1921年に創業した米国最大級の靴下製造販売会社であるレンフロ・コーポレーション。2012年にその日本法人として設立したレンフロ・ジャパン株式会社は、「We Are Gamechanger 私たちは足もとから世界を変えていく」という企業理念のもと、靴下をはじめとしたレッグウェアやインナーを手がけている。
日本独自の商品開発やマーケットの開拓に力を入れてきた取締役支社長の高橋良太氏にビジネスへの思いや見据える未来についてうかがった。
ゲームチェンジャーの精神で日本の靴下市場を発展させる
ーーレンフロ・ジャパン設立までの経緯を教えてください。
高橋良太:
大学卒業後、伊藤忠グループ会社に入社してすぐに靴下の営業部署に配属され、国内外での靴下の製造や販売に携わりました。約18年勤めた中で、アメリカで最大級の靴下製造販売会社であるレンフロ・コーポレーションから「日本法人を設立したいから力を貸してほしい」との誘いを受けたのです。商社営業という立場で靴下業界を俯瞰して見ていた経験から、「日本のマーケットで勝負できる」と感じました。
外資系アパレルでは海外でつくったものをそのまま日本で売るケースが多いのですが、私は日本人のニーズにあった靴下をつくることを条件に社長を引き受けたのです。
ーー設立当時、どのような会社にしようと考えていましたか?
高橋良太:
経営理念として掲げている「We Are Gamechanger」という言葉通り、設立当時から日本のアパレル産業をゲームチェンジしたいという考えを持ち続けています。靴下業界は保守的で新規参入が少なく、景気に左右されない業界でもあります。
1人あたり年間で平均10足の靴下を買うといわれており、その量が極端に増減することはないので、ある程度マーケットが決まっているのです。アメリカ本社と協力してイノベーションを起こし、日本人の足にフィットする靴下をつくればゲームチェンジが可能であると信じて挑戦を続けてきました。
ーー大切にしている考えを教えてください。
高橋良太:
私は、ビジネスはエンターテインメントだと考えています。サービスに対してお金を出していただくことで仕事が成り立っているので、興味関心を持てる会話をして「この人から買いたい」と思ってもらわなければいけません。お客様とのお付き合いだけでなく、サプライヤーや従業員との関わりにおいて自分自身をブランディングすること、エンターテインメント性を常に意識しています。私を通じてワクワクしてもらいたいですね。
他社ブランドとタッグを組み、特徴を活かした商品を開発
ーー事業内容について詳しくお聞かせください。
高橋良太:
弊社では靴下やレギンス、アンダーウェアを製造販売しており、大きく分けて3つの事業を展開しています。1つ目はブランドライセンス事業です。世界的に認知度の高い有名スポーツブランドやフットケアブランドとライセンス契約を結び、商品を製造しています。さらに、国内の異業種ブランドであるホカロンやシーブリーズとのライセンス契約により、それぞれのブランドの機能性やイメージを活かした商品の開発も行っています。
2つ目はOEM事業です。スポーツ用品を扱う大手スポーツチェーンのプライベートブランド商品や大手SPAの一部の靴下、さらに大手コンビニエンスストアの靴下も弊社が製造しています。3つ目はリテール事業です。楽天市場やアマゾン、ヤフーショッピングに自社のショップがあり、弊社の商品を消費者に直接販売しています。
ーー社内の雰囲気を教えてください。
高橋良太:
創業から12年経ちますが、全員が中途入社で、「We Are Gamechanger」という企業理念に賛同して入社してくれています。年数の浅い外資系企業でチャレンジしたいと転職してきた時点ですでにゲームチェンジャーですよね。社員50名弱のうち約10名が外国籍の方で、男女比は4:6と、全ての職種で国籍や性別を問わず活躍できる環境です。平均年齢は30代半ばくらいなので、業界の中では比較的若い方だと思います。
ーーどのような人材を求めていますか?
高橋良太:
弊社の理念に共感し、ゲームチェンジしたいと考えていることを前提として、物事をポジティブに捉え、自分自身を高めていける人に来てほしいですね。社員一人ひとりの成長が会社の成長につながると思っています。
グローバルカンパニーとしてアジア太平洋地域への拡大を目指す
ーー今後の展望をお聞かせください。
高橋良太:
設立から10年経った時にオフィスを移転し、次の10年に向けた目標を社内で共有しました。弊社は有名ブランドの商品を製造する一方で、レンフロ・ジャパンという社名はほとんど知られていません。
これからEコマースのような消費者と距離が近いプラットフォームが増えていく中で、レンフロ・ジャパンとしての認知度を高める必要があると考えています。そのための取り組みとして、子ども向けのデザイナー体験や文化服装学院の学生がデザインした靴下の販売など、消費者との接点を設けるイベントを開催しています。
ーー今後の事業ではどのようなことに注力していきたいですか?
高橋良太:
新商品として、電気で温める靴下を開発中です。さらに、高齢者向けに膝や腰を温めるためのサポーターも開発中です。夏用の商品では、近年の猛暑対策として電気で冷やすインナーを開発したいと思っています。
Eコマースは3年前からスタートし、現在売上10億円を超えようとしているところです。新商品をEコマースで販売し、レビューを受けて商品の改善をしていきたいですね。今後はECモールでの売上を伸ばしつつ、自社サイトでの販売にも力を入れていきます。
ーー海外展開について教えてください。
高橋良太:
レンフロ・ジャパンとして、日本だけではなく、中国、韓国、オーストラリアをはじめとしたアジア太平洋地域での展開を求められており、特にウェルネス系のブランドを海外に展開したいと考えています。すでに一部のブランドの商品は約20カ国に輸出し、台湾では会社を立ち上げて現地での製造販売をスタートさせているので、今後はさらに拡大していきたいですね。
夢を叶えるためビジョンを語る
ーー最後に、社長自身の夢を教えてください。
高橋良太:
私は自己資金で会社を経営しているわけではなく、社長という役割を与えられてマネジメントを勉強させてもらっています。ビジネスはエンターテインメントだと考えているからこそ、社長として常にポジティブにビジョンを語り、会社を底上げしていかなければいけません。この役割をしっかりと果たし、いずれはレンフロ・コーポレーションの役員になることが私の夢です。
編集後記
周りの人をワクワクさせるために常に情報収集を欠かさないと語る高橋社長からは、ビジネスを成功に導くための心構えを学ぶことができた。老舗が多く保守的な日本の靴下業界に風穴を開けるレンフロ・ジャパン株式会社のさらなる活躍に期待が高まる。
高橋良太/1970年、埼玉県生まれ。1994年に大学を卒業後、伊藤忠グループ会社入社。靴下の製造販売の担当となり、2012年まで伊藤忠商事株式会社にて従事。同年、米国レンフロ・コーポレーションの日本法人、レンフロ・ジャパン株式会社を設立し取締役支社長に就任。