リユース業は不況に強く、持続可能な社会への実現に貢献できる市場として、ますます注目が集まっている。
業界の調べによると、市場規模は2022年に前年比7.4%アップの2兆8976億円となり、2012年の1兆3594億円から10年間で2倍以上に伸長している。
コロナ禍で拡大したネット通販に加え、BtoC店舗販売の回復は著しく、2025年には3兆2500億円の規模になるとの予測もある。
そうしたリユース業界の躍進をそのまま映し出したような企業が、2018年創業の株式会社ペンギントレード(東京都渋谷区)。売上高は創業3年で20億円を超え、2022年に30億円、2023年は50億円内外と予想。もはや「スピード違反」と言われかねない急成長ぶりだ。
そこには中古ブランド品のヴィンテージモデルに特化し、ネットコンテンツを積極的に取り入れた戦略が秘められていた。
破竹の勢いで成長する同社の創業者、代表取締役社長の佐藤佑一氏に、起業のきっかけや直近の計画について話を聞いた。
熱中した副業が起業にまで発展した黎明期
ーーこの事業を始められたきっかけを教えてください。
佐藤佑一:
上京して7年間美容師として働いていましたが、年収は300万円ほどで物足りないと思っていました。その時の価値観は「お金を持っているのがカッコいい」でしたから、少しでも収入を増やそうといろいろ試しました。
何をやってもうまくいきませんでしたが、メルカリが普及した頃でもあり、副業としてネットオークションで売買を始めたんです。
クロムハーツといったブランド品を取り扱っていましたが、「けっこう高く売れるな」と手応えを感じて、相場や売買のことを勉強しながら深くのめり込んでいきました。
そして1年ぐらいすると本業の収入を抜いてしまっていたので、「本格的に仕事として取り組もう」と思ったのが事業の始まりです。
ーー法人化して急成長したターニングポイントはどの辺だとお考えですか?
佐藤佑一:
当初はひたすら毎日商品をたくさん買って利益を乗せて売って、それがただただ気持ちよくて、駆け抜けていったという感じでした。
しかし、個人売買の延長だと頭打ちになっていきました。オークションの買い取り販売だけでは横流しに近く、マージンを確保し続けるのは容易ではありません。
できるだけ安値で買い、高値で売るための方法を本気で考えた結果、オークションだけでなく直接消費者からの買い取りを強化することにしました。
小売店だけでなく、現在の「COCO査定」「リセールの外商」のように、ネットを利用した消費者へのアプローチを採用。そこからライブコマース・Eコマース事業の形式で仕入れも販売も間口を広げていくことになりました。
ヴィンテージ特化型のスキルとリペア技術に強み
ーー他社と差別化できるポイントはどんなところでしょうか?
佐藤佑一:
私たちは浅く広くというよりは特異な商材に絞って知見を深め、古いシャネルやエルメスなどのヴィンテージと呼ばれるモデルに特化して買い取り販売を行っています。
頻繁に勉強会を開いて研究を積み重ね、社内で情報を共有してスキルを磨いていますから、この分野では他社に負けない自信があります。
また品質管理にも気を配り、状態の悪いバッグでもピカピカに磨くリペアの技術は大きな強みだと思います。
使用する薬剤はオリジナルのものを開発し、リペアできる人材は街のカバン修理店で実力のある人に個別に声をかけていました。スカウトした人の中には、メディアで有名になっていた方もいます。
バッグカバー修理のノウハウをブランド品に最適化する技術は、他を寄せ付けない「独自性の高い手法」といえるでしょう。
日本のリユースモデルを海外で実現したい
ーー海外での事業計画があるとお聞きしました。
佐藤佑一:
ブランド品の越境EC販売に力を入れていきます。
それに加えて、ECでグローバルに実績をつくり、これを足がかりに海外でのFC展開を計画しています。日本でリユースを学んだ人が自国に帰って起業するのを支援するのも1つの手段でしょう。いくつかのオプションを考えています。
「日本のリユース市場は成熟している」と感じたことが海外進出の着想となりました。買い取り・仲介・販売といった、リユース業界の国内の流通モデルをグローバルで展開できれば、というのが私たちの考えです。
ーーほかに直近の経営計画があれば教えてください。
佐藤佑一:
2028年に東証グロース市場への株式上場を目指しています。
それをにらみ、市場価値を上げるために今後は増収より、営業利益率を10%にすることを目標としていきます。
また在庫・予算・データの管理強化が当面の課題です。これまでの業務のノウハウや積み上げた経験値をデータ化し、感覚的なものではなく経営体としてのロジックをまとめていきたいと思います。
ーー最後に、人事採用で求める人材はどんな方でしょうか?
佐藤佑一:
リユースはそれ自体がサスティナブルな事業ですから、社会的な価値は高いと思います。外部から来ていただくのであれば、会社の価値を理解して前向きに取り組んでいただける方が理想です。
編集後記
佐藤社長はブランドのヴィンテージ品について値付けの曖昧な面を指摘しながら、「分かりづらかった今までの価値をフェアに評価することで、業界に貢献していく」と抱負を語った。
急成長に対しても、社長自身は謙虚であり、なおかつ自信を感じさせる今回のインタビューだった。この先もリユース業界の成長株として活躍する姿を見届けていきたい。
佐藤 佑一(さとう・ゆういち)/1990年長崎県生まれ。東京文化美容専門学校卒。美容師免許を取得後、フリーランスとして2017年まで美容師として活動。ネットオークションに個人で参加しながら自身のキャリアに疑問を感じ、古物業界へ参入。2018年に株式会社ペンギントレードを設立し、代表取締役社長に就任した。