
自動車1台には約3万点の部品が使われているという。その数ある部品の開発において、革新性と独自性を追求したカー用品ブランド「Valenti(ヴァレンティ)」を展開しているのが株式会社コラントである。
創業者である代表取締役の堀雅利氏は、数々の挑戦を経て、その他にもさまざまな事業を築き上げ、困難を乗り越えながら常に新しい価値を生み出してきた。そんな同社の設立の経緯や、次世代を見据えた挑戦についてお話をうかがった。
挑戦から生まれた独自の商品開発
ーー設立に至った経緯を教えてください。
堀雅利:
10代、20代のころ、道路工事、飲食店の厨房、レストランのホール、トラックの運転手など、いろいろな職種を経験してきました。車、自然、ダイビング、ツーリングなど、趣味や好きなこともいろいろありました。
その中で、自分の好きなもので人々に喜んでもらえるサービスを提供したいという思いが強くなっていったのです。そのためには、自ら発案し、行動に移して世の中に広める立場になる必要があると考え、起業を志しました。
まずは、ものづくりを学ぶために、自動車用部品の会社に入社し、業績不振の部署の改善や営業、企画開発、広報など、幅広い業務を経験しました。その後会社を退職し、幼い頃から好きだった「自然」に関する事業を立ち上げることにしたのです。
ーー事業を始めるにあたって、苦労はありましたか。
堀雅利:
コケの生えにくい水槽の開発を試みましたが、当初は仕入れ先に相手にしてもらえず、資金も足りない状況で、全く採算が合いませんでした。そのため、水槽本体ではなく部品に視点を切り替え、水槽用のLEDランプの開発に注力しました。しかし、こちらも大きなコストがかかってしまい、苦しい状況が続きました。
そこで、車好きであることを活かし、水槽用LEDランプの技術を応用して、車のランプを製造する事業を始めました。これが幸いにもヒットしたのです。全国を1人で奔走して営業活動を行い、少しずつ仕事を増やした結果、従業員数も徐々に増えていきました。
その後も、主力工場が火災に見舞われて1年半も製造ができなかったり、為替変動の影響に悩まされたりといった困難に直面しました。しかし、時代の流れに合わせて事業を柔軟に変化させることで、これらの局面を乗り越えてきました。
お客様のニーズに応える事業展開

ーー現在の事業について、具体的にお聞かせください。
堀雅利:
自動車用パーツ事業をはじめとして、他にも食品事業、ゴルフ用品事業、ペット事業、コスメティック事業など多岐にわたります。いずれも、持っている知識や経験を活かし、お客様の困りごとを解決することを目的に事業展開してきました。
ペットフードと食品の通信販売は、お客様の「安価で栄養バランスの良い、安心安全な食品を提供してほしい」という声に応える形で始まった事業です。一般的な流通経路では、商品が消費者に届くまでの時間が長いため、鮮度が落ちやすいだけでなく、流通過程でのマージンが価格に影響を与えることがあります。
これに対し弊社では、ネット販売を通じてお客様に直接商品を届ける仕組みを構築しました。この方法により、保存料を使用しない安全性の高い商品を、新鮮かつ安価で提供することを可能にしたのです。
ーーカー用品ブランド「Valenti」の魅力や強みについて教えてください。
堀雅利:
「Valenti」の最大の魅力は、純正部品では得られない付加価値を提供し、お客様のオリジナリティへのこだわりを形にできる点です。デザイン性に優れているだけでなく、革新性の高い技術を採用していることも特徴です。
業界初となる「LEDウインカー搭載テールランプ」や、「シーケンシャルウインカー」などの製品技術は、安全性や視認性を向上させると同時に、車両の外観に独自の個性を加えます。さらに、すべての製品は自動車の保安基準を満たしており、お客様に安心感を提供しています。多様な車種に対応する幅広いラインアップにより、お客様のさまざまなニーズに応えられることも大きな強みです。
全ての関係者の幸せを追求する経営理念
ーー事業拡大に向け、どのような取り組みをしていますか。
堀雅利:
最近は海外のお客様からの引き合いも増えているため、現地のニーズに応える製品を提供することで、グローバル市場での価値創出を目指します。それぞれの国の文化やアイデンティティを深く理解しながら、自分たちらしさを活かした商品開発と提案を進めていく方針です。
また、新商品の開発にも注力しています。最近では、事故防止のためにタクシーの後部座席のシートベルト未装着時に、音で警告するシステムを開発しました。多くの人の声を反映して、社会に貢献できる製品の開発を目指します。
ーー最後に、事業に対する思いをお聞かせください。
堀雅利:
従業員・仕入れ先・顧客問わず、関わる人々を幸せにできるかどうかを一番に考えることが、経営者の役目だと考えています。顧客にとっての最善を尽くすことは、どの企業においても基本ですが、自分たちが楽しく仕事に取り組めているかという点も重要視しています。私が生まれ育った岐阜から、世界に誇れるもの、人々に喜んでもらえるものを発信し続けていきたいと思っています。
編集後記
柔軟な発想と行動力で事業の幅を広げてきた堀社長。一つの分野にとどまらず、顧客のニーズを起点に価値を創造する姿勢が際立つ。また、「関わる人々を幸せにすることが経営者の役目」という、堀氏の考え方は特に印象深い。
顧客の満足だけでなく、従業員や取引先を含めた「共存」を重視する経営哲学が、多様な事業の成功を支えているのだ。岐阜から世界へ、枠を超えた挑戦を続ける株式会社コラントが、さらなる価値を生み出すことを大いに期待したい。

堀雅利/1973年、岐阜県生まれ。食品業界や自動車アフターパーツ業界での経験を経て、2007年に株式会社コラントを創業。2022年には「ValentiUSA」としてBtoCのECサイトで北米進出し、販売を強化するなど、グローバルな展開にも余念がない。