※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

2025年で創業120周年を迎える中村工業株式会社。九州を代表する専門工事会社として、鳶・土工工事をはじめ、解体やリニューアルも含めた建築・土木工事を手がけている。代表取締役の中村隆元氏に、事業の強みと魅力、専門工事業界の現状、今後の展望についてうかがった。

鳶工から始まった5部門体制を強みに世界的大手ゼネコンと契約

ーー事業内容を教えてください。

中村隆元:
中村工業は鳶職集団として始まり、お客様のご要望に応える形で大型杭打機・土木工事・リニューアル工事と部門を増やしていきました。主要お取引先は、全国、および世界で事業展開しているスーパーゼネコンです。2006年には、現場で使う部品を工場生産するプレキャスト(PC)工法部門を立ち上げ、部品の品質向上と労働時間の削減を実現しました。

最大の特徴は「5つの部門を持つ専門工事業者」であることです。重層下請構造にある建設業界において、元請さんと直接契約する会社を「一次会社」と呼ぶのですが、弊社のような一次会社が大勢の職人を直接雇用しているケースは非常にめずらしいと言えます。

ーー企業としての強みもうかがえればと思います。

中村隆元:
5つの部門と重機を有していることと、技能者(職人)と管理職の両方を採用し続けていることが強みです。僕が社長になってからは300人体制を目指して、現在の社員数は約260名に達しました。新卒者を毎年採用してきたことで、地元の学校からの信頼も大きく、学生さんにも「5部門の中から自分に合う仕事が見つかる」という安心感を与えられています。

ここ数年は、熊本の半導体事業や防衛省の事業、福岡の再開発事業の影響が大きく、三本柱のすべてで数字がぐんと伸びています。物件が大型化している九州において、一社で大事業を請け負える会社は他になく、この良い流れは2030年頃まで続くと見込んでいます。

「まずは西日本を担う」という方針ですが、東京や北海道にも仲間がいるので、専門工事業者でありながら、全国展開していく力がある会社だと信じています。

企業に必要な「変化」と「対話」を忘れずに。老舗の立場に甘んじない姿勢

ーー現在の注力テーマや課題についてお話しいただけますか?

中村隆元:
古くからの風土として、社長業に就いても「親方思考」の人が多いことが専門工事業界の課題です。例えば、一般的には会社の業績が下がった時は「社長」の給料も下げるものですが、土建業の社長にあたる「親方」は先に自分の取り分を確保します。

「中村工業」は、親方思考の風土とも異なる、自分たちの信じる道を突き進んでいます。人手不足という問題が業界内にあるからこそ、社員を第一とした安心・安全な環境づくりが求められると思うのです。

労働環境や福利厚生を整えて、「この会社に入って幸せだった」と社員に思ってもらえるような仕組みや風土を築くことが弊社の使命であり、業界の課題だと思っています。

ーー日頃から大事にしていることを教えてください。

中村隆元:
高校時代はラグビーに熱中していたため、スポーツ的な考え方をすることが多いですね。チームのなかで各自の役割をしっかりと果たすことを大前提に、僕自身もプレイヤーの一人として、チームが動かない時には柔軟な変化が必要です。

会社が絶対に変えてはいけない部分は、社員やお客様に対する優しさや愛情です。しかし、技術面や組織の構造については、自分や会社の常識が世間と食い違わないように更新していくべきだと思います。異業界や世界中を常に見渡して、変化すべきかどうか心に問いかけなくてはいけません。

対話しやすい雰囲気づくりを心がけ、社内では明るくふるまっています。「社長はいつも楽しそうですね」と言われるぐらいが、ちょうどいいのではないでしょうか。お互いの気づきを「対話」というキャッチボールで共有することで、共感および思考の変化が生まれ、それを「行動」につなげる流れを総じて「コミュニケーション」と呼ぶのだと思います。

九州の有名物件を多数建築!更新し続ける「実績」と「仕事の楽しさ」

ーー貴社で働く魅力を教えていただけますか。

中村隆元:
スーパーゼネコンがお取引先ということで、多種多様なものづくりに携われます。弊社は地域の大学やダムから、福岡ペイペイドーム、ONE FUKUOKA BLDGといった大型でユニークな物件まで、幅広く手がけてきました。

一級建築士や施工管理技士、現場監督、鳶土工の国家資格など、必要な資格の取得は会社が全額補助するほか、キャリアアップに応じて給与もアップしていきます。社員数の多さは「チームメイトが多い」という心強さにもつながることでしょう。

若手が成長しやすい仕組みはもちろん、安心して長く働ける環境づくりや「土建業の常識に染まらない」というテーマも大事にしています。「当たり前のように社会貢献しよう」という考えから、パラリンピックや女子ラグビーといったマイナー競技の支援も始めました。

「中村工業に入らなければ得られなかった」と感じる時間や場面、思考を作ることで、社員には人生をより豊かにしてほしいと思っています。社員やお客様が楽しめる取り組みも毎年企画していて、創業120周年記念には福岡ペイペイドームで運動会を開催予定です。

ゆくゆくは「職人の学校」を作りたい。建築業界の明るい未来を目指して

ーー今後の展望をお聞かせください。

中村隆元:
安定した施工力、職人の数、施工実績の累積といった「骨」の部分を固めていくことが会社としての使命です。「地域創生」を担う建設土木に特化すると決め、社員には「中村工業は天守閣ではなく土台を作る側である」という考えを伝えています。

元請さんに職人を育ててもらえた時代は終わりつつあります。より多くの人材を抱えるためにも、自分たちがもっと表に出る形で採用と教育に力を入れていきたいと思います。

また、世間的には「職人には高卒者がなるもの」という認識が根付いています。これからの建築・土木業界は、技能者のあり方と待遇を変えることで「職人」の社会的地位を上げ、大学生にも「職人になりたい」と思ってもらうために努力していくべきでしょう。

最低限の知識やスキルが身につくと、ものづくりの楽しさを心から実感できるのが技術職です。そこで、弊社では早いうちから仕事を楽しめるように、入社後5年間は特に教育の場を充実させています。最終的には「職人の学校を作ること」が僕の使命だと考え、業界の課題解決に向けた取り組みが自分の喜びに直結する未来をイメージしています。

編集後記

時代の流れに合わせて、業界の古い体質も変わるべきだと語った社長。その先見性と客観性は、盛り上がりを見せる九州の建設業界に欠かせないものだ。数社の大手ゼネコンに選ばれ続ける中村工業だからこそ、「変化」を厭わない姿勢を貫くことができ、共感の輪も広がっているのだろう。

中村隆元/1975年、福岡市生まれ。1993年、中村学園三陽高等学校を卒業。1997年、福岡建設専門学校を卒業し、中村工業株式会社に入社。鹿島建設株式会社へ出向。2003年、中村工業株式会社のリニューアル課長に就任。2012年に専務取締役、2015年に代表取締役に就任。国家資格の建築施工管理技士1級を取得。