※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

石﨑ホールディングスは、自動車部品の製造や、ガラスの卸売り、サッシ・外壁工事などの建設事業、パーキング運営事業など幅広く手がける企業だ。創業100年を迎え、2022年には各事業を分社化し、ホールディングス体制となった。ホールディングス化を決断した理由、今後のビジョンなどについて、代表取締役社長の石﨑泰次郎氏にうかがった。

ホールディングス化が生んだ新たな組織風土

ーー2022年にホールディングス化した理由を教えていただけますか。

石﨑泰次郎:
それまでは、1つの会社に自動車部品と建築という性質の異なる事業が共存している状態でした。全社の方針転換をする際は、もう一方の事業と足並みをそろえるため、折衷案にまとまることが多かったのです。また、就業規則も主力事業である自動車部門に建材部門が合わせていました。そこで、各事業がよりスピーディーに行動できる体制を構築するため、ホールディングス化を決めました。

もう1つの狙いは、社員に事業の権限委譲をするためです。現在は各事業会社の社長が実質的な経営権を持っており、私は全体の方向性は示すものの、基本は社長の意見を尊重します。これにより変化のスピードが速い現代で、自由な発想で柔軟に動ける組織づくりを進めています。

モノづくりの経験を活かし、地元・広島の活性化に貢献したい

ーー改めて貴社の事業内容についてお聞かせください。

石﨑泰次郎:
主力事業は、自動車用部品の製造事業です。特にサイドミラーが売上の多くを占めており、駆動部分やミラーを囲うプラスチック部分の製造もすべて自社で行い、完成品を納品しています。

弊社ではコンパクトミラーの製造を行っているため、コンパクトカーの需要の高まりに伴いシェアを拡大している状況です。現在は国内カーメーカー複数社からサイドミラーを採用されており、海外生産も7拠点で行っています。

また、自動車用サイドミラー以外にもフロント、サイド、バックガラスにセンサーなどの電装部品を加工するアッセンブリーやインナーミラーの製造も行っており、自動車の視界に関わる部品の大半の製品を弊社では取り扱っています。

もう1つが建築事業です。創業時から行っているガラスの卸売り以外に窓やサッシ、外壁工事を手がけ、設計から工事まで一貫して提供しています。昨年M&Aを行った山口県宇部市でサッシの販売・施工を行う双葉アルミ工業と共に、さらなる成長を目指しています。それに加え、不動産事業として広島市の中心街でパーキングの運営も展開しています。

ーー今後特に伸ばしていきたいのはどの事業ですか。

石﨑泰次郎:
不動産事業に着目し、広島の街づくりの活性化に貢献したいと思っています。自動車業界や建築業界で培った経験と技術を生かして、人々の暮らしを支える安全で快適な空間を創造する企業にしていきたいと思います。

社員を大切にしながら人々に感動を伝えられる企業へ

ーー社内の取り組みについてお聞かせください。

石﨑泰次郎:
長年続けている活動として、地域の方を招いた石﨑グループ秋祭りがあります。一時は西日本豪雨災害や新型コロナウイルスの影響もあり、中断した時期もありました。しかし、会社のPRよりも地域貢献や従業員との繋がりをテーマにしようと決め、2023年に再開しました。また、石栄会という社内親睦会があり、社員旅行や野球部の同好会活動などで社員同士の交流の場を設けています。

職場環境ではホールディングス体制と併せて事務所のリニューアルを行いました。レイアウトや什器類は従業員に企画を任せ、働き方に合った執務スペースを選べるフリーアドレスも導入しています。今後も従業員の働きやすい職場環境の整備に力を入れていきたいと思います。

ーー今後の目標について教えていただけますか。

石﨑泰次郎:
社是に「和誠(わ と まこと)」と掲げている通り、真面目な社員が多いのが特徴です。この良さはそのまま残しながら、今後は従業員満足度の向上に注力したいと考えています。現在の経営理念は、1つ目が「お客様満足」、2つ目が「社会貢献」、その次が「自己研鑽」、最後が「社員の幸福」です。

これからは「お客様満足」と「社員の幸福」を同列に位置づけたいと思っています。まずは評価制度を見直し、社員が正しく評価される環境を整備していこうと検討しています。

ーー最後に将来のビジョンをお聞かせください。

石﨑泰次郎:
弊社では中長期ビジョンとして「『UNIQUE × SPACE』感動を伝える企業」というビジョンを掲げています。「UNIQUE」はこだわりのある面白いもの、ワクワクするものという意味です。「SPACE」は窓などの商品を通じ、みなさんに安心できる空間を提供することを表現しています。

このビジョンを指針とし、目指すのは人々に感動を伝える企業です。当初は社内の反応も控えめでしたが、3年経った今では共感の輪が広がってきていると感じています。2030年までにこのビジョンを実現し、豊かな想像力と技術力でさらなる発展を遂げていきます。

編集後記

100年以上続く家業を引き継ぎ、事業のホールディングス化という大改革を決行した石﨑社長。この決断には企業体制を強化し、会社を未来に残したいという強い思いが感じられた。株式会社石﨑ホールディングスが地元の発展に貢献し、柔軟な発想力でさらなる飛躍を遂げることを期待したい。

石﨑泰次郎/1976年生まれ。学生時代はバンド活動に打ち込み、上京後は建築業界に就職、32歳で地元の広島に戻り製造業の経験を経て、2008年に株式会社石﨑本店(現:株式会社石﨑ホールディングス)に入社。2021年代表取締役社長に就任。2022年のホールディングス化に伴い、株式会社石﨑ホールディングスの代表取締役社長と株式会社石﨑本店と株式会社ペンストンの取締役会長に就任。