※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

近年、さまざまな業種でデジタル化が進み、サイバー攻撃による個人情報の漏洩事故は後を絶たない。テクノロジーの進化に合わせて新たな脅威が押し寄せる中、株式会社サイバーセキュリティクラウドは、日本発のグローバルセキュリティメーカーとして、Webサイトへのサイバー攻撃を防ぐプロダクトを提供している。代表取締役社長兼CEOの小池敏弘氏に社長就任までの経験や同社の強み、見据える未来についてうかがった。

大手企業でキャリアをスタートし、アメリカでの経営や起業を経験

ーー社長就任までの経緯を教えてください。

小池敏弘:
大学卒業後、リクルートグループに入社し、営業やマーケティングを10年ほど経験しました。2012年以降に、アメリカでスタートアップが広まる様子を見て、自分も経営に携わってみたいと考えるようになり、縁あってアメリカのITベンチャー企業に経営メンバーとして加わりました。その後、日本で新しく創業会社を譲渡し、2021年にサイバーセキュリティクラウドの代表取締役社長兼CEOに選任され、現在に至ります。

ーー学生時代から起業に興味があったのでしょうか?

小池敏弘:
大学時代は特に起業に興味はなく、企業に勤める社員として成長したいと考えて就職しました。リクルートを退職する頃には経営に興味を抱いていましたが、アメリカで実際に経営を経験したことで、経営者というのも1つの役割でしかないことに気付いたのです。私自身、経営者としての適性がなければ他の役割を担えば良いと考えるようになり、経営や起業に対して特別なこだわりを持っているわけではありません。

ーーサイバーセキュリティ業界に入ってどのようなギャップを感じましたか?

小池敏弘:
サイバーセキュリティの会社が扱うプロダクトは、日頃から使うものではなく「何か起きないことが前提」というインフラのような側面があるため、自社の存在意義を感じるポイントは一般的なものやサービスを提供する業種とは異なります。「縁の下の力持ち」とは私たちのような存在のことをいうのだと、身に染みて感じています。

顧客のニーズをつかみ、“ちょうどいい”サービスを提供

ーー貴社の事業内容や強みを教えてください。

小池敏弘:
Webサイトの中にある機密情報は、常に破壊されたり盗まれたりする危険にさらされています。弊社は、パソコンや社内ネットワークのウイルス対策ではなく、誰もが訪れるWebサイトをサイバー攻撃から守るプロダクトを提供しており、国内で同様の事業を行う競合は1、2社程度しかありません。

セキュリティ業界はどのジャンルも外資系企業が多くを占めていますが、サービスを導入した後も、弊社は日本語で対応できることはもちろん、自社で開発から運用まで行う国産メーカーとして直接サポートできる点が評価され、設立から10余年で実績と信頼を積み上げてきました。細やかなサポートは日本のみならず海外でも好評をいただき、現在は、世界90カ国以上でサービスを提供しています。

ーー新しいサービスについてお聞かせください。

小池敏弘:
これまでは­セキュリティの一部分を担うプロダクトを展開していましたが、昨年、各種セキュリティサービスを包括的に管理・運用できるサービスをリリースしました。このサービスは、発売から1年で大企業からベンチャー企業まで幅広いお客様に支持されています。今後もお客様の声を聞きながら、価値あるサービスを提供していきたいですね。

ーー会社として大切にしている考えは何でしょうか?

小池敏弘:
サイバーセキュリティ企業として、時間をかけて良いものをつくること以上に、多くのお客様に使ってもらうことに重きを置かなければいけないと考えています。お客様の声を聞き、必要とされる製品を迅速に開発・提供するというシンプルなサイクルを、より速く回していくことが大切です。日々変化する世の中で、共通の敵であるサイバー攻撃からWebサイトを守るために、お客様とともに進んでいくことが重要だと感じています。

サイバーセキュリティの企業の中には最低限のスペックのサービスを低価格で提供する会社や、高スペックのサービスを高価格で提供する会社があります。私たちはその真ん中で、求められるスペックを無駄なく組み込んだ、いわゆる“ちょうどいい”サービスを追求しています。

サイバーセキュリティで困ったときに真っ先に想起される会社を目指す

ーー働きやすい環境をつくるためにどのような取り組みをしていますか?

小池敏弘:
弊社はドリンクやスナック菓子を社員に無料で提供している他に、社内イベントとして鍼の先生に来てもらって社員が鍼治療を受けられるようにしたり、スナックタイムとして社員同士がお菓子を食べながらコミュニケーションをとる時間を設けたりしています。費用対効果を求めず、社員にとってプラスになることは積極的にやってみることにしています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

小池敏弘:
サイバーセキュリティで困ったときに相談される存在として、世界中で最初に名前が挙がる会社を目指しています。この業界は、売り手側とお客様との間で情報や知識に差が生まれがちですが、私たちはお客様にとって使いやすく、買いやすい商品を開発して、より多くの人にメリットを享受してもらいたいと思います。

編集後記

商品開発においてお客様の声を聞くことが大切だと繰り返す小池社長からは、お客様と誠実に向き合うことで、真に価値のあるサービスを世の中に提供したいという思いがひしひしと伝わってきた。インターネット空間の安全を守るために歩みを止めない株式会社サイバーセキュリティクラウドは、今後グローバル市場でさらなる活躍をみせるだろう。

小池敏弘/1983年生まれ。甲南大学法学部卒業。2006年、リクルートHRマーケティング関西(現リクルート)入社。2016年、米国AppSocially Inc.のCOOおよび日本子会社の取締役に就任。2021年、株式会社サイバーセキュリティクラウドの代表取締役社長兼CEOおよび、子会社のCyber Security Cloud Inc. (USA) のCEOに就任。2022年に子会社である株式会社ソフテックを統合し、同年、米国法人の拠点をロサンゼルスに移す。2023年、一般社団法人サイバーセキュリティ連盟を設立し、代表理事に就任。