※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

株式会社スイレイは、1970年に創業した排水処理施設の設計・施工・管理事業を行う会社だ。設備機器の販売だけではなく、クライアント企業へのコンサルティングに注力し、排水のリサイクルシステムや凝集沈澱ろ過システムなど、オーダーメイドの設備を企業に提案している。

創業以来赤字を出さず、ROA指数が常に10%以上を目指しているという同社の体質は、どのような経営理念によってつくられたのか。代表取締役社長である加納壮浩氏に話をうかがった。

若手社員がつくり上げた「美しい水」の社訓

ーー2015年の社長就任から現在までに、苦労したことを教えてください。

加納壮浩:
社長へ就任直後した直後に、大きな負債を抱える可能性がある出来事が発生しました。あまりにも突然の出来事で思考停止状態になりましたが、社員一同で懸命に取り組んだことを覚えています。中にはプレッシャーで2週間以上微熱が続いた人もいたほどで、そんな状況でもともに頑張ってくれる仲間の大切さを痛感しました。

また、このことが私自身の頭の使い方を変えるきっかけとなり、元ソニーの重役であった天外先生の天外塾に3年間通いました。

そこでは視座を高く持ってあらゆる角度から物事を感じ、良い悪いで物事を判断しない、指示しないなど、経営者の武器防具を全て外して自然の流れに乗るという訓練を徹底的に実践していきます。いわゆるバイアスを徹底的に外すということですね。お陰様で、偽らない等身大の自分が好きになってます。

ーー会社のトップとして、どのような考え方や価値観を意識していますか。

加納壮浩:
弊社では、「経営理念」「社訓」「運営テーマ」の3つを策定しています。弊社の経営理念は、「謙虚な心で自然を、社会を、人を愛し、情熱的に仕事に取り組む企業」です。この理念は、私が仕事に取り組む先輩たちの様子を観察し、「謙虚」「愛情」「情熱的」という3つのキーワードをベースに考案しました。

「社訓」は、「美しい水をつくる。美しい水を創造しつづける」です。これは入社1年目から5年目までの社員を集めてつくったものです。さらに、この社訓に肉付けして策定したものが、運営テーマです。「どんな状況下でも、自身の家族のために仕事ができる」「社会に必要とされ続ける」というもので、「常に前進し続ける」という姿勢を重視しています。

少数精鋭でクライアントの課題を解決するオーダーメイド設計

ーー貴社の事業内容や特徴を教えてください。

加納壮浩:
弊社は、工場排水の水処理システムの設計・施工・管理を専門に行うアッセンブリメーカーです。機械器具設置工事業であるにもかかわらず、在庫をほとんど持たず、工場もないというところが他社とは大きく異なる点だと思います。

自社開発した商品を販売するのではなく、少数精鋭でお客さまの困りごとを解消するために、ディレクションを行いオーダーメイドの設計を提供する。それが弊社の大きな特徴です。

また、弊社は「少数精鋭」を掲げて仕事を行っています。研究開発に多数の人的資源を投資するのではなく、「いいものを調達して組み合わせたらどうなるだろう」という発想で開発を行うのです。その結果、開発者も気づかないプロダクトのメリットを発見することもよくあります。こうしたことから、弊社は非常に創造力豊かで、ユニークな会社、水処理コンサルタントともいえるかもしれません。

高い視座と自然体を重視した人材育成で組織の成長を目指す

ーー人材を育成するために、どのような取り組みを行っていますか。

加納壮浩:
私は、目先のことにばかり焦点があたる組織体は、現状維持バイアスがかかりやすいと考えています。常に高い視座を持ち、思考して能力を発揮するためには、一人ひとりの社員が置かれた環境の中で自分らしく、自然に振る舞えることが必要です。周りに流されて同調するのではなく、社員が本当の意味で等身大でいられる場所を提供し、弊社をクリエイティブ集団と呼ばれる組織体に成長させていければと考えています。

また、どんな環境の中でも社員が遺憾なく能力を発揮できるよう、弊社ではいろんな体験の場を用意しています。たとえば、研修旅行もその一つです。社員自らが研修旅行を企画しています。あえて日常とはかけ離れた最高級のホテルに宿泊体験しながら、そのような環境でもいつも通り振る舞えるようにするのが狙いです。こういう投資ができるのは社員の日々の努力の賜物なので、これからも利益を上手く循環させていきたいですね。

ーー今後はどのようなところに注力していきたいとお考えですか。

加納壮浩:
「整える」ということに注力をしていきたいです。冒頭に申し上げた、「どんな状況下でも、自身の家族のために仕事ができる」「社会に必要とされ続ける」という運営テーマに基づき、「ヒト・モノ・カネ」という経営資源をさらに整えたいですね。

会社を大きくするというより骨太で筋肉質な会社を目指しています。あらゆるニーズにフレキシブルに対応していける高付加価値、かつ自立型の少しとがった面白い組織がこれからの時代を生き抜くポイントと考えています。

編集後記

「自ら体験することが、成長するための血肉となる」と語る加納社長。その思いは、社員への投資にも表れており、一人当たりの付加価値額(労働生産性)は3,000万以上と非常に高い。社員一人ひとりが持つ可能性を最大限引き出そうとする同社の姿勢が、この数字を実現しているのだろう。水を美しくする技術と同様に、人を育てる技術でも卓越した企業であることを実感した取材だった。

加納壮浩/2002年、有限会社ZOOMに入社。建築フォトグラファー白鳥美雄、淺川敏に師事する。2006年に渡米してハリウッドシアターの撮影アシスタントとして働く。2008年から2009年まで、「STORYTELLER.INC」の契約カメラマンを務める。2009年に株式会社スイレイに入社。専務、副社長を経て、2015年に代表取締役社長に就任する。