※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

株式会社Hexabaseは、迅速なアプリ開発と効率的なシステム運用を実現するクラウドプラットフォーム「Hexabase(以下、ヘキサベース)」を提供するIT企業である。エンジニアの開発を楽にし、企業のDXに貢献するIT界の至宝が生まれた背景になにがあるのか?2016年に同社を創業し、開発の立役者となった代表取締役CEOの岩﨑英俊氏に、プロフィールや経営ビジョンについて聞いた。

莫大なコストをかけなくても高機能な法人向けソフトをつくれるはず

ーー社会人になって独立するまでの経歴をお聞かせください。

岩﨑英俊:
大学卒業後は法人向けのシステムをオーダーメイドで製作する会社に入り、開発エンジニアとしてキャリアをスタートしました。

在籍した15年の間に、周りがやってないことにチャレンジさせていただいたり、社内で新しいビジネスを興したりと、さまざまな経験を積ませていただきました。その一方で、かつて自分がつくったプロダクトが使いにくく、古くなっていくのを感じるようになったのです。

いろいろ手を打とうとしましたが、古くなったプロダクトを改善するには、ゼロから作り変えるしか手段はありませんでした。当時はすぐにプロダクト投資を実行することは困難な時期でした。そこで、自らの力で小さく始める方法はないか考え始め、徐々に起業への気持ちが強くなっていったのです。

ーー前職で感じた課題を、自ら起業して解決しようとしたのですね?

岩﨑英俊:
たとえば、かつて私がITキャリアを始めた頃、一般ユーザーがパソコンにインストールして使用する年賀状作成ソフトが流行っていました。この誰にでも使える高機能なソフトが数千円で買えるのに対して、自分がつくる法人向けのシステムは開発に1億円もかけていたのです。

今でこそこうした開発コストの感覚が一般的であることは理解していますが、入社当時の私は「このギャップはなんだろう」とモヤモヤした思いが強くありました。キャリアを重ねるにつれて世の中も進化し、クラウドという言葉と共に、様々な優れたモダン技術がオープンソースで利用可能になりました。

従来は実現困難だったシステムの操作性も、そうしたオープンソース技術を使いこなせば実現可能になりましたが、日本ではまだあまり活用されていませんでした。こうした優れた技術をもっと当たり前に活用し、かつてのモヤモヤを打ち破るため、自らが起業する選択肢を検討し始めていました。

その後押しとなったのは、現在CTOを務めるジョン・ポールとの出会いです。彼は当時からクラウドをはじめ、私が知らない技術をよく知っていました。ヘキサベースの基礎技術もポールが製作したものです。

殺伐とした業界の中で、彼は感覚的に楽しみながら仕事をするのが上手で、私もそんな姿を見るのが好きでした。私には作りたいプロダクトがあって、ポールは高い技術を本格的に活用したがっていました。2人一緒ならきっと素晴らしい開発システムがつくれると信じ、30代の終わりに起業へと踏み出したのです。

「ヘキサベース」でシステム開発の省力化とコストダウンが可能に

ーー「ヘキサベース」の特色や強みを教えてください。

岩﨑英俊:
ヘキサベースはシステム開発や運用にかかる多大な時間とコストを短縮できるプラットフォームです。高度なIT知識のない人でも本格的なモダンなSaaSアプリを設計できたり、特定ユーザーに限定したメニューが出てくるといった権限をコントロールすることができます。複雑なツリー構造の大規模な会社でもシンプルで見やすく、なおかつ詳細に権限管理を設定できることが強みです。

性能の高さを担保するのは、システムに使う共通部品です。この部品は、私が20年超のキャリアの中で経験してきた開発コンセプトを踏まえ、本質的に要となるパーツだけをピックアップしたものです。選りすぐりのパーツを共通機能とすることで、誰にでもクラウド型のアプリケーションが簡単に立ち上げられるのがヘキサベースの特長です。

ーー現在、AIの導入にも注力しているとお聞きしました。

岩﨑英俊:
生成AIが実用的になってきたこのタイミングで取り組んでいるのが、AIを駆使した融合型のシステム開発やITサービス運用です。システムに必要な要件定義を言葉で入れると即座に設計書が出て、アプリケーション開発を始められたり、AIが人に替わってシステムを運用し、ユーザーサポートも対応するといったサービスを開発しています。

従来のシステム業界の常識では、要件が固まるのにおよそ3カ月かかります。ところが弊社製品であれば、同じ工程がわずか3分でできるという優れものです。生成AIは急ピッチでIT業界をUpdateし、3〜4年後には、これが業界標準になるのではないでしょうか。

日本発ITシステムのグローバルブランド化に挑戦する

ーー求める人材像について教えてください。

岩﨑英俊:
弊社は海外在住のスタッフが多く在籍していますが、グローバル化をにらんで意識的にそのような構成にしています。国内の人材だけでなく、海外とりわけ英語圏のメンバーをどれだけチームに引き込んでグローバルに展開できるか、そうしたチームづくりをしてきた結果です。

私たちベンチャー企業としては、スタートアップ経験者の方のお力添えが必要です。欲をいえば組織内外のリソースを効果的に活用し、成長を支援する仕組みづくりに携わるスキルをお持ちの方が望ましいですね。

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

岩﨑英俊:
成長している国はIT投資が盛んで、リソースがそこに向かう流れがあります。国内市場もそれにならって、よりIT投資を活発化させるべきです。そして、グローバルの水準に追いつき、さらにクオリティを磨いてメイドインジャパンのシステムをブランド化して海外に出していくべきだと思います。

前述のAIとクラウドを融合させた新たな開発モデルは、それを目指して出した答えの1つでもあります。今後とも日本のIT産業を盛り上げていく意気込みで、プロダクト開発・経営に取り組んでいきます。

編集後記

岩﨑社長はクラウド業界にAIが台頭してきたことで、これまで以上にシステム開発のアップデートが加速すると読んでいる。「ターゲット層は10年前の技術を使っている中小規模の開発会社です。これは相当量のマーケットであり、スタートアップが入り込む余地は豊富にあります」ともコメント。

IT業界がパラダイムシフトともいえる変革期にある中、企業のDXも飛躍的に進む可能性がある。ヘキサベースがグローバル市場でも新たな地平を見せてくれることを期待したい。

岩﨑英俊/1976年生まれ、長野県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、システムの受託開発エンジニアとしてキャリアをスタート。数多くのシステム開発や新規事業の立ち上げを技術支援し、法人向けシステムの課題解決に注力。2016年に株式会社Hexabaseを創業。法人システムの圧倒的な技術の遅れを解消するためBaaS(Backend as a Service)開発プラットフォーム「Hexabase」を開発。AIとクラウドを融合させた新たな開発モデルでDXの推進を支援する。