※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

株式会社北嶋建設は、大阪市立総合医療センターの病棟改修工事や日本万国博覧会記念公園倉庫棟増築工事など、大阪府内の公共事業において数々の重要案件を手がけてきた土木建設会社だ。2024年に代表取締役を務める棈松陽一氏は、先代社長から事業を受け継ぎ、働き方改革や採用強化、経営幹部育成などに注力している。同社の事業展開やさまざまな取り組みについて、棈松氏に話をうかがった。

現場の声が会社を変える!挑戦を後押しする経営哲学

ーー社長の経歴を教えてください。

棈松陽一:
弊社の先代社長だった父の姿を見て育った私は、子どものころから、「いずれは建築の仕事をやりたい」と考えていました。そして、小学校を卒業するころには「1級建築士になりたい」という夢を抱くようになっていたのです。

高校卒業後は、建設関係の専門学校へ進学しましたが、1年半で中途退学することになりました。その後、およそ1年間、アルバイトとして働きながら将来について模索していたところ、2003年に父に声をかけてもらい、弊社に入社しました。

入社後は、営業職としてキャリアをスタートしました。ところが、父が病気になったことをきっかけに、経営体制が大きく変化することになったのです。その結果、2020年に私が取締役社長を務めることになり、2024年に代表取締役に就任する運びとなりました。社長に就任するまではずっと現場で働いていたので、最初は経営についてわからないことばかりでしたね。窮地を乗り切ることができたのは、当時の社員が助けてくれたおかげです。

ーー社員とコミュニケーションをとるときに、どのようなことを心がけていますか?

棈松陽一:
部下と話をするときには、相手に配慮するようにしています。言葉の行き違いから対立が生じることもありますが、やはりお互いに意見を言うことは必要不可欠です。定期的に話す場を設けて、「こうしてほしい」とお互いの要望を言い合い、問題が起きたときも翌日まで引きずらないようその日のうちに解決することを心がけています。積極的に意見や提案を出して自分をPRし、失敗を恐れずに挑戦してほしいです。

ーー働きやすい環境づくりのために、どのような取り組みを行っていますか?

棈松陽一:
現在は「働き方改革関連法案」によって、建設業界における週休2日制の導入が推進されていますが、発注業務の都合上、土曜日が休めない現場もあります。そこで、弊社は交代制の導入や土曜勤務者への公休手当支給など、柔軟な対応を行ってきました。

また、残業削減にも注力しており、複数の案件を掛け持ちさせず、チーム制を導入しました。このように業務を分担することで、効率的に仕事を進め、残業ゼロを実現しています。従業員のワークライフバランスを重視し、有給休暇とは別に、現場が終わった後に長期休暇を取得できる制度も設けました。

さらに、現場スタッフが経営陣に直接意見を伝えられる仕組みを構築し、風通しの良い組織づくりにも注力しています。

公共事業で培った信頼。業務のデジタル化で生産性を向上

ーー貴社の事業内容を教えてください。

棈松陽一:
土木・建築・解体工事の会社として、主に大阪府や大阪市、国交省、文部科学省などの公共事業に携わっています。それらに加えて今後は病院施設の工事も増やしていく予定です。

ーー業務効率化のため、どのような取り組みを行っていますか?

棈松陽一:
紙のタイムカードをインターネット上の勤怠管理システムに移行して、ペーパーレス化を推進しています。また、2025年度から、現場ではタブレットを活用して写真撮影や書類整理をデジタル化する予定です。従来はデジカメで撮影して紙に記録していた作業を、施工管理アプリを用いて一元管理することで、レポート作成の時間も短縮しました。こうした取り組みによって、生産性の向上と従業員の業務負担軽減を同時に達成することを期待しています。

働きがいも社会貢献も叶える建設業の世界

ーー今後はどのようなことに注力したいと考えていますか?

棈松陽一:
これまでより一層、社員が働きやすい環境づくりに注力する方針です。

現場事務所の中に仮設トイレを設置するなど、働く場所を改善したいと考えています。すでに2名の女性技術者が施工管理の現場で活躍しているので、今後は男性も女性も働きやすくなる工夫をしたいですね。社員の中には海外出身の方もいるので多様性に富んだ職場環境を目指します。

また、現場で働く社員だけではなく、経営に参画できる幹部候補の育成も必要です。失敗を恐れずにチャレンジできる環境を整え、積極的に手を挙げる社員を登用しています。現在、経営陣が複数の案件を直接担当しており、業務負担が大きい状況です。そのため、現場を統括できる管理者の配置を進め、組織全体の業務効率を向上させる取り組みを目指しています。

ーー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

棈松陽一:
若い世代の方に、建設業界に興味を持っていただきたいですね。建設業は、何もない場所から道路や建物をつくり上げることができ、社会に大きく貢献できる仕事です。たとえば、自ら手がけた小学校で子どもが学び、成長していく姿を見られることは、建設業ならではの大きな喜びといえるでしょう。このようなものづくりの面白さを、ぜひ多くの人に体験してほしいです。

編集後記

採用強化と事業拡大に意欲を見せる、棈松社長。今後は、病院関連の改修工事を受注した実績を活かし、より多くの市町村・独立行政法人に指名願いを通じて、病院関連の改修工事の受注を増やしたいそうだ。これまでに蓄積してきた技術力と経験を基盤に、さらなる飛躍を見せてくれることを期待したい。

棈松陽一/1982年、大阪府生まれ。大阪府立島上高等学校卒業。2003年に株式会社北嶋建設へ入社、営業部に配属される。2020年に取締役社長就任。2024年、代表取締役に就任し現在に至る。