※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

POSレジやはかり、包装値付機、食品加工システムなど、流通小売業界向けの機械を販売している株式会社中部テラオカ。中部エリアのスーパーや食品メーカー、小売店、工場など、幅広い施設に商品を展開。販売からメンテナンス、アフターフォローも万全なトータルソリューションサービスを提供している総合商社だ。

業績を順調に伸ばす同社は、一体どのようにして成長を遂げてきたのか。今回、社員との関係構築に力を入れながら結果を出してきた代表取締役の中澤雅美氏に、人材への考え方や取り組みについて聞いた。

背伸びするのをやめられたのは、「お前らしい経営をしていけ」という父の言葉

ーーもともと社長を継ぐ意思はあったのでしょうか。

中澤雅美:
経営者になりたい気持ちは昔からありましたが、会社を継ぐことを強く意識したのは、中部テラオカで社長をしていた父から「やる気があるならうちに来い」と言われたときです。それまでは他の会社で普通のサラリーマンをしていましたが、自分を試すために入社を決意しました。

2007年に弊社へ入社し、代表取締役に就任したのは2015年のことです。ただ、父が敷いたレールの上を走っているような感覚がどうしてもあったため、「このレールから一歩を踏み出すためにはどうすれば良いのか」と自問することが多かったですね。

そんなとき、父に「社長としていつか追い抜きたい」と伝えたところ、「追い抜いたか追い抜いていないかは、周りが決めること。お前はお前らしい経営をしていけ」と言われたのです。それまでは自分と父親を比べたり、時に社長像ばかり気にして背伸びもしていましたが、父の言葉を聞いてから、自分らしさを出して良いのだと思うようになりました。

プレッシャーを与えないようにしつつも、競い合えるような環境が大切

ーー社員との関係性づくりで取り組んできたことを教えてください。

中澤雅美:
社員たちのことをよく理解することが大切だと思い、以前は2年毎に全社員との個人面談を定期的に開催していました。コロナ禍などの影響で今は中断していますが、面談では堅苦しい仕事の話ではなく、社員たちの人生についてカジュアルに聞くようにしていました。

面談を通して思ったのは、「結婚したい人がいる」や「近々子どもが産まれる」など、仕事を通しては見えない人生がある中で弊社で働いているのだということです。社員が頑張ってくれるから、僕は社長でいれるのです。社員はともに時代を生き抜く戦友であり、同志であるという気持ちは就任時からずっと変わりません。

ーー人材に対しての考え方をお聞かせください。

中澤雅美:
僕が社員によく言っているのが「入社後半年で業界を知り、次の半年で製品を知り、その次の1年で売り方を勉強してください」ということです。根を生やす期間を長く設け、しっかりと倒れない木のように成長してほしいという思いから、活躍できるのは入社2年後からで良いと伝えています。

とはいえ、実際には1年目から活躍する社員もいます。今年入社した社員が40店舗ほど展開しているラーメン屋さんに対して営業を行った結果、POSレジを導入できることになったのです。こういった社員がより活躍できるようにすることも大切だと考え、新人賞をつくるなど、競い合えるような環境も構築しています。

足りないところは補い合いながら、社員とともに良い会社をつくっていく

ーー人材採用にあたり、重視する点は何ですか。

中澤雅美:
僕が人材採用において重視している点は2つあり、1つはその人が入社した際、部署の空気を乱さないかという点です。たとえば元気な人材は魅力的ですが、いきすぎると逆効果になることもあります。面接では、そういった点も見ていますね。そしてもう1つが、その人の立ち振る舞いや言葉遣い・礼儀などを見て、僕がその人と会社を良くしていこうと思えるかどうかという点です。

ーー今後はどういったことに注力していく予定ですか。

中澤雅美:
まずは人材採用です。僕が会社を継いだときと現在では、社員数が変わらないにも関わらず業績は倍になっています。その分、個人の負担が増えてしまっているので、今後は求人により投資をして、人材の採用に力を入れていきたいです。

そのほか、営業部の体制強化にも力を入れていきたいと思っています。弊社では、部下を支配するのではなく、支援して目標達成を目指すリーダーシップの形「サーバントリーダーシップ」を意識しています。実際、支店長たちにこのサーバントリーダーシップの研修を受けてもらったところ、非常に好評でした。

弊社はもともとトップダウン経営の会社だったので、現在は社員たちに主体性を持たせて、彼らが挑戦できるような環境づくりに取り組んでいるところです。

ーー最後に、今の社長としての思いや意気込みをお願いします。

中澤雅美:
僕は、1人でも多くの社員が「この会社で働いて良かった」と思えるような会社にしたいと思っています。社長という肩書きは偉い人につくものですが、僕という人間が偉いわけではありません。僕に足りないところを周りに埋めてもらって、お互い補い合いながら、一緒に良い会社をつくっていきたいです。

セミの卵が幼虫からさなぎ、成虫へと成長する中で、脱皮をしながら形を変える姿を「蛻変(ぜいへん)」といいますが、2025年の社長方針にはこの「蛻変」を掲げ、どんどん成長していきたいと思っています。

編集後記

「社員が頑張ってくれるから僕は社長でいれる」など、取材を通して、社員を第一に考える中澤社長の価値観に触れられた。会社として利益を求めるのは当然のことだが、そのためには社員との信頼関係が必要になる。社員とのより良い関係構築によって業績を上げ続ける同社の経営は、人材育成や組織づくりに悩む多くの会社の参考になるものだと感じた。

中澤雅美/1978年愛知県名古屋市生まれ、愛知学泉大学卒。大学卒業後25歳までビリヤードのプロを目指す。2004年大阪シーリング印刷株式会社に入社。2007年株式会社中部テラオカに入社し、2015年に代表取締役社長に就任。就任10年で30億の年商をおよそ倍の57億(2023年度)まで伸ばす。