※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

2000年、京阪電気鉄道株式会社から1つの事業部隊が独立した。株式会社京阪ザ・ストアである。当初は京阪電気鉄道の流通店舗を運営する会社としてスタートしたが、今では京阪電車の沿線にとどまらず、関東にも事業を拡大している。

代表取締役社長の達川俊夫氏に、これまでの経歴や社長としての取り組み、そして社員への思いについて、話をうかがった。

「きみは流通に向いてそうだね」その一言で気づいた自分の強み

ーー株式会社京阪ザ・ストアは京阪電気鉄道株式会社から分離独立したと思うのですが、入社するまでの経緯を教えてください。

達川俊夫:
私は愛媛県出身だったため、関西での就職を希望していました。先輩からの助言や企業研究を通じ、京阪電気鉄道が、レジャー、流通、不動産など多角的に事業を展開している点に惹かれました。当時から「新しいことに挑戦したい」という漠然とした希望があり、面接官に「君は流通分野に向いてそうだね」と言われたことで勢いがつき、「流通でがんばります」と宣言して入社したのです。

入社後、最初に配属されたのは流通部門で、沿線や駅ナカに展開するスーパーマーケットのバイヤーを3年務めた後、売り場の主任を担当しました。

その後経理部へ異動となり、会社全体の数字や財務の基礎を約3年間学んだ後、再び流通部門に戻り、ファッション部門のDCブランドの責任者を任されました。短期間でしたが、ファッションのことを考え、テナントの入れ替えやメーカーとの交渉などさまざまな経験を積み、ビジネスパートナーとの継続的な信頼関係を築くことができました。新しいことに積極的にチャレンジさせてもらえたことは、とてもありがたい経験でしたね。

週替わりの感動を求めて出店、駅ナカのお菓子箱「SWEETS BOX」

ーー改めて、貴社の事業内容についてお聞かせください。

達川俊夫:
弊社は、2000年に京阪電気鉄道の流通事業から分離・独立して誕生しました。スーパーマーケット「フレスト」を主軸に、食の商店「もより市」、駅ナカスイーツ専門店「SWEETS BOX」などの食品を扱う店舗に加え「ユニクロ」や「MUJIcom」などファッション関連の店舗を、京阪線の駅構内に留まらず、他社線にも広げて運営しています。

ーー「SWEETS BOX」は、達川社長自ら開発に携わったとうかがいました。

達川俊夫:
駅ナカは、仕事帰りやお出かけの際など、スイーツのニーズが高い場所です。当初はテナントを誘致して事業を展開していたのですが、常に同じ商品では飽きられてしまうという課題がありました。特にスイーツ好きの方は、新しいお店や流行の商品を楽しみたいという要望が強いように感じたため、常に変化を提供できる売り場づくりを目指しました。

そこで人気のスイーツ店を週替わりで入れ替える「SWEETS BOX」を思いつきました。週替わりを徹底するためには年間52社との取引が必要になり、担当としては大変ですが「常にお客様にワクワクしていただきたい」という思いから、美味しいお店の情報を聞きつけると自ら現地に行き、試食して出店交渉を繰り返してきました。現在は私の手を離れましたが、担当部署は今も日々新しいテナントを探して、大変な努力を続けています。

ーー最近、新たな業態を生み出したそうですが、どのようなものですか?

達川俊夫:
枚方市駅再開発によって生まれた「枚方モール」に、新業態となる次世代型スーパーマーケット「THE STORE」をオープンしました(2024年9月)。当社が運営するスーパーマーケット「フレスト」に、京阪版 SDGs「BIOSTYLE」の理念を加え、健康的で美しく、クオリティの高い生活の実現に役立つ店舗をめざしています。

また、社名である京阪ザ・ストアの一部を屋号に使用することで、京阪グループのまちづくりの中で、食の一端を担ってきたDNAを今後も継承しながら、これからの新しいスーパーマーケットの姿を「THE STORE」と表すことで進化させていく想いを込めました。

そして、テーマに「地域性」を挙げていることから、地元企業様とのコラボ商品の開発や、地場野菜の商品展開などがされており、地元愛が強いスーパーですので、周辺地域にお住まいの皆様に愛していただきたいと願っています。

カジュアルな社風が育む、自由闊達な企業文化

ーー貴社はカジュアルな社風だとうかがいました。具体的にはどのようなことですか?

達川俊夫:
弊社はさまざまな事業を行っています。店舗によっては、社員が1〜2名のところもあるため、私自身ができる限り店舗を巡回し、社員と直接対話するように心がけています。そうすることで、「(立ち仕事で)腰が痛くて困っている」といった率直な声が上がってくるわけです。社員から「経営者にそんな話をできる企業はなかなかない」と言われることもあります。

また、2024年2月の事務所移転を機にオフィスカジュアルを導入し、今では親会社の経営会議にもスニーカーで出席しています。さらに、事務所はワンフロアにして、あえて席は決めずに自由に座り、壁もガラス張りにすることで、経営層と社員との距離を縮める工夫をしています。このような取り組みによって、社員にオープンでカジュアルな社風を感じてほしいと願っています。

ーー最後に、貴社で働くメリットを教えてください。

達川俊夫:
弊社は鉄道のグループ会社ですが、京阪線沿線内に留まっていては成長は望めません。今後も京阪沿線外へと事業を広げ、さらなる成長を図りたいと考えています。そのため、社員の「こんなことをやりたい」という声を可能な限り実現できる会社にしたいと思っています。私自身がさまざまな挑戦をさせてもらったように、社員にも新たな挑戦ができる環境を提供し続けたいと考えています。

食は人々の生活においてとても重要な部分です。私たちのような鉄道のグループ会社にとっては、沿線地域の方々への貢献が使命です。沿線のお客様のために、住みやすいまちづくりを行っていきたいと考えています。

具体例として、最近移動スーパーを始めました。店舗へ足を運びづらい高齢の方々へ、食材を自宅まで届けるサービスを提供しています。このように、変わらぬ姿勢でお客様に寄り添い、特にスーパーマーケット事業ではお客様の生活を支える存在であり続けられるように柔軟にニーズに応えていきたいと考えています。

編集後記

鉄道会社での安定を求めるのではなく、あえて新しい挑戦を続ける達川社長。立ち止まらないためには、地域や市場を深く学び、社員に自ら実行力を示すことが必要不可欠なのだと想像する。

そんな達川社長率いる株式会社京阪ザ・ストアだからこそ、食を中心としたサービスで、京阪沿線のみならず日本中の人々の衣食を「楽しさを伴って」守り続けていくのだろう。日々の買い物や生活が、同社の存在でより豊かでワクワクするものになれば、私たちの暮らしも確実に彩りを増すはずだ。

達川俊夫/1961年、愛媛県生まれ。関西学院大学を卒業。1985年、京阪電気鉄道株式会社(現 京阪ホールディングス株式会社)に入社。2019年、株式会社京阪ザ・ストアの代表取締役社長就任。