
2018年に神奈川県横浜市で設立されたコスモバンク株式会社。リフォームした中古物件を収益用不動産として自社保有し、節税対策として顧客に売買・仲介している成長企業だ。代表取締役の穴澤勇人氏に、起業の経緯や事業の強み、今後の展望をうかがった。
収益不動産に見出した新境地。節税対策で富裕層のファンを獲得
ーーご経歴をお聞かせいただけますか。
穴澤勇人:
高校卒業後は田中貴金属工業に就職しました。同社にて工場勤務以外の将来について考える中で、個人で株や不動産投資を始めたことが起業のきっかけです。初めて購入した物件は、私自身が大工となってリノベーションしました。15年ほど前ですが、その当時は不動産投資は今ほどメジャーではなく、20代前半でもチャレンジしやすい時代背景があったと思います。
26歳の頃、収益不動産に特化した武蔵コーポレーションへ入社しました。その後、「経営者になりたい」というより、個人事業主では不可能であろう100億円規模の法人として「大家をやってみたい」と思い、30歳で独立したのです。
ーー事業内容を教えてください。
穴澤勇人:
メイン事業は家賃収入を目的とする収益物件の売買です。一般的な不動産会社が手をつけないような、耐用年数が切れた中古物件を買い取り、自社の職人たちによって外壁から内装までフルリノベーションします。物件は満室にした上で、節税したい富裕層のお客様に販売するほか、投資相談や物件の買取も承るというビジネスモデルです。
不動産業に付随して、パーソナルジムやシミュレーションゴルフ場も展開しています。また、お客様からの寄付と我々の自己資金を合せて物件を購入し、その賃料収入から半永続的な支援活動をしていく「コスモバンクマンスリーサポート」は、経済的困難にある子どもたちに向けた取り組みとしてスタートしました。
子ども食堂などに地産地消の食材を贈るプロジェクトをきっかけに、農家さんの厳しい現状を知ったことから、農業法人として、魚沼産コシヒカリの販売も始めました。今後も、様々な角度から社会貢献していきたいと思っています。
事業において大切にしていることは「義理人情」です。北陸の震災で被害を受けた、能登半島・穴水町のホテルを再建する過程で宿泊業も動き出しています。利益のみを追求するのであれば、弊社が農業や宿泊業をやる必要はないかもしれません。それでも、私たちには「地域の雇用を消してはいけない」という思いがあります。
ーー独自の強みもうかがえればと思います。
穴澤勇人:
弊社は、自分たちで常時1,300戸以上を保有し管理運営も自ら行う「巨大な大家さん」です。物件を管理する大家として、配管の状態やシロアリの有無、地盤強度など、気になるポイントは購入前にすべてリサーチします。そしてモノとして不安な要素をなるべく排除した状態で、お客様へ「本業以外の収入の柱」「高所得者にとっての税金圧縮のための装置」として物件をお売りするというのは、他社にはあまりない特徴かと思います。
調査による裏付けをもとに安心できる物件のみを購入し、お客様の資産形成をオーダーメイドで請け負うのがコスモバンクのスタイルです。お客様が物件を選ぶのではなく、不動産のプロがニーズに合った物件を提案することも、仲介業をメインとする他社との大きな違いだといえるでしょう。
私には物件を購入する際のこだわりがあり、富裕層を満足させられる知識と自信があります。利益を確実に出してコアなファンを生み出すことから、お客様はほぼ100%リピーターとなり、新規のお客様は1~2年待ちという状況が続いています。
基本は「元気・挨拶・誠実さ」誘導と見守りのバランスを保ち、優秀な人材を育成

ーー人材はどのように育成しているのでしょうか?
穴澤勇人:
本人の「やりたいこと」と「成果が出ること」は異なるため、新卒採用者には複数の部署を経験させ、私が仕事の向き・不向きを判断します。
社内はアットホームな雰囲気ですが、仕事のスイッチはON・OFFが明確です。部署によって十人十色なことから一律的な研修制度はなく、やる気があって自発的に動ける者に対しては私がマンツーマンでより手厚く指導します。約100名の従業員のうち、50名ほどが私の知り合いや社員の紹介で入社しているため、離職率が低いことも特徴です。
ーー社長が求める人物像もお聞かせください。
穴澤勇人:
学校教育の弊害か、「自己判断して怒られたらどうしよう」という意識が強く、言われたことしかできない人が増えたと感じています。私が一緒に働きたいと思うのは、自分で物事を考えて臨機応変に動ける人です。スポーツやアルバイトなど、物事を長く続けられることも一つの才能なので、面接時から重視しています。
子どもの頃に教わった「嘘をつかない」「しっかり挨拶する」といった、当たり前のことができていることも重要です。元気があって、挨拶ができて、嘘をつかない。言葉にするとシンプルに聞こえますが、結果を出す人ほどそれらを実行していると思います。
目標は「従業員に還元できる200億円企業」グループの建築業にも注力
ーー今後の展望をお話しいただければと思います。
穴澤勇人:
5年後には、グループ全体の売上が200億以上になると予想しています。ただ、数字だけを追うよりも、従業員の努力を給料にしっかりと反映する会社でありたいですね。
「リスクヘッジで基本給を上げない」「年齢で給与上限を設ける」といった企業では、従業員が明るい未来を見出せないと考えています。大変なことも多いけれど楽しく働けて、社員が「会社に貢献したい」と思える、持ちつ持たれつの関係が何よりも素敵です。
収益不動産業界は伸びしろがある一方で、建築業界は人手不足など多様な問題を抱えています。今後は若い職人を増やしながら、子会社の矢島建設工業を強化していく必要があるでしょう。企業が採用と育成に力を入れ、メンバーが一致団結していければ、業績は自然と伸びていくと思います。
編集後記
最初から経営者を志したわけでなく、「目の前のことに全力で挑み続けた先に今の形がある」と語った穴澤社長。「コツコツと物事を続けられる才能」が、収益不動産の仕組みにもマッチしていたのだろう。社長との距離も近いコスモバンク株式会社。未来ある業界で成長し続けたい人にとって、とても理想的な環境だ。

穴澤勇人/1987年、神奈川県生まれ。神奈川県立平塚工科高等学校を卒業後、田中貴金属工業株式会社に勤務。会社員のかたわら、株式投資・FX・不動産投資などさまざまな投資に取り組み、20代から資産形成を行う。その後、武蔵コーポレーション株式会社にて売買責任者を務め、年間で200棟・100億円超の収益用不動産(1棟アパート・マンション)の取引に従事。2018年、コスモバンク株式会社を創業。