
北九州市を拠点に、ソフトウェア開発や通信インフラ整備、さらにはスマート工場化支援まで幅広いサービスを手掛けるミシマ・オーエー・システム株式会社。同社の強みは、課題のヒアリングからハードウェアの提供、ネットワークの設計・構築、そして運用・保守まで、一貫して自社で対応できる体制と、地域に根ざした事業展開だ。さらに、成長戦略としてM&Aを活用し事業領域を拡大。
また、地元大学や高専との連携による学生アルバイトの育成や、社員一人ひとりが活躍できる働きやすい環境づくりなど、柔軟かつ先進的な取り組みを展開している。今回は、代表取締役社長の溝田力三氏に、企業の成長を支える取り組みの背景と、地域とともに歩む未来へのビジョンをうかがった。
ワンストップサービスで顧客の課題を解決
ーー貴社の事業内容と強み、注力しているポイントを教えてください。
溝田力三:
弊社は北九州市を拠点に、データセンター運営、Web・制御系ソフトウェア開発、通信インフラ整備、電気通信工事など多岐にわたるサービスを提供しています。特に、IoTやAIを活用したスマート工場化支援に注力し、製造業の課題解決を支援しています。
弊社の強みは、課題解決を一貫して提供できる体制です。たとえば、製造業のお客様からの工場効率化とセキュリティ向上の依頼に対し、ハードウェア提供、ソフトウェア開発、ネットワーク設計、現場のインフラ整備まで、すべて自社で完結しています。このワンストップ対応は、多くのお客様から高く評価されています。
また、新技術の研究開発にも注力し、地元の高専と連携して、次世代技術の実用化を目指すプロジェクトを推進しています。その一環として取り組むのが、製造業の現場で使用されるIoTデバイスやAIを活用した生産管理システムの開発です。
具体的には、工場内の設備稼働状況をリアルタイムで可視化し、生産性を向上させるソリューションを構築しています。この取り組みにより、北九州市内の中小製造業向けに低コストで導入可能な最新のシステムを提供することを目指し、ものづくりの街である北九州市全体の底上げに寄与したい考えです。
また、この活動は当社の技術力と信頼性を高めるだけでなく、地域に根差した企業としての存在意義をさらに強化していると感じています。
挑戦を続ける地域密着型経営
ーー地域密着型の企業として、どのような経営戦略を展開されていますか?
溝田力三:
弊社は、変化し続ける市場環境に適応するために「挑戦」を経営の中核に据え、その一環として、技術力の強化や既存事業の深耕、新規市場への進出に取り組んでいます。単に事業領域を広げるだけでなく、既存の事業に付加価値を与え、お客様により高いレベルのサービスを提供することを目指しています。
特に、ユニティ・ソフトがグループへ加わったことは成長に寄与しました。大規模案件にも対応可能な開発力を獲得し、社員の技術スキルが向上したのです。その結果、現在では、ソフトウェア部門が全社売上の約4割を占めるまでに成長しています。
また、社員が働きやすい環境の整備も重要な経営戦略の柱です。社長就任後、賞与制度を見直し、利益を社員に還元することで働く意欲の向上を図りました。さらに、準フレックスタイム制やテレワークの導入により、家庭やプライベートを重視しつつ仕事に集中できる環境を整備しています。
ーー社長としてどのような挑戦を続けていますか?
溝田力三:
「未来の当たり前を“今”、やってみる」という経営理念を掲げ、常に新しい市場や技術への挑戦を続けています。前述したとおり、地域との連携を重視し、地元高専との共同研究でAIを活用した製造現場の効率化技術や、スマートファクトリー向けの新製品開発に取り組んでいます。
加えて、国の補助金を活用し、新技術を実用化するプロジェクトも進行中です。これらの取り組みによって、単なる売上拡大にとどまらず、地域経済の発展にも寄与することを目指しています。
持続可能な成長を支える人材環境づくり

ーー学生アルバイトの取り組みについて詳しく教えてください。
溝田力三:
弊社では、新卒採用を強化するための取り組みとして、学生アルバイトの活用に力を入れています。北九州工業高等専門学校や近隣の大学と連携し、ITやエンジニアリングを学ぶ学生たちに実務経験の場を提供しており、現在、5名の学生アルバイトがITシステム開発やデータセンター運営などのプロジェクトに参加しています。
彼らには単なる補助作業を任せるのではなく、実際の業務で責任を持たせることで、実践的なスキルを身につけてもらっています。この経験を通じて会社の業務内容を深く理解し、卒業後に正社員として活躍してくれるケースも増えていますね。
たとえば、データセンターの設計補助を担当したある学生は、その後、正社員として正式に採用され、現在はプロジェクトリーダーとして成果を上げています。この取り組みが地域の人材確保に大きく貢献し、地元の10代や20代を支える社会貢献にもつながっていると思っています。
ーー女性社員の活躍について、どのような環境整備を行っているのでしょうか。
溝田力三:
IT業界や製造業における女性エンジニアの割合と比較すると、弊社の社員は約4割が女性と非常に高水準です。特にエンジニア職では多くの女性が第一線で活躍しており、女性が長期的に働ける環境づくりに注力してきた成果だと自負しています。
たとえば、育児休暇の取得促進や時短勤務の導入など、ライフステージに応じた柔軟な働き方を推進することで、育児や介護といった家庭の事情を抱える社員も、キャリアを継続しやすい環境を整備しました。
これらの取り組みが奏功し、社員の離職率は非常に低く、勤続10年以上の社員が大半を占めています。長期間働ける環境を整備することで、社員一人ひとりのスキルや経験が蓄積され、それが会社の成長に直結しています。
DX推進と地域経済への貢献を目指して
ーー今後の展望についてお聞かせください。
溝田力三:
弊社のビジョンは、地域と全国をつなぐ架け橋であり続けることです。その実現に向け、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と、人材の育成に注力していきます。具体的には、専任の教育担当者を増員し、地元企業向けのデジタル化支援を強化する計画を進めています。
ーー経営者として、どのような使命を大切にされていますか?
溝田力三:
社員が挑戦し続けられる環境を整えることも、経営者としての重要な使命だと考えています。社員一人ひとりの成長が企業の成長につながり、その結果として地域社会への貢献も広まると確信しています。
編集後記
「未来の当たり前を“今”、やってみる」という理念を掲げ、常に挑戦を続ける溝田社長。その言葉から、地域と社員、そして未来を見据えた事業運営への強い決意が伝わってきた。学生アルバイトを活用した新卒採用や、女性社員が働きやすい環境づくりなど、持続可能な成長を支えるための取り組みは、他企業にも参考となるだろう。
さらに、地元高専と連携した新技術開発など、地域密着型企業としての使命感も明確だ。地域の未来を照らすリーダーとして、そして業界の発展を牽引する存在として、同社の今後の活躍に注目したい。

溝田力三/1972年福岡県北九州市生まれ。1992年ミシマ・オーエー・システム株式会社へ入社後、営業部門を経て、2017年に代表取締役社長へ就任。営業経験で培った地域内外の人的ネットワークを事業へ活用し、「誰も想像していないステキなことを創造して 未来の当たり前を“今”、やってみる」を経営理念に社員誰もがチャレンジできる社内環境作りを行っている。2020年北九州工業高等専門学校客員教授へ就任。