姿勢は、顧客一人ひとりに合わせたマーケティングが重視されるようになった今こそ、大きな強みになるはずだ。東京石油は、これからも菊地社長の「ワンチーム」の精神のもとに社会を支え、さらなる成長を遂げることだろう。

菊地延元/1938年、満州生まれ。幼少期を満州で過ごし、満州事変の激動のさなかに父親はロシアへ抑留され、妹は病死。母と弟と3人で日本本土に移住する。日本大学卒業後、明治石油(株)での勤務を経て1965年に東京石油(株)の創業、立ち上げに参加。2001年に代表取締役就任。座右の銘は「一日一生」。