※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

建設業界で80年の実績を誇る株式会社ソネック。兵庫県を拠点に、病院や福祉施設、工場など幅広い建築工事を手がける同社は、確かな施工品質と綿密なアフターフォローで顧客からの厚い信頼を築いてきた。

近年はベトナムでの現地法人の設立や環境配慮型の農業事業への参入など、新たな挑戦も進めている。2022年に代表取締役社長に就任した山本貴弘氏に、人材育成を軸とした経営戦略と今後の展望についてお話をうかがった。

突然の社長就任と向き合い、自らの経営スタイルを模索

ーーソネックに入社した当時の状況について教えてください。

山本貴弘:
1993年の入社当時、24人の同期のうち私だけが文系でした。建設会社は専門職採用が主流で、文系の採用自体が珍しい時代だったのです。現場志望で入社したものの、いきなり営業部への配属となり、さらには地元から離れた名古屋支店への勤務を命じられました。

建設業の営業として、商品を持たずにお客さまのところへ訪問することは私にはとても難しく、具体的な案件がない中で将来の建設ニーズを見据えた提案を考えたり、営業時の話題づくりをしてみたりとお客さまとの関係構築に試行錯誤する毎日でしたね。その後、神戸支店への異動となり、結果的に現場経験のないまま営業一筋でキャリアを積むことになりました。

ーー社長就任時の心境をお聞かせください。

山本貴弘:
社長就任は突然のことだったので、右も左もわからない状況でした。財務や経理など、これまで経験したことのない領域の知識不足を感じて苦労しましたね。工事は現場に任せられますが、経営に関しては自身が舵取りをするしかありません。

しかし、決裁権を持ってからは、これまで見たことのないような会社の課題や長年築いてきた案件に触れる機会が増え、視野が広がったように感じています。まだまだ学ぶべきことは多いですが、知識を増やしながら自分なりの社長像をつくっていきたいと考えています。

技術と人間力の両輪で築く、お客さまからの揺るぎない信頼

ーー貴社の事業内容について教えてください。

山本貴弘:
弊社は総合建設業として、主に関西圏と愛知県の名古屋エリアで事業を展開しています。建築が9割を占め、個人住宅以外のほぼすべての建築物を手がけています。特に兵庫県内では病院や福祉施設、老人ホームといった大規模施設で豊富な実績があり、工場建設なども含めて幅広い施工実績を重ねてきました。

おかげさまで近年は受注機会が非常に多く、これまでの実績が新たな案件へとつながる好循環ができています。新規のお客さまからもたくさんの引き合いをいただき、非常にありがたく思っています。

ーー貴社の強みはどのような点にありますか?

山本貴弘:
最大の強みは、「施工品質」と「人間力」の両立です。施工管理を主体とする弊社は、確かな技術力を持つ協力会社と連携して工事を進め、弊社の施工管理者が品質や工程を厳密に管理することで、高品質な施工を実現しています。

そうした協力会社との関係構築や施工品質の管理はもちろん、お客さまの細かなニーズにも丁寧に対応することが可能です。弊社の営業担当者や現場担当者がもつ高いコミュニケーション力によって、お客さまと協力会社の架け橋となるのです。

施工中の要望変更にも柔軟に応じられる体制をつくることで、引き渡し後もメンテナンスまで一貫してサポートできます。建てて終わりではなく、その後も継続的な関係を築けることが弊社の大きな特徴だといえるでしょう。

ベトナム進出と農業参入、80年企業の新機軸

ーー社長就任後、どのような改革に取り組みましたか?

山本貴弘:
私の信条は「楽しく仕事をしたい」ということです。自分自身が厳しい環境で働いてきた経験から、社員が楽しく、生き生きと働ける環境づくりを重視しています。技術的なスキルを学ぶ研修はもちろんですが、人間力の向上にも力を入れるようにしました。

10年前から始めたヒューマンスキル講座は、最初こそ専門のコンサルタントにお願いしていましたが、現在では先輩社員が後輩社員を教える形で自主運営されています。

また、今年の「創立80周年記念パーティー」の企画運営も社員に任せるなど、自主性を重んじた取り組みを進めています。さらに採用活動でも、「熱血リクルート部」を立ち上げ、現場の社員が企業ブースで直接説明を行うようにしました。これは10年後、20年後の会社を担う社員たちに、採用も自分事として捉えてほしいという思いからです。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

山本貴弘:
地元密着でしっかりと建物を建て、その後のメンテナンスまで一貫して対応するという基本姿勢は変わりません。その上で、新たな挑戦として農業分野への参入を始めました。霧の微細化技術を活用した、土を使わない環境配慮型の栽培方式を採用し、自社の機材センター跡地活用でトマト栽培に取り組んでいます。

これは営業活動の際に自社でつくったものをお客さまに贈りたいという発想から始まったもので、将来的にはわさびなど、他の作物への展開も検討しています。

また、ベトナム人エンジニアの採用も8年目を迎え、現在は12名が在籍しています。全社員の1割を占めるまでに成長し、今後は現地法人を通じて施工図の作成も手がけていく予定です。現在、年間1200枚ほどの施工図を外注していますが、その一部をベトナムで担えるような体制を整えつつあります。

将来的には現地での工事受注も視野に入れたグローバルな展開を目指しているため、企業の成長と社会貢献の両立を図りながら、新しい取り組みにチャレンジしていきたいと考えています。

編集後記

山本氏の「楽しく仕事をしたい」という信条。自身も営業時代にさまざまな経験を重ねてきたからこそ、社員一人ひとりの成長と働きがいを大切にする経営哲学が生まれたのだろう。その哲学は80周年の記念イベントの企画・運営を社員に任せるなど、具体的な形となって表れている。人を育て、人を活かす同社の今後が楽しみだ。

山本貴弘/1993年、兵庫県出身。京都産業大学経営学部を卒業後、株式会社ソネック入社。2020年取締役、2021年常務取締役を経て、2022年に代表取締役社長就任。