※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

阪神淡路大震災をきっかけに、残光形蛍光ランプ「ホタルック」を開発するなど、人々の「安全、安心、快適」を実現する企業理念を掲げる株式会社ホタルクス。同社は、日本電気ホームエレクトロニクス株式会社(のちのNECライティング)としてNECグループの中で70年以上、照明事業を展開してきた。

2019年に株式会社ホタルクスとしてグループから独立した際に、代表取締役社長に就任したのが山村修史氏だ。山村社長に同社の強みや展望を聞いた。

20億円以上の生産ラインを導入。「人生で最も熱を入れて取り組んだ経験だった」

ーーまずはご経歴について聞かせてください。

山村修史:
NECグループの新日本電気株式会社から内定をもらった冬、同社が日本電気ホームエレクトロニクスと関西日本電気に分かれることになり、最終的に日本電気ホームエレクトロニクスへ入社しました。

入社を決めた理由は、半導体などの部品をつくる関西日本電気より、商品そのものをつくる日本電気ホームエレクトロニクスに興味を抱いたからです。高専では機械工学を専攻しており、学んだことが活かせると思ったことも理由の一つですね。

1984年に入社してから約24年、滋賀工場で蛍光ランプの生産技術に関わってきました。そして2019年、NECグループから事業を継承し、株式会社ホタルクスが独立。その際に社長に指名され、就任を決意したという流れです。

「水銀に関する水俣条約」に基づき、蛍光ランプの製造・輸出入は2027年末に禁止されることが決まっていますが、自分が今まで携わってきた商品の終わりを社長として見届けられることに、感慨深いものを感じました。

ーー入社後、印象に残っているエピソードはありますか。

山村修史:
30歳くらいのとき、20億円以上する蛍光ランプの新しい生産ラインを1年ほどかけて導入しました。生産ラインを初めて動かす際は、当時の日本電気ホームエレクトロニクスの社長が工場へ訪れ、機械の稼働ボタンを押してくださるなど、非常に大きな期待が寄せられていました。

しかし、いざ稼働してみると、でき上がった商品は不良品だらけ。ガラス管の割れに外気が入り込み、点灯できない状況にあったのです。そこで、改めてさまざまな調整を行う必要があり、不良品と良品の仕分けなども行いながら、数か月かけて正常な商品をつくれるようになりました。

大変な時期ではありましたが、設備の導入から後処理まで関わることができたことは非常に貴重な経験で、今までの人生の中で最も熱を入れて挑戦できた時期だったと思います。

安全、安心、快適に貢献する商品を開発

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

山村修史:
弊社は照明の開発・販売一筋で成長してきた会社ですが、最近はほかにも光の波長を活かした商品を手がけています。その一つが、紫外線を照射することでチャバネゴキブリを殺虫・駆除する「光殺虫器」です。

紫外線や赤外線などの波長には多様な活用方法があり、上手く活用することで社会の安全、安心、快適に貢献できます。今後はこの分野を強化し、光の波長効能を組み込んだ商品の開発に力を入れていく予定です。

ーー商品開発の強みや特徴はどういった点にありますか。

山村修史:
お客様の「こういう商品がほしい」に応えている点が、弊社の商品の強みです。お客様の要望に応えるため、どのような形でどのくらいの範囲を光らせる照明がほしいのかなど、商品開発の際はクライアント様と1対1で詳しい話を聞くようにしています。

また、光の質に工夫を施していることも、お客様から高く評価されている点です。弊社のLEDシーリングは照明の配光全面を均一に照らし、部屋の隅々まで光が届くようLEDのひとつひとつに光を拡散するレンズを採用したり、カバー形状も丸みをもたせるなど、こだわりの商品設計となっています。このようなお客様のニーズを理解したうえで商品開発ができる点も、弊社の強みです。

加えて、弊社の商品の一つに、内蔵バッテリーで非常点灯する「停電時非常点灯機能」が搭載された「防災用シーリングHotaluX AID(ホタルクスエイド)」があります。この商品は、停電時でも最大20時間ほど点灯し続けることが可能です。人々の安全に貢献する商品を手がけている点も、弊社の特徴といえるでしょう。

蛍光ランプの製造廃止に備え、新たな事業の芽を育てていく

ーー今後の注力テーマを教えてください。

山村修史:
今後は、生産拠点の国内回帰トレンドを見据え、工場の生産技術を活かしたEMS(電子機器の受託生産)事業を、OEM(他社ブランド製品の製造)やODM(委託者のブランドで製品を設計・生産)などで拡大したいと考えています。そのための体制づくりとして、親会社のウイルテックグループ内にEMSプロジェクトを立ち上げ、営業・技術・ものづくりの3つのグループが稼働しています。

たとえば技術グループでは、今自分たちにどのような技術が不足しているのか、不足している技術をどのように強化するのか、必要な知識と経験を持つスペックの人材をどうやって採用・育成するのかなどを検討しているところです。

また、ものづくりは不良品をいかに減らすかが大切です。不良品を出さないよう心がけながら、今後も社員たちとともに生産品質をより良くすることに務めていきたいと思います。

そのほか、採用にも力を入れていきたいと考えています。これまでスポーツなど、何か一つのことに集中し、目標を持って取り組んできた方が来てくれると嬉しいですね。実際に弊社ではそういった人材が活躍していますし、入社後は即戦力になってくれると期待しています。

ーー最後に今後の展望をお聞かせください。

山村修史:
先ほども話した通り、2027年末から蛍光ランプ事業の売り上げが無くなっていくため、蛍光ランプの売り上げの分をどう補うかが問題です。今後は特にEMS事業でOEM・ODM商品をしっかりと製造できる体制を構築し、3年後には商品を製造・販売ができるフェーズに入っていきたいですね。

また、空港の滑走路にある、航空機に着陸地点・方向を知らせる航空灯の「EFAS(航空機着陸誘導閃光装置)」は、国内に関しては弊社がすべてを担っています。このEFASを2030年までにすべてLED化することを政府が計画しているので、弊社も商品の提供を通して、この計画の達成に貢献していきたいと考えています。

編集後記

今回取材で聞いた製品以外にも、話しかけるだけで生活家電を操作できるリモコン「しゃべリモ」など、同社はユニークな発想を取り入れた製品を開発している。こういった商品の開発背景には、顧客が真に求めているものを常に追い求める、徹底した顧客目線があるのだと取材を通して感じた。同社が「照明の会社」という枠組みを飛び越え、消費者が驚くような新たな商品を世に送り出してくれるのが楽しみだ。

山村修史/1963年、奈良県出身。奈良工業高等専門学校卒業。1984年、NECグループだった日本電気ホームエレクトロニクス株式会社に入社。24年間の滋賀工場での蛍光ランプの生産技術・技術開発業務を経て、マーケティング部に移籍。以降、本社勤務。2019年、NECグループからカーブアウトした株式会社ホタルクスの代表取締役社長に就任。