※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

オリジナルの生活雑貨やアパレル商品、独自の視点で国内外から仕入れたセレクト商品を販売するライフスタイルショップ「CLASKA Gallery & Shop “DO”(ドー)」を運営する株式会社クラスカ。代表取締役の大熊健郎氏に、この仕事に就くまでの経歴や、商品づくりや店づくりへのこだわり、今後の展望などについてうかがった。

インテリア雑貨のバイヤー、雑誌の編集者を経てショップの責任者へ

ーーまずこれまでの大熊社長の経歴についてお聞かせください。

大熊健郎:
大学卒業後はインテリアを扱う会社に入社しました。当時はまだ小さな会社だったので、法人営業のほか広報やカタログ制作などマルチタスクで行っていましたね。その後、青山の店舗でマネジャーを務め、自分の売り場を持つようになり、他にも商品企画や海外での買い付けなど、さまざまなことを経験させてもらいました。

家具の会社を退社後に勤めたのは航空会社の機内誌を制作している編集プロダクションでした。最初は担当ページを持って編集者としてライターやイラストレーター、カメラマンさんとのやりとりをしたり、後には自分で企画したページを作り署名原稿を書かせてもらったりしていました。

ーーそこからクラスカの立ち上げに携わるまでの経緯を教えていただけますか。

大熊健郎:
機内誌の制作を別会社が請け負うことになり、所属していた編集プロダクションが事実上解散することになってしまいました。次はどうしようかと思っていたときに、ご縁があって「Hotel CLASKA」のリニューアルに携わることになったのです。本当に行き当たりばったりの人生ですね(笑)。

Hotel CLASKAはもともと2003年に東京のあるディベロッパーがプロデュースしたのですが、2007年に事業譲渡することになり、その際Hotel CLASKAを引き継いだのが現在の弊社の親会社にあたる会社でした。そしてたまたま私はリニューアルの責任者を務めることになったのです。

最初はリニューアルオープンに向けて、まずはどういった施設にするかというというコンセプトづくりからコンテンツの企画立案などを行っていたのですが、その際、私の要望で提案し、採用されホテル内に開業したのが、「CLASKA Gallery & Shop “DO”」です。それから今日に至るまで、責任者を務めています。

現代の暮らしにフィットする商品を提供。多くの人々を惹き付ける理由

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

大熊健郎:
主な事業は「CLASKA Gallery & Shop “DO”」というライフスタイルショップの運営です。直営店15店舗に加え、スタッフは置かず、小さな売り場だけを設置しているサテライト店舗もあります。また実店舗運営以外にオンラインショップやオリジナル商品の卸売りなども行っています。売上比率は実店舗が8割弱で、それ以外が2割程度といった感じです。

オリジナル商品は海外にも輸出しており、主に中国、韓国、台湾のアジア圏中心ですが一部欧米にも展開しています。購買層の中心は40代以上ですが、「MAMBO(マンボ)」というオリジナルの犬のキャラクター商品の認知度の高まりと共に20〜30代のお客様も増えています。

私たちが大切にしているのが、ブランドの世界観を商品や店舗に反映させることです。商品や接客サービスを通し、穏やかで上質感のある世界観を感じていただけるよう心がけています。

実店舗の魅力は、お客様が自分の五感で商品を感じてもらうことができたり、お店で買い物をするという行為そのものの楽しさを感じてもらえることだと考えています。こうしてお客様と直接触れ合う機会を大切にしながら、実店舗とオンライン販売のバランスを上手く取っていきたいですね。

ーー多くのファンを獲得できた要因についてはどのようにお考えですか。

大熊健郎:
事業をスタートさせたと機を同じくして、身近な世界の価値、たとえば海外ではなく日本でつくられたモノの魅力だったり、毎日の暮らしをどう楽しむかといったことに多くの人が関心をもつ機運が高まってきたのが大きいと思います。「安心できる確かな商品を取り入れて日常に潤いを与えたい」という方が増え、そういった方々に弊社の商品を選んでいただいていると感じています。

小さな組織だからこその機動力の高さ。アパレルブランド立ち上げの経緯

ーー商品開発はどのように行っているのですか。

大熊健郎:
オリジナルのアパレルブランドの「D(ディー)」と「HAU(ハウ)」は、それぞれ専属のデザイナーが1人ずついて、企画から生産まですべて担当しています。その他の商品については、私を含めた数名のスタッフが企画や開発などを担っています。少人数体制なので意思決定はもとより、企画から商品化までのスピードが速いのが特徴ですね。

今後はそれぞれのオリジナル商品のブランド力をより強化したいと考えています。「オリジナル商品」というと、仕入れで扱っている他社のブランド品より格下という印象がつきがちで、販売するスタッフ自身も無意識に軽く扱ってしまうことがあると感じていました。

弊社の「Ⅾ」というアパレルブランドは、もともとクラスカオリジナルのアパレルという位置づけに過ぎなかったのですが、企画を担当していたスタッフの服作りに対する真摯で丁寧な姿勢を見ていて、単なるオリジナル商品ということでなく、きちんとアパレルブランドとして育てたいという思いからリブランディングをしました。

そうしたことで企画スタッフ自身もよりモチベーションを感じてくれて、社内的にもとらえ方が変わったことでブランド自体とても成長しています。今後もオリジナル商品といえどもきちんとブランド化していくことを意識して、一つひとつの商品を丁寧につくり、お客様に商品の価値をお伝えできればと思っています。

ーー社員の方々の特徴について教えてください。

大熊健郎:
弊社の世界観をよく知り、愛着を持った上で接客したほうがお客様に商品の良さが伝わると考えているので、販売スタッフもほぼ正社員として雇用しています。もともと弊社店舗のファンが多いため、商品に最初から愛着を持ってくれているスタッフが多いですね。長く働いてくれている社員が多いので、会社の居心地はそんなに悪くないのかなと思っています。

消費者が求める商品を提案し、時代の変化に取り残されないショップを目指す

ーー最後に今後の展望についてお聞かせください。

大熊健郎:
事業規模自体はもう少し大きくしたいと思っています。それもただ店舗数を増やし、売上を拡大していくのではなく、オンラインショップや卸売りといった実店舗以外の売上比率を高めながら、広げていくのが目標です。将来的には実店舗の売上とそれ以外の売上を半々程度にしていきたいですね。やはり実店舗主体の小売事業なので生産性の向上が課題です。

そのためには商品開発の強化は必須だと考えています。当然消費者のニーズは刻々と変化しているため、求められる商品を半歩進んで提案することも重要ですし、その中で、自分たちらしい商品を打ち出すことを大切にしたいです。

また日本は少子化の一途を辿っているので、市場規模の大きな海外への販路拡大を目指しています。これらのことに取り組むことでより業績を伸ばし、福利厚生を充実させ、社員がよりいきいきと働ける企業を目指していきます。

編集後記

インタビュー中、終始穏やかな語り口調でお話しくださった大熊社長。日常に馴染みやすく、ほっと落ち着くアイテムは、社長の温和な人柄がそのまま表れているように感じた。株式会社クラスカはこれからも人々の生活に寄り添い、心温まる商品を生み出し続けることだろう。

大熊健郎/1969年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、株式会社イデーに入社。その後、全日空機内誌『翼の王国』編集部で編集者として活動。2008年に東京・目黒にあるリノベーションホテル「CLASKA」のリニューアルと共にCLASKA Gallery & Shop“DO”を立ち上げ、店舗事業と国内外への卸売り事業も行っている。執行役員、取締役を経て2024年に代表取締役に就任。