
IT専門調査会社、IDC Japan 株式会社の調査によると、日本のAIシステム市場の支出額は、2024年に1兆763億円となり、初めて1兆円を超える見込みだ。さらに、2023年から2028年までの年間平均成長率は30.6%で成長し、2028年の市場規模は2兆8911億円になる見通しだ。中でも、生成AIの市場規模は、2024年に1016億円となり、2028年には8028億円にまで拡大すると予測されている。
(※)出典:「2024年11月 国内生成AI市場は今後5年で8,000億円規模への成長を予測」(IDC Japan 株式会社)より
今まさに、急成長中の生成AIの技術を活用し、誰でも簡単にデータ管理や分析ができるツールを提供しているのが株式会社KiZUKAIだ。代表取締役CEOの山田耕造氏に、統計学や数学、プログラミングなどの専門知識がなくとも、データ分析ができるツールについてや、AIが台頭する中で人にしかできないこと、今後の展望をうかがった。
自分の極めたい分野はこれだ!必死に探し続けた日々
ーーこれまでの経歴をお聞かせください。
山田耕造:
学生時代から将来は起業しようと考えていましたが、具体的なテーマは決めていなかったため、まずは自分が興味を持てるテーマを探す目的で就職活動しました。そこで、起業に必要な営業力を身に付けるため、無形のソリューションで単価が高い商材を扱う株式会社ソフトクリエイトに入社したのです。
同社での業務の中で特に関心を抱いたのが、CRM(顧客管理システム)でした。特に、ソフトを納品して終わりではなく、その後の運用を継続して支援し、パートナーとして伴奏できる点に魅力を感じました。そして、この業務をもっと極めたいと思い、当時、その分野のリーディングカンパニーだった株式会社ベルシステムに転職しました。
転職後は、お客様からヒアリングした課題だけでなく、その背景にある潜在的な問題を想像・分析し、解決策を組み立てることに注力しました。社内のメンバーとも積極的に連携しながら課題解決に取り組んだ結果、トップセールスとして社内のMVPを受賞しました。良い思い出となり、現在の自信にもつながっています。
ーー起業まではどのような準備をしましたか。
山田耕造:
約1年間の準備期間を設け、午後10時までは会社の仕事をし、その後の2時間を起業準備にあてて毎日深夜に眠るという生活を続けました。起業後のビジョンを描くため、30人から40人の社長にアポイントを取り、構想している内容について説明してご意見をいただく、という活動を1年間繰り返しました。
データ加工と分析で課題解決もサポート

ーー貴社の事業について教えてください。
山田耕造:
弊社は「KiZUKAIツール」「コンサルティング」「KiZUKAIカスタマイゼーション」という3つの事業を展開しています。中でも主力サービスは「KiZUKAIツール」です。
強みは、生成AIを活用し、完全ノーコード(プログラミング不要でアプリケーションやWebサービスを開発できる仕組み)でデータの加工と分析を可能にする点で、データ分析の専門知識がなくても、簡単な指示を与えるだけで、月ごとの入会者数や売上データなどを即座にグラフ化できるのです。
さらに、ツール使用前のデータ整理や、データ分析後の改善策立案もコンサルティングサービスとしてサポートしています。開発力には特に自信があり、AIのアルゴリズム開発においても最先端の技術を誇るスタートアップとして成長を続けています。
ーー社内の雰囲気を教えてください。
山田耕造:
社内の雰囲気を一言で表すなら「青春」です。テクノロジーの急速な進化の中で、メンバーも試行錯誤を重ねながら舵取りを続け、ようやく方向性が一致してきました。展示会に2カ所出展した際にも、遠い距離にもかかわらず終了後に改めて集まって、互いに良かった点を挙げるという前向きな姿勢がとても印象的でしたね。
ーー組織として成長を支えるためには何を重視されていますか。
山田耕造:
成長を支える考え方について、私が重視しているのは次の3点です。まず1つ目は、「Hard Workより『Think Hard』」。つまり、長い時間働くのではなく時間内に自分の頭で必死に考え、行動することを重要視しているのです。私たちの目的は、生成AIを使うことで、エンジニアの余計な手間を不要にすることです。これまでの仕事が自動化される中で人間がすべきことは、考えて実行し、プロジェクトを運営する力や意思決定力を発揮することだと考えています。
2つ目は、「目的ドリブン志向」です。これは、変化の激しい業界だからこそ、社員それぞれが目的意識を持つということです。
3つ目は、「真のやさしさを追求する」です。これは、社名の由来にもなっている「気遣い」を重視しています。ただ優しい言葉をかけるのではなく、相手の状況や将来を考えた意味のある言葉を伝えるように、社員への意識づけを行っています。
より手軽に一人ひとりの課題を明確にできるデータ分析を目指す
ーー今後の展望をお聞かせください。
山田耕造:
現在のツールでは、生成AIが簡単に店舗の売上レポートなどを作成できるようになっています。この機能を活用し、店舗の売上レポートを月額数万円で提供できる小口のサービスを開発していきたいと考えています。
営業活動のレポートも、ルールをつくってデータを入力すると、生成AIが一人ひとりの課題を出せるようになります。パッケージとして出すことで、サービスの価格を下げて提供できると考えています。
人口減少社会の中で、これからも多くのことがAIに置き換えられます。弊社のビジネスモデルは属人化を撤廃して仕組みにしていくことなので、様々なことを仕組み化し、本来やらないといけないことに時間を使えるように貢献していきたいです。5年後には、「CX(顧客体験)」×「DX」といえばKiZUKAIだよね、と思われる存在になりたいですね。
編集後記
「データ分析が不得手」「データと改善策の整合性がとれていない」といった企業の悩みを解決する株式会社KiZUKAI。施策の立案から改善までワンストップで伴走してくれるコンサルティングサービスは、企業にとって心強い。さらに、山田社長が大切にしている「決められた時間内で考え、実行」を極めることで、AI時代が到来しても負けない人間力を身に付けられるだろう。

山田耕造/大学卒業後、2010年に株式会社ソフトクリエイトに入社。2013年には株式会社ベルシステム24に転職し、トップセールスとなりMVPを受賞。株式会社KiZUKAIを創業し、代表取締役社長CEOに就任。顧客のデータ分析を主軸に数多くの企業のデータドリブンマーケティングを支援。データ活用の運用ノウハウと最先端AIの技術力をもとにSaaSツール「KiZUKAI」の開発・提供を開始。日本のCXおよびDXの発展に取り組む。