多くの企業が市場における独自ポジションの獲得に苦しむ中、広島県にある老舗カメラ店の株式会社SAEDAは、日本未上陸で日本国内では知名度の低い海外ブランドの代理店としての道を確立し始めている。
長年小売店をメインにしてきた同社が新たな道を歩み始めた背景には、2015年に代表取締役に就任した佐衛田章浩氏の存在があった。佐衛田社長が手がける改革や、代理店業の強み、今後のビジョンなどについて話を聞いた。
学生時代の留学経験を活かし、老舗企業を世界とつなげる
ーー佐衛田社長の経歴をお聞かせください。
佐衛田章浩:
弊社は私で3代目となる会社です。しかし、学生時代の私は会社を継ぐことよりも海外の文化に対する興味が強く、長い時間を留学先のオーストラリアで過ごしていました。
大学卒業後は弊社に入社しました。入社してからの数年は直営店舗勤務や卸売事業の営業として各地のお得意先を訪問したりなど、現場仕事を中心に担当したものです。
会社の経営に本格的に携わるようになったのは、取締役に就任した2000年からです。取締役販売本部長、取締役副社長を経て、2015年に社長に就任しました。
ーー海外留学経験は業務のどのような部分に活かされていますか?
佐衛田章浩:
現在力を入れている海外展開や事業の多角化に活かせていると感じます。留学中にさまざまな国の人と触れ合った経験は、言葉や文化の違いへの抵抗を和らげています。
また、海外で知見や人脈を得られたことから、ビジネスチャンスを広げるために海外へ飛び出すことの大切さを知る機会になったと感じています。
英語力が身に付いた点も大きなメリットでした。トップが英語力を持っていることは海外企業と商談するためにとても重要であり、海外メーカーの代理店という新たな道を切り開いている今、その効果を大いに実感しています。
海外メーカーの代理店として、独自のポジション確立を目指す
ーー貴社の事業内容を教えてください。
佐衛田章浩:
カメラをはじめとした映像関連製品の販売や卸売り、写真撮影サービスなどを行っています。
事業領域はBtoCとBtoBの両方で展開しており、toCでは広島県内に3店舗を構える小売店「カメラのサエダ」の運営やECサイトの運営、インターネットで手軽に注文できる写真プリントサービスなど、toBでは映像関連製品の卸売や企業向けのイベント撮影、スクールフォトビジネスなどを主な事業としています。
また、近年は海外の製品を輸入して販売する代理店事業に力を入れています。フィンランドのスタートアップ企業が展開する「Loupedeck(ループデック)」や香港の「Phottix(フォティックス)」など、まだ日本国内では知名度の低い名ブランドを取扱い、国内市場における開拓者としてのポジションを確立しようとしています。
ーー貴社独自の強みは何ですか?
佐衛田章浩:
代理店として海外ブランドの開拓に取り組んでいることです。開拓の余地はそのままビジネスチャンスの大きさにつながりますし、業界におけるポジション獲得の面でも大きな可能性を秘めています。国内の同業他社と競合が起こりにくいのも良い点ですね。
また、さまざまな事業を並行して育成している点も強みといえるでしょう。事業の選択肢を多く持っておけば、行き詰まりの状況でも活路を見いだせることがあります。実際にコロナ禍のときは、閉鎖的な空気の中でも先へ進もうという原動力になってくれました。
知られざる海外ブランドを国内に広める「プロデューサー」という「スペシャルワン」な存在を狙う
ーー今後、特に注力したいテーマを教えてください。
佐衛田章浩:
新たな海外ブランドを開拓・日本国内へ導入し、日本国内でさらに市場を広げるためのマーケティング活動に力を入れ、加えてブランディング(日本国内の独自のローカライズ、ここでは敢えてブランディングと言わせていただきます。)にも取り組みたいと考えています。マーケティング活動やブランディング活動には一定のコストは伴うものの、成功すれば大きなブレイクスルーが得られると考えています。
また、別ベクトルの成長戦略として自社ブランドの育成にも取り組んでいきます。弊社には三脚やバッグといったカメラ用品を取り扱う「BECKS」と小物を取り扱う「B.e.」という2つの自社ブランドがあるので、自社独自の価値を生み出すためにも着実に育てていきます。
ーー人材に求める条件を教えてください。
佐衛田章浩:
海外ブランドの代理店機能を強化するにあたって、海外との折衝経験や貿易実務経験、語学力などがあるとありがたいですね。新卒採用では、海外を相手にした仕事に熱意がある方を歓迎します。
また、フットワーク軽く世界を飛び回れる方も求めています。チャンスをものにするためのキーパーソンとして活躍したい方は、ぜひお声がけください。
弊社は「ナンバーワン」ではなく独自のポジションを持った「スペシャルワン」として、成長していきたいと考えています。新たなポジションの創出には新たな世代の力が必要です。ぜひ皆さんの力を弊社で活かしてみませんか?
編集後記
開拓とはリスクと成功が表裏一体の行動だ。開拓の余地をビジネスの好機と捉える佐衛田社長の目には、険しい道のりのさなかにも可能性の蕾が見えているのかもしれない。無名な海外ブランドの育成をする事で、国内の知名度がより拡大し、大きな花を咲かせるその日は、それほど遠くないように思われた。
佐衛田章浩/1971年、広島県生まれ。1994年に株式会社SAEDAに入社し、2000年に取締役に就任。2015年に代表取締役就任。