※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

時代が変わっても変わらず人気の高い米菓。実際、総務省の家計調査によると、2023年における一世帯あたりの米菓の年間購入金額は大きく増えており、多くのメーカーが業績を「好調」と答えている。その中でもあられやおかきの製造・販売で高い成果を出しているのが、老舗の米菓メーカーである株式会社赤坂柿山だ。代表取締役の川合寛妥氏に、同社が長年愛される理由を聞いた。

バブル崩壊や東日本大震災などの逆境も前向きにとらえて会社を成長

ーー代表就任までの流れを教えてください。

川合寛妥:
弊社に入社する前は、準大手のゼネコンであるフジタに勤めていました。自分たちのつくったものが目に見える仕事をしたいと思っていたのに加えて、小さな頃から劇場などの商業地が好きで、まちづくりに興味があったことが理由です。ただ、もともと会社を父から継ぐ意思はあったので、1993年にフジタを退職して弊社に入社しました。その1年後に取締役、翌年には常務となり、1999年に代表取締役に就任しました。

弊社は「Fresh&Fashion」を社是に掲げており、常に新鮮であることを重視しています。経営陣が早く入れ替わり、「フレッシュな状態を維持できた方が」良い、そして「ポストが人をつくる」という父の考えもあり、入社して早い段階で代表取締役を任せてもらいました。

それだけでなく、父が息子である私を心配し、自身が元気で目の届くうちに、代表を交代してくれたのだと思います。

ーー代表就任後の苦労やターニングポイントについて聞かせてください。

川合寛妥:
代表に就任したのは、ちょうどバブルが崩壊する時期で、先が見えない状況で会社を経営しなければいけない苦悩がありました。ただ、環境が整っていない時期にスタートを切れたのは、むしろ貴重な経験だったとも感じています。

東日本大震災のときは、資材が入ってこない、計画停電で営業がままならない、自粛ムードで嗜好品が売れにくいなど、非常に困難な状況でした。その中でもみんなで試行錯誤しながら乗り越えられたことは、大きな糧になっています。

ターニングポイントは、金属片混入の可能性で商品を自主回収したときのことです。ただ、この事態をきっかけに、HACCP(原材料の製造工程におけるリスク管理の手法)を取得したり、スタッフたちに連帯感が生まれたりといったプラスのことにもつながりました。

「Fresh&Fashion」をキーワードに唯一無二の米菓を提供

ーー事業内容についてお願いします。

川合寛妥:
弊社は老舗の米菓メーカーで、そのルーツは約100年前に祖父が富山で立ち上げたおかきづくりの会社「日の出屋製菓産業」にあります。その後、父が約50年前に東京地域の百貨店ブランドとして分社独立しました。

祖父が会社を立ち上げたときに掲げたポリシーが、「類ありて比なし」です。おかきなどの米菓は見た目に違いが出にくく、どのお店でも似たような商品を販売しています。その中でも祖父は、「他社と比べるものがないような商品をつくろう」と決意しました。このポリシーのもと、創業当初から弊社では富山の良質な米を使い、職人が手作りした、他社とは比べられないような独自性の高い商品を提供しています。

ーー貴社の強みはどのような点にありますか。

川合寛妥:
1つは、良質な商品であるという点です。実際に販売スタッフたちからは「本当に美味しくて良い商品だから、自信を持って販売できる」と言ってもらえています。社員たちが自社商品の美味しさや品質に自信を持ち、安心して売れるというのは、会社にとって最も大切なことでしょう。

また、米菓は地味なイメージがありますが、弊社では、父の代に掲げた「Fresh&Fashion」の社是の通り、ファッショナブルな部分も意識し、お客様がワクワクするような商品づくりを心掛けています。

現在、パッケージのデザインにこだわった商品を、赤坂の本店のほか、デパートでも展開しています。昔ながらのつくり方にこだわりながらも、時代に合わせて売り方やパッケージを変えているのは、先代から受け継がれた弊社の強みです。

より多くの人に米菓との接点をもってもらうために販路を拡大する

ーー今後の展望を聞かせてください。

川合寛妥:
1つは、お客様と米菓の接点を増やすことです。米菓は家で味わうことが多いですが、弊社の商品はホテルのウェルカムスイーツやバーでも提供されています。これにより、お客様は非日常のシーンでも米菓との接点を持つことが可能です。

インバウンド客の取り込みにもつなげたいと考え、羽田空港や成田空港でも販売を始めています。また、最近は高級食品スーパーにも販路を拡大し、より多くのお客様に届けられるようになりました。

これまでは店舗を構えて対面で販売することで特別感を出していたので、セルフ型の店舗などに販路を拡大すれば、「赤坂柿山」のブランディングは薄まるかもしれません。そのため、今後は赤坂柿山のブランドをしっかりと深耕することも改めて考えていきたいです。

編集後記

伝統を受け継ぎながらも、時代に合わせた売り方で愛される赤坂柿山。老舗でありながら、今までの手法にとらわれない点が同社の強みだ。柔軟な考えを持つ川合代表が率いる同社は、これからも人々のニーズに応えながら、日本の米菓業界をけん引するだろう。

川合寛妥/1968年東京都生まれ、早稲田大学教育学部卒業。1991年株式会社フジタ入社、1993年株式会社赤坂柿山入社。常務取締役、専務取締役を経て1999年代表取締役社長就任。赤坂の地域活動、日本ブランドのラグジュアリー化活動にも注力する。