※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

多摩川の河川・橋梁の工事のほか、崖崩れ修復や道路災害防除⼯事など、社会に欠かせない土木建設事業を手がけている巴山建設株式会社。業績を急速に伸ばす同社だが、背景には一体どのような理由があるのか。代表取締役社長の巴山一済氏に、同社の技術や人材活用への取り組みについて聞いた。

建設業の魅力は、みんなで1つのものを完成させる喜びを味わえること

ーー会社を継ぐ決意をしたきっかけについて教えてください。

巴山一済:
学生時代に2〜3か月間、父が経営する巴山建設株式会社を手伝うために現場へ出たのがきっかけです。自分のした仕事で街が変わることに達成感を覚え、そのときに「自分にはこの仕事が向いているかもしれない」と思いました。

大学卒業後は、会社を継ぐ前の修業として、大手ゼネコンの大成建設株式会社に入社。2年半の修業期間を終えて、弊社へ戻った頃から、自分が社長になるということを強く意識し始めました。それから実際に社長に就任したのは、2021年のことです。

ーー社長に就任された後、どんな変化がありましたか?

巴山一済:
社長になってからは、「日々の積み重ねが信頼につながる」ということを特に強く感じるようになりました。また、失敗を恐れず前に進むことも大切だと痛感しています。そのため、社員たちに「できない」ではなく「どうしたらできるようになるのか」を考える姿勢を持つよう伝えることが重要だと思うようになりました。

ーー建設業界で働く魅力はどういった点にありますか。

巴山一済:
それぞれの得意分野を持つ職人と仕事ができること、現場のみんなで1つのものをつくり上げる喜びを味わえることが魅力です。また、橋や道路が完成したとき、近隣住民の方が喜んでくれているところを見ると、とても嬉しく思います。

そのほか、ものづくりを通じてコミュニケーション力を磨くことができる、専門性の高いスキルを身につけて幅広い場所で活躍できるといった点も魅力です。

作業時間を大幅に短縮し、安全性も高める「ICT施工」をいち早く取り入れて活用

ーー事業内容について教えてください。

巴山一済:
弊社は多摩地区を中心に事業を展開し、道路や橋梁のほか、電気や水道に関わる工事を手がけています。社会にとって必要不可欠で、今後もなくならないであろう社会インフラを事業にしている点が特徴です。2019年、多摩川にかかっている日野橋が災害で損壊したときには復旧工事を手がけ、東京都から表彰されました。

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか。

巴山一済:
弊社の強みは、ICT(情報通信技術や情報伝達技術)を活用した施工が業界内でも進んでいることです。ICT施工では、人間が行うと何日もかかる測量をドローンで数十分で終わらせ、その測量データをもとに3D図面を作成します。その図面をICT建機という自動制御システムに取り込み、操作補助機能を使って施工するのです。

ICT施工の魅力は、測量する人が不要になり、今まで5時間かかっていた作業が2時間になるなど、工期を大幅に短縮できることにあります。さらに、経験が浅い重機オペレーターでも、熟練者と遜色ないスピードで施工を進められる点が大きな魅力です。効率的に仕事できるようになるため残業が減ります。また、人が作業に関わる機会を減らすことで事故のリスクを減らすことが可能です。

多摩地区に屋外運動施設を建設予定。技術力を高めながら地域貢献できる企業を目指す

ーー今後の注力テーマを教えてください。

巴山一済:
建設業界は男性社会と思われるかもしれませんが、弊社は女性が働きやすい環境づくりにも力を入れています。今後は、その取り組みを加速させていきたいです。

女性が働きやすいよう、弊社はこれまで現場に女性専用の休憩室を設置したり、日焼け止めを支給したりするという取り組みを行ってきました。これらが評価され「令和6年度東京都女性活躍推進大賞」を受賞しています。今後は女性の採用をさらに積極的に進め、女性ならではの目線を仕事で活かしてもらいたいですね。

また、5年後、10年後には会社の売上が倍になると予想しています。そのときに向けて、社員数を今の倍以上に増やすべく多くの人材を採用する方針です。

そのほか、弊社はサッカー場が含まれる屋外運動施設「パンダフィールド」を現在建設中で、完成すると週末に300人ほどがサッカーを楽しめるようになる見込みです。このような地域に根差した活動を通じ、多摩地区を盛り上げる企業を目指していきます。

ーー最後に、今後の目標や展望についてお聞かせください。

巴山一済:
先ほどお伝えしたとおり、地域の活性化に貢献できる企業になることが1つの目標です。また、今後はARやVRなども活用しながら、会社の技術力を上げていきたいと思います。そして、今までに経験したことのない仕事を積極的に獲得し、人材や機械を充実させながら、働きやすい環境づくりにも努めます。

働きやすい環境づくりの一環として、弊社では該当する資格を取得すれば15万円が固定給にアップされるなど、社員が高いモチベーションを持ちながら働ける環境づくりに力を入れていく所存です。

編集後記

ICT施工の技術をいち早く取り入れた巴山建設株式会社。新しい技術を学ぶことに抵抗のない巴山社長の柔軟性が、会社を急成長に導いてきたのだろう。新技術の導入や女性の活躍推進への取り組みなど、業界内でも一歩先を進み続ける同社の活躍は、建築業界が目指すべき1つのモデルケースだと感じた。

巴山一済/1975年、東京都調布市多摩川生まれ、日本大学文理学部心理学科卒。大学卒業後は大成建設株式会社に入社し約2年半の修行を積む。その後巴山建設株式会社へ入社し、2021年に家業の3代目として代表取締役社長に就任。