※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

“食”は、人間が生きていく上で欠かせないものである。近年、健康志向が高まる中で、「食べる・睡眠・自然に触れる・運動・笑う」という幸せの5か条を提唱し、人々の健康寿命を延ばすことに注力する企業がある。それが、Smile Circle 株式会社だ。

2023年9月、兵庫県丹波市に西日本最大級のドッグランを中心に、自然と触れ合う複合施設「グランドロックキャッスル」をオープンさせた同社。今回は、代表取締役社長の岩城紀子氏に、会社設立の経緯や、食の安全に対する思い、今後の展望についてうかがった。

アパレル業界やバイオベンチャーでの経験が、社長の人生に与えた影響

ーーまずは、起業までの歩みを教えてください。

岩城紀子:
学生時代にアメリカにいたのですが、帰国後、学生の頃から親しみのあったアパレルのギャップジャパン株式会社に入社しました。最終的に西日本の統括マネージャーとして100店舗以上を担当し、小売の面白さや多くのノウハウを学びました。

ーーその他にはどのようなお仕事をされたのですか?

岩城紀子:
その頃、部下の父親がバイオベンチャーを創業することになり、ヘッドハンティングを受けました。会社を辞めるつもりはありませんでしたが、「いつか自分の会社を持ちたい」という気持ちがあり、勉強になるかもしれないと思い転職しました。

新しい会社では、添加物や機能性食品をネズミに食べさせる動物実験をしており、さらに、日本の大手食品メーカーとつながりながら、さまざまな研究所や工場を訪れる中で食の重要性に気付いたことが今の仕事に大きな影響を与えています。

食の安全を追求するきっかけとなった驚きの事実と課題意識

ーー食の安全に着目されたきっかけを教えてください。

岩城紀子:
多くの会社が賞味期限を延ばすことに特化していますが、それは西洋医学の薬と同じで、何かを治せば副作用が伴います。薬には副作用の記載があり、タバコにも注意書きがありますが、日本の食品にはそういった記載がないものも多い中、多くの人が信用して食べていることに危機感を感じました。

健康上のリスクを知って食べるのは良いかもしれませんが、“知らないまま食べさせるのは問題だ”と思い、解決したいと考えています。さまざまな方から話を聞く中で、自分の家族にも安心して食べさせられる、本当に信頼できる食品を広めたいと考えるようになりました。

ーーそこからなぜバイオベンチャーを退職され、起業に至ったのですか?

岩城紀子:
昔のバイヤーは、良い食品を地方から見つけ出して買ってくることが仕事でしたが、今は商社や売り込みに来た人の中からどの商品を選ぶかが仕事になっています。どの百貨店でも同じものが売られており、百貨店に売っているものがスーパーにもある状況があります。

ある日、偶然にも阪急百貨店の会長とお話しする機会があり、これからの食品について話している中で、「これからはバイヤー代行のような仕事が必要になる」という言葉に強く惹かれました。そして、「それならできるかもしれない」と思い、事業を起こすために準備を進めてバイオベンチャーを退職しました。

Smile Circle 株式会社設立のヒントを得た出会いと事業展開の背景

ーー今は主にどのような事業を行っていますか?

岩城紀子:
百貨店ではバイヤー代行業務を多く手がけており、たとえば、百貨店の限定商品や季節のイベント、雑誌社のお取り寄せを担当しています。コンサルティング業務では、主に食品メーカーの商品開発を中心に、百貨店のバイヤー育成やスーパーマーケットの惣菜やPB商品の開発、M&Aの相談などを受けています。

さらに、長年冷凍食品の開発に携わってきたノウハウがあるので、数年前から添加物を一切使わない、高付加価値の冷凍食品をつくっているんですよ。また、離島の振興や地方創生にも取り組んでおり、壱岐、対馬、五島などの優れた産物を大手企業とつなげ、離島の産業を安定化させるためのアドバイザーも行っています。

ーーグランドフードホールをつくった経緯をお聞かせください。

岩城紀子:
バイヤーの仕事で全国からおいしいものを探しても、生産量が少ない、つくり手が一人しかいないなどの理由で、さまざまな販路に採用されないことが多かったのです。そこで、本当においしいものにこだわったお店ができたら、どれほど幸せだろうと思いました。

さらに、当時の日本にはまだなかった「フードホール」という業態を取り入れました。そして、今まで集めた本当においしいものと海外のフードホールという業態を組み合わせたのが、「グランドフードホール」です。

良い食を選ぶ能力を養い、健康寿命を延ばすための具体的な取り組み

ーー多くの事業の中で1番注力されていることはありますか?

岩城紀子:
今は、健康寿命に焦点を当て、食品メーカーや食品販売店向けに日本の健康寿命を延ばすための食べ物を提案するコンサルタントを行っています。日本は男女の平均寿命が84歳ですが、健康寿命は74歳と言われています。

この10年の差が縮まれば、当人や子どもの人生が変わり、医療費を節約して子どもたちや他の分野に投資できるようになるでしょう。健康寿命は、自分たち一人ひとりが考えれば延ばすことができると思っています。

ーー最後に、これからの意気込みをお聞かせいただけますか。

岩城紀子:
健康寿命を延ばすために、さまざまなことに挑戦したいと考えています。たとえば、良い睡眠をとるために努力し、自然に触れるために毎週のように自然の中やキャンプに出かけることが必要です。今は心に元気のない方が多いので、「食」を通じて幸せな人たちを増やし、心に元気を取り戻していただきたいと思っています。

そこで2023年には、ドッグラン、レストラン・カフェ、キャンプ、サウナなどが自然の中にそろった、健康寿命を延ばすための施設「グランドロックキャッスル」をつくりました。今後も人々に少しでも多くの幸せを感じていただくために、あらゆるチャレンジを続けていきたいと思います。

編集後記

本当に安心でおいしい食べ物や身体に良いことを世の中に広めるという岩城社長の熱意と情熱には感銘を受けた。健康寿命を延ばすための取り組みを続ける姿勢は、単なるビジネスを超えた使命感を感じさせる。食を通じて健康と幸せを追求する岩城社長のビジョンは、これからの時代においてますます重要性を増していくだろう。Smile Circle 株式会社が、どのように社会を変えていくのか、今後も注目していきたい。

岩城紀子/1972年兵庫県生まれ。アパレルやバイオベンチャー企業を経て、2008年にSmile Circle 株式会社を設立。「素晴らしい食品をつくりながらも商売が苦手な」生産者に代わり、販路拡大及び商品開発を担いながら大手百貨店や、大手食品通販等のバイヤー代行として事業を展開。これまで数えきれないほどの商品を見てきた経験から、主に「消費者にとってよりよい食品を広めたい」という考えを持つ食品メーカーの商品開発などのコンサルティングも精力的に行っている。