※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

防災設備の点検・メンテナンス業界は、法令に基づく定期点検の需要があるものの、参入障壁の低さから競争が激化し、価格競争に陥りがちだ。そんな環境下で、新規事業への挑戦と人材育成に力を入れ、業界の常識を打ち破ろうとしている会社がある。

ドローン事業やホームインスペクター事業の展開にも力を入れている、大阪に本社を置く株式会社テックビルケアだ。同社の代表取締役、茶橋昭夫氏に、これまでの歩みと今後の展望について話をうかがった。

他社での経験を糧に、家業にも防災に関する事業を導入

ーー代表の経歴についてお聞かせください。

茶橋昭夫:
私は大学の工学部電気工学科を卒業しました。父が設備系のメンテナンス事業をしていたこともあり、電気の知識が必要になると考えたからです。中学生の頃から漠然と家業を継ぐことを意識していましたが、父から「社会経験を積んでから戻ってきなさい」といわれていました。そのため、卒業後はすぐに家業に入らず、他社で経験を積むことにしたのです。

私は大学時代からパソコンを自作していて、ITに興味があったので、まずは中堅ソフトウェア会社に入社。その後、エアコンメーカーのサービスエンジニア、防災設備のメンテナンス専門会社と経験を積み、最終的に家業に戻ってきました。

ーー現在の事業内容を教えてください。

茶橋昭夫:
弊社はもともとビルメンテナンス会社で、清掃や設備管理などを行っていました。現在は防災インフラに関する法令の検査・調査をメイン事業としています。具体的には、オフィスビルや店舗、老人ホーム、ホテルなどの建物に設置されている消火器や消防設備の法令点検を行い、消防署に届け出るというものです。さらに、建築基準法に基づく定期報告のための調査も行っていますね。

危機感から生まれる新規事業への取り組み

ーー新規事業にも取り組んでいるそうですね。

茶橋昭夫:
新たに自家発電設備の点検事業を始めました。これは法令で義務付けられたもので、特殊な機材やノウハウが必要でした。社内では専門会社に任せた方がいいという意見も多かったのですが、私はこれを一つの機会だと捉え、機材を購入し、社員に研修を受けてもらいました。今ではこの事業が柱の一つになっています。また、東京に営業所を開設したことも大きな挑戦でした。

ーー新しいことに積極的に取り組む理由は何でしょうか?

茶橋昭夫:
それは危機感から生じたものです。消防設備の点検業界は、外から見ると安定していると思われますが、実際は競争が激しいのです。法令点検は内容が共通しているため、価格競争に陥りやすいものです。そこで、どのように差別化していくかを、常に考えていますね。また、特定の取引先への依存度が高くなるリスクもあるので、新しい事業をつくり、そういったリスクに備えています。

社員の主体性を重視した組織づくりと経営幹部チームの育成でさらに成長

ーー組織づくりで意識していることは何ですか?

茶橋昭夫:
社員の声を聞くことを大切にしています。たとえば、毎年、「福利厚生総選挙」というものをやっています。これは社員に福利厚生案を考えさせ、それをプレゼンしてもらい、社員たちが投票するというものです。得票率の高いものを翌年の福利厚生に採用するので、社員には自分たちで会社をつくっているという主体性を感じてもらえると思います。

また、月に一度の全社会議では、チームビルディング的な要素を入れたワークやゲームをしたり、みんなでランチを食べたりして、社内での横のつながりを大切にしていますね。

特に経験豊富な方にとっては、これまでのスキルや知識を存分に生かせる環境だと思います。新しいアイデアや改善提案も積極的に取り入れていますし、自己実現の場としても弊社は適していると自負しています。

ーー現在、どのようなことに注力していますか。

茶橋昭夫:
現在は、経営幹部の育成に力を入れており、経営幹部の「ナンバーツーチーム」をつくろうと考えています。理想のナンバーツーを探すことは非常に難しいので、それなら私が「チーム」をつくろうと思ったのです。

そこで毎月、幹部たちと会社の主要な方向性を決定する話し合いをしています。これまでは私が一人で決定していましたが、現在は幹部にも一緒に考えてもらっています。会社の成長のためには、経営に近い人たちの視座を上げることが特に重要だと感じています。

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

茶橋昭夫:
社員がワクワクするような会社にしたいですね。新しいことにチャレンジし続けることで、社員のモチベーションも上がるし、会社も成長できると信じています。特に、さまざまな経験を持つ中途入社の方には、その経験を活かして会社の変革を一緒に進めていただきたいですね。

編集後記

経営幹部育成など、防災設備業界に新たな風を吹き込んでいる。危機感を原動力に、絶え間ない挑戦を続ける同社の姿勢は、変革の時代における業界のロールモデルとなり得る。茶橋氏の描く「ワクワクする会社」が、業界に革新をもたらす未来が楽しみだ。

茶橋昭夫/1981年、大阪府生まれ。関西大学工学部を卒業後、IT企業、エアコンメンテナンス会社、防災設備メンテナンス会社を経て、2008年、株式会社テックビルケアに入社。2019年に代表取締役に就任。