※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

株式会社トゥモロー・ネットは、AIプラットフォーム全体のサービスから累積6万台以上のインフラソリューションの販売・保守サービス実績を誇る会社だ。システム設計から導入までワンストップでサポートする万全の体制を整え、データセンターや研究機関、映像メディアなど、多種多様な顧客の要望に応じた「一点もの」のソリューションでお客様の課題を解決している。

同社を牽引するのは、代表取締役社長の李昌珍氏。「日本に憧れがあった」という理由で来日し、今では日本で会社を経営するまでに至った同氏に、人材への考え方や事業の詳細、今後のビジョンなどを聞いた。

日本のカルチャーが好きで来日。短期滞在から仕事へと発展

ーー創業の経緯を聞かせてください。

李昌珍:
2000年に韓国から来日したのは、もともとJ-POPが好きで日本に憧れがあったのが理由です。さらに日本に1年ほど滞在してみて、「ここで仕事がしたい」と思うようになりました。

来日後しばらくはホームページを立ち上げたり、妻の実家の家業を手伝ったりしていましたが、2000年頃から始まったITバブルをきっかけに、ITの仕事に本格的に挑戦したいと思い始め、まずは会社員として医療システムのSEを経験してから、2005年にトゥモロー・ネットを起業しました。

起業後に東北大震災を経験し、社会が落ち着かない中でも納品を間に合わせ、お客様からとても感謝されたことは今でも私の糧になっています。どんな状況であっても、任された仕事をしっかりとこなすことで、お客様から信頼を勝ち取ることができるのだと学びました。

AIサービスとAIインフラの2軸でAIプラットフォーム事業を展開。成長著しい東南アジア進出も視野に

ーー事業内容を教えてください。

李昌珍:
弊社の強みはAIプラットフォームをインフラ、プラットフォーム基盤、AIアプリケーションとそれぞれのユーザーインターフェースを全て提供できるところにあります。

主に2つの事業を展開しており、1つがインフラの販売と保守サービスです。販売の際は、お客様のご要望と状況を把握した上で、最適なソリューションを組み合わせる「ハイブリッド提案」をしています。

創業当時の2005年頃は、アメリカでAWS(アマゾンウェブサービス)が始まり、日本でクラウドという概念が出始めた頃です。弊社はこの分野に注目し、非常に早い段階で事業に参入しました。

もう1つの事業は、AIコミュニケーションサービス領域です。自社で開発したナビゲーション型対話AIサービス「CAT.AI(キャットエーアイ)」を2022年より展開しています。

これは企業のAI対応をサポートするAIコミュニケーションプラットフォームで、視覚(チャット)と聴覚(ボイス)を組み合わせてお客様の課題を解決する「CX-BOT」や、生成AIと連携してより自然な会話ができる「GEN-BOT」など、顧客とのコミュニケーションを円滑にする多様な機能を搭載しています。

CAT.AIは製造業やエネルギー業界、損害保険業などのエンタープライズ企業から地方自治体まで、人々の生活を支える業界を中心に採用されており、「人に代わるAI」ではなく、「コミュニケーションを豊かにする、人と共存するAIサービス」として幅広く活用されています。

ーーそのほか、貴社のサービスはどういった点に強みがありますか。

李昌珍:
インフラに関しては、初期不良などのトラブルが起こったとき、迅速に駆けつけてサポートできる点が強みです。長年蓄積してきた経験とノウハウがあるので、あらゆるトラブルに対して適切な解決方法を提案できます。

AIサービスでは、テキストのみ、あるいは音声のみではミスが生じやすくなりますが、両方を掛け合わせた自社開発のCXマルチモードAIを活用することで、ストレスの少ないナビゲーションを実現できます。

そのほか、ハードウェアの知見を活かして行う適切なシステム設計や、さまざまなAI関連技術を融合した開発能力などが強みです。専門のデザイナーがそれぞれの企業に合ったAIコミュニケーションをデザインするので、お客様側にAIに関する専門的な知識がなくても心配いりません。

ーー今後の展望を聞かせてください。

李昌珍:
1つ目は、AIを活用したクラウド基盤の製品化です。弊社のお客様には大手企業が多いのですが、今後は小規模な生成AIサービスも搭載しながら、中小企業でも使いやすいラインナップの製品をそろえていきたいと思っています。

2つ目は、社内システムのセキュリティと生産性の向上です。たとえば社内システムのセキュリティに関してはウイルス攻撃されたときの対策を強化すること、生産性の向上に関しては名刺をシステムで管理して見やすくするなど、きめ細かいサービスも考えています。

そして3つ目が海外展開です。海外展開に関しては、成長率の高い東南アジアをターゲットにしています。海外への投資も現在拡大しており、「CAT.AI」はマレーシアやインドネシア、シンガポールなどからも引き合いがきています。

「技術も顧客目線も大切」ベンチャー気質を忘れずに業界を牽引したい

ーー貴社の理想とする人物像を教えてください。

李昌珍:
行動力がある、自分で道を切り開ける、想像力がある、スピード感がある、コミュニケーション能力が高い、といった人に来てもらえると嬉しいです。このような人材は、弊社での仕事にきっとやりがいを感じていただけるはずです。

弊社の仕事は時間や場所に拘束されず、在宅で働くこともできます。自由度が高いため、自ら判断して自発的に行動できる人が活躍しやすい環境が整っています。会社としても、社員がモチベーションを維持し、やりがいを持って働ける環境を提供したいと考えています。

ーー最後に社長の夢をお願いします。

李昌珍:
2025年の2月に創業20周年を迎えましたが、会社を創業したときと気持ちは変わっていません。ベンチャー気質を忘れず、業界を牽引できる企業を目指して前進していきます。技術ももちろん大切ですが、技術だけに執着せず、顧客目線を持つこと。お客様にどのような価値や体験を与えられるかという点を、今後も大切にしていきたいです。

編集後記

同社が成長を続けられる理由は、技術力の高さだけではない。顧客目線に立ったきめ細やかなサポートが、企業からの信頼を勝ち取る大きな要因なのだと取材を通して感じた。AI技術を活用して業務効率化を進めたいけれど、何から始めたら良いか分からないという企業は国内外に少なくない。

ITとAIを駆使するトゥモロー・ネットは、こうした悩みに応える、まさに時代の流れに乗った会社だ。同社の開発した製品が日本はもちろん、多くの国で必要とされ、世界にインパクトを与える日もきっと遠くないだろう。

李昌珍/2000年に来日後、SI企業でエンジニア職に従事。2005年に株式会社トゥモロー・ネットを設立し、代表取締役に就任。クラウドコンピューティング事業、SDI事業を立ち上げ、経営を安定化。2022年にAIプラットフォーム事業を設立し、新規AIサービス「CAT.AI」をリリース。