※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

住宅業界の常識を変えるべく2008年に設立した「アーバンホーム」を住宅事業のブランドとして残し、2019年に株式会社アーバンライクに社名を変更。住宅事業に加え、不動産事業や福祉事業、リゾート開発事業など、さまざまな事業を展開している。

同社の代表取締役社長の吉野悟氏に、創業に至るまでの経験や事業展開への思いについて、インタビューを行った。

高校生時代から将来の起業を意識する

ーー高校生という早い段階でビジネスを始めたきっかけを教えてください。

吉野悟:
中学2年生のときに父を亡くしたので、私自身は高校に進学する気はありませんでしたが、母に言われて進学を決めました。裕福な家庭ではなかったため、中学卒業後すぐにアルバイトを始めました。しかし、アルバイトをしていることで停学処分を受け、そのことがきっかけで「自分で何か仕事をしてみよう」と考えるようになりました。

中学時代はバンドを組み、卒業後はDJをしていたのもあり、多くの音楽仲間を集めてライブイベントなどを主催することもありました。そのような経験が、私の“ビジネス”の始まりです。

住宅営業をしながら抱えていたジレンマ

ーーどのような理由から「住宅業界を変えたい」と感じたのでしょうか?

吉野悟:
23歳の時に工務店に就職して住宅の営業をしていました。業務としては、営業担当がお客様からヒアリングした家づくりのご要望を社内に持ち帰り、設計士が図面に落としこむという流れです。

しかし、設計士に要望が伝わりきらないことが多く、営業担当がプランニングまで関わらなければ、お客様の理想はかなえられないと感じました。また、図面の設計や修正があるたびにお客様とのやりとりが必要となり、無駄な時間がかかっていると感じていました。

一般的に、引き渡し後のお客様とはあまり関わらないケースが多いですが、私は「引き渡し後も積極的にフォローの動きをとることで、お客様を味方につけることができれば、むしろ私たちにとっての強みになるのではないか」と思っていました。

それらの経験のもと、自身が設立した会社では、いくつか業界内でも新しい改革を打ち出しました。たとえば、弊社では全営業スタッフ向けに、図面作成やプランニングもできるよう教育研修を行っています。そうすることで、初期対応から住宅のお引き渡しまで担当窓口を変える必要がなく、お客様の要望から外れずに家づくりを進めることができます。また、引き渡し後のお客様へのフォローにも注力しており、そうすることで密な関係が生まれ、結果的に「紹介」をいただくことも自然と増えました。これらは、今では弊社の強みになっています。

障がい福祉分野の課題解決に向けた取り組み

ーー貴社はさまざまな事業を展開していますが、その中でも福祉事業はなぜ始めたのですか?

吉野悟:
福祉事業を始めるきっかけになったのは、「障がい者福祉施設の建物をつくってほしい」という依頼が立て続けにあったことです。しかし、福祉施設をつくるには1億円以上の資金調達が必要になるケースが多いので、結果的には金融機関の融資がおりず、すべての案件が失注(契約を獲得できず、受注に失敗すること)となりました。

ニーズがあるにもかかわらず、事業開始に至らないことに課題を感じて現状を調べたところ、全国で何らかの障がいを持つ約900万人の方に対し、障がい者に対応した住宅の供給は5%程度であることを知りました。そこで、「物件のオーナーとオペレーションを行う福祉事業者を分けて考えよう」と思い、投資家と福祉事業者をマッチングする「Rashiku」という事業を始めました。

0から1をつくる、新しい挑戦を続ける

ーー新しい事業を展開するにあたって大切にしている考えはありますか?

吉野悟:
弊社は「0から1を」というビジョンを掲げており、新規事業を積極的に行っています。分野にはこだわらず、偶然の出会いやマーケットの状況を重視しながらトライアンドエラーを繰り返し、成長することを大切にしています。

ーー今後、新たな事業展開を予定していますか?

吉野悟:
現在、沖縄と福岡で新しいリゾート施設の展開を予定しています。コロナ禍以降はリゾート施設へのニーズの高まりを感じており、今までよりもハイデザインな施設をつくるために有名建築家とのコラボレーションを進めています。

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

吉野悟:
私たちの仕事は、建築不動産という手段で「空間をデザインする」ことだと思っています。そのために必要な事業を派生させながら、社会に必要とされる企業をつくっていきたいですね。そのための指標として、毎年130%以上の売上増加を目指し、10年以内に年商1000億円に到達したいと考えています。

編集後記

それぞれの事業のブランド価値を高め、「九州を代表する企業に成長したい」と語る吉野社長。現在、住宅市場は資材高騰により厳しい状況であるが、時代のニーズをキャッチして新しい道を切り拓く姿に力強さを感じた。

人々の暮らしをより豊かにするために、挑戦をやめないアーバンライクの今後の活躍と成長に注目だ。

吉野悟/1982年、福岡県大牟田市生まれ。高校卒業後、住宅会社で営業職として勤務。2008年にアーバンホームを設立し、2019年には社名を株式会社アーバンライクへ変更。代表取締役社長(現任)。