※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

コンクリートポンプ事業において、独自のスタイルで道を切り開き、業界トップクラスの規模に成長した小澤総業株式会社。同社を率いるのは、YouTubeチャンネル「令和の虎」への出演や、初の著書『テッペン、獲ろうか。中卒40歳・年商14億円経営者の失敗から学んだ「成り上がり論」』の出版でも注目を集める、異色の経営者・小澤辰矢氏だ。10以上の職を転々とした経験を経て、今やグループ4社を束ねるまでに至った小澤氏の人を惹きつけてやまない魅力と経営哲学に迫った。

天職に出会うまでの壮絶な道のり

ーー起業に至るまでの経緯をお聞かせください。

小澤辰矢:
出身は静岡県富士宮市ですが、高校は楽しくなくてすぐに中退しました。15、6歳のころに東京へ出て、お金もなかったのでガソリンスタンドで働きながら16歳で1人暮らしをスタート。その後はホストや建物の解体工、鉄筋工、土木の派遣、さらには金融業者と、本当にいろいろな仕事を転々としました。

もう一度ちゃんとした仕事に就こうと、18歳のときにハローワークで見つけたのがコンクリートポンプの仕事で、これが天職でしたね。自分の工夫や段取り次第で仕事が早く終わり、すぐに成果が見えるのが楽しかった。もともと車の運転や機械いじりが好きだったこともあり、夢中になりました。そこからはこの仕事一筋ですが、ポンプ会社だけでも7社は渡り歩いています。

ーーなぜ独立しようと思われたのですか。

小澤辰矢:
最後の会社では営業から経理、作業まで全てをこなし、会社を大きくすることに貢献しました。しかし、会社の規模が大きくなるにつれて仕事が分散し、歩合制だった私の給料は下がってしまった。この矛盾に納得がいかず、同僚に「自分でやればいいじゃん」と言われたことで目が覚めました。「その通りだ!」と思ったのです。24歳のときにポンプ車を1台購入し、2007年に小澤総業株式会社を設立しました。

事業の強みと、世界が注目する新製品の開発

ーー貴社の事業内容と強みを教えてください。

小澤辰矢:
私たちの主力事業は、建設現場でコンクリートを圧送するコンクリートポンプ事業です。強みは、まずご依頼をいただいたからには「仕事を断らない」ことを徹底している点です。そして、全国3位のポンプ車保有台数を誇る抜群の機動力です。かつての建設業界は職人気質で、横柄な対応も珍しくありませんでしたが、私たちは社会人としてのマナーを守るなど、当たり前のことを当たり前に実行し、信頼を勝ち取ってきました。特徴的なデザインのポンプ車でブランディングも行い、今では営業担当者がいなくても仕事が舞い込む仕組みができています。

ーー次々と新しい商材を開発されていますね。

小澤辰矢:
コンクリートポンプ事業は、実は利益率が高いビジネスではありません。社員の給料をもっと上げたい、その思いを実現するために、自分で新しい収益の柱をつくるしかないと考えました。そこで生まれたのが、食品として使われる物質でできているにもかかわらず、排出されるごみはほんのわずかである生コン先行剤「エコスル」シリーズや、世界中から問い合わせが殺到している透水性コンクリート「Dotcon(ドットコン)」です。コンクリートに穴を開けて水を浸透させるという、ありそうでなかった盲点を突いた製品で、これがとてつもない反響を呼んでいます。

365日、応募が絶えない組織づくり

ーー採用には困らないとうかがいました。

小澤辰矢:
ありがたいことに、求人への応募は365日、絶え間なくいただきます。最近は少し減っているといっても週に2、3件は応募がありますね。YouTubeや書籍を通じて、私の考え方や生き様を発信していることが大きいと思います。弊社は外国人採用もしておらず、オールジャパンです。人が集まらないといわれる建設業界ですが、弊社は人材の確保には困っていません。

ーー今後の組織づくりについては、どのようにお考えですか。

小澤辰矢:
正直、今までは私が一人で突っ走ってきたので、管理職が育っていないのが課題です。これからは、私が現場から少しずつ離れ、採用したメンバーに仕事を任せて、みんなに成長してもらうフェーズだと考えています。会社の組織化に本気で取り組み、私がもっと新しい事業や発明に集中できる環境をつくっていきます。

100億円企業、そして「日本一の児童養護施設」へ

ーー今後の事業の展望についてお聞かせください。

小澤辰矢:
「Dotcon」の事業が本格化すれば、2、3年以内に100億円企業になるのは間違いないと確信しています。すでに韓国やスイスへの輸出も始まり、世界中から問い合わせをいただいている状況です。この流れを加速させるためにも、組織体制の強化が急務です。私自身は、もっとさまざまな会社の商品開発を手伝ってみたい、私の発想力を試したいと考えています。

私の目標は「世界一貧しい大統領」として知られたウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領です。稼いだお金で贅沢をしたいとは思っておらず、趣味は仕事です。では、何のために稼ぐのか。それは「日本一の児童養護施設をつくる」という大きな夢のためです。この夢を叶えるために、私はこれからも稼ぎ続けます。

編集後記

型破りな言動と、社会貢献を目指す利他的な精神。小澤氏の人間的魅力は、この両極端な側面の共存にあるのかもしれない。数々の修羅場をくぐり抜けてきた実体験から放たれる言葉の重みと、未来の子どもたちのために稼ぐという純粋な目標。そのギャップが強烈な引力となり、業界や常識の枠を超えて人を惹きつける。小澤氏の挑戦から、今後も目が離せない。

小澤辰矢/1982年11月4日、静岡県富士宮市生まれ。中学校を卒業後に上京。19歳のときにコンクリート打設の仕事に出会い、24歳でコンクリートポンプ車を1台購入し独立。2007年に「小澤総業株式会社」を設立し事業を拡大。現在全国第三位までに成長させ、小澤総業株式会社のほか、PUMPMAN株式会社をはじめとする4社の経営を手掛ける傍ら、YouTube出演や執筆活動も精力的に行う。2024年3月には初の著書『テッペン、獲ろうか。中卒40歳・年商14億円経営者の失敗から学んだ「成り上がり論」』(KADOKAWA)を出版。